03:「きっとできる!」
(大丈夫だ……昨日あれだけ『練習』したんだからな…!)
登校中であった。
ちょうど出勤、登校時間。
星太の家の周りでも、出勤や通学に勤しむ人々がちらほら姿を見せていた。
星太は胸に手をあてつつ、昨日の『練習』を思い出していた。
まず…相手の両肩に手を乗せる……。
そしてそこからは流れ。
間を置いておくと雰囲気的にはいいかもしれないが
恐らく自分の事だ。パニックになって硬直してしまうだろう。
だから星太は決めていた。『一瞬で決める』と。
シュミレーション中も、もちろん星太の顔は真っ赤だった。
朝っぱらから顔を真っ赤にしている高校生が居たら、誰もが風邪引いていると思うだろう。
近所で顔見知りのおばさんなんかは「大丈夫かい?」なんて声をかけてくれていたが、
その配慮に恥を覚え、さらに顔を赤くする星太だった。
「こんな俺が……ホントにできんのかな…。」
いつもなら一緒に登校するはずの優衣だが、昨日の事があってか、
家に呼びにいってもおばさんに「『今日は早く出て行く』って」と言われてしまった。
やはりショックは大きかったが、「キスで取り返す!」という気持ちが強く、
敢闘精神(?)が高まって、気分は上昇していたハズだった。
気がつくと、星太は駅にたどり着いていた。
電車通学ではないので、星太は如月駅に用はなかったが、
学校と家の中間地点に駅があるため、通るのは必然だった。
(この道を……歩いてたんだよなー毎日二人で……。)
星太はボーッとしてきていた。
脳内が混乱し、頭が真っ白になってきていた。
自分は本当に風邪を引いたのかもしれないとすら思ってきていた。
「いや…できる!きっとできる!」
顔をパチンと叩いてみたが、ぼんやりした感覚はよりいっそう深まっていくだけだった。
(もう一回だけ…最終シュミレーションしとくかな…。)
まず…相手の両肩に手を乗せる……。
そして、一気に!!!
目の前が真っ白になった。
最初は目を閉じているからだと思ったが、目はすでに開いている。
違う。
目の前のこの白いのは……肌だ。
すごい透き通るようなキレイな白い肌。
思わず食いつくように見つめていたが、何やら別の場所に感触がある。
柔らかくて……少し水気を帯びた…。気持ちいい感触。
それが自分の唇にあることに気づいた頃には、すでに俺の目には大粒の涙が溜まっていた。
「うっうわあああああああああああああ!!!!!!???」