第2話 事実
俺は無我夢中で走る…ただ。
ロディアだけは、助けたかったから…
「…セイス!!離して!!」
思想を停止させる、ロディアの大声…
ロディアは俺の手を振り払った。
「!?なっ…どうして!!」
「なぜ逃げようとするの!!」
「…勝ち目なんてないだろ?あの女、あんなに離れていても…
人を殺せるんだぞ?」
荒くなったロディアを鎮めるため、
頭の中をよぎった事を必死に訴える。
「違うの…!!」
ロディアは小さくそう呟いた。
「なっ何が違うんだよ!!」
「ねぇ、セイス。
私の耳、どうしてとがっているの?どうして紅の髪なの?どうして蒼い眼なの?」俺はゴクリと音をたてて、絶望を呑み込む。
気付いていた…
君は…ロディア…
『ニンゲン』では無い事を…
「そう、今セイスが思ってるように、私はニンゲンじゃないわ…!!」
「でも、だからって、何も変わることなんて無い!!俺はロディアを守りたいんだ!!」
一瞬、間が空き
「…ニンゲンじゃ無いなら私は何?」
冷笑をその童顔に浮かべた。
知ってた?
と聞く様に、上眼使いで俺をみる。
「私はね…貴方達ニンゲンを喰らう、アクマの様な存在…!!」
ゾクッと背筋に凍るような視線を感じた。
彼女の視線だ!!
絶望が増した…
知ってたよ…
君がアクマみたいな存在…いや、1000年前滅んでいった
人間なんだって…
その人間には、生き残りもいたのだ。
生き残った人間は
ニンゲンの血肉を喰らい、生きてきた。
人間の特徴はとがった耳、紅か緑か緋色の髪…蒼い眼…。
俺は知っていた。
彼女に出会った時から…
ニンゲンはもう、人間を忘れていただろう…
俺は…
忘れることが出来ない
父も母も
人間に喰らい尽されたから…
気がつけば、君が…
ロディアが居た
“貴方は独りじゃない”
そう、ロディアが居たから独りじゃなかった。
その瞬間
俺は彼女を守りたいと思った。
父や母の仇なんて
もう関係無かった。
君と居たかっただけなのに…