07:「ごめん…ッ!」
風呂場から出ると、きれいに畳まれた自分の制服が置かれていた。
「あ、軽めに乾かしておいたから。」
優衣はドライヤーで星太の靴下を乾かしてくれているところであった。
「いいよ!そんなの!!本当に家帰れば終わる事だし!」
「ある程度乾かしとかないと、家を汚されても困るしね。」
こう言われると、星太としては立つ瀬が無かった。
数分後、案内された先は優衣の自室。
幼い頃に何度も遊びにきたなじみの深い場所だ。
ただ、中学高校と遊びにくることもなかったので
星太が知ってる風景とは少し違った。
「適当に座ってて、なんか飲み物とってくる。」
優衣は無表情に近い。
その横顔をチラッと見たが、
やっぱり、全く何を考えているのか読み取れなかった。
「…。」
「……。」
沈黙が続く。
星太は入れてもらったココアを少し口に含んだ。
星太は未だに迷っていた。
今まさに目の前にいる優衣は、無表情を貫き、
決して星太と目を合わせようとしない。
しかし、位を決して星太は口をひらいた。
「優衣…。聞いて欲しい。」
「…。」
「俺はお前のことが…す…好きだ!」
「…。」
星太は顔がこれでもかというほど真っ赤だった。
対する優衣はほんの少しピクリと反応しただけだった。
構わず星太は続けた。
「お前のためになら…できる限り死ぬ気で努力しようって…告白してくれたときからずっと決めてた…!」
「…。」
「だから………キ…キスも…。」
「…。」
優衣は顔を隠すようにうつむいた。
しかしそれは照れ隠しなんかではなく、
むしろ哀しみを煽るような姿勢だった。
優衣のこの姿勢に、星太は我慢できなくなり、
優衣に抱きついた。
「…!!」
「ごめん…ッ!」
星太の顔はもう肌の色を失っていた。
「…私も…ごめんなさい。
ちょっと困らせてみたかっただけなの…。
もっと愛されてるって実感が欲しかっただけなの…。」
優衣は星太を抱き返した。
お互いの顔は見えない。
でもお互い、相手の顔がどんな風かは簡単に想像できた。
改めてお互い顔を見合わせる。
二人とも顔が火照っていた。
そのまま流れるように
二人の唇が重なった。
とても長いように感じた。
でももっと続けばいいと思った。
二人とも永遠にこの幸せに浸っていたかった。
ふいに唇が離れ、
お互い目をみつめる。
そして
照れいっぱいで二人は満面の笑顔になった。
「初めてのキス…交換ありがと。」
これほどない笑顔で目一杯照れつつ、
上目遣いで優衣は言った。
「あ…。」
星太は忘れていた絶望を再び思い出した。