回らないお寿司
とある家族の話。
その家族は、毎週土曜日になると外食に出かける。
ファミレスに行ったり、ちょっとした居酒屋に行ったり。
特に月一回の回転寿司のお店に行くのは、子供たちにとっては楽しみだった。
小学生の彼らにとって、「寿司」は、なんかと特別なもののように思えた。
だが、だんだん成長していくと、いろんな情報が耳に入ったり、他の人がやっていることを自分もまねしたくなるものだ。
ある金曜日の夕方、長女が学校から帰ってきて父親にこう行った。
「お父さん、明日は回らないお寿司がいい!」
ちょうどそろそろ回転寿司屋に行く時期だったため、両親もその準備をしていたところだった。
「回らない寿司?」
「そうよ、田中君だって、この前初めて回らないお寿司、食べに行ったんだって」
どうやら同級生がいろんなところに行った情報を聞いて、自分も行きたくなったのだろう。
以前も、フランス料理を食べたいだの、イタリア料理を食べたいだのわがままを言っていた。だがそのたびに、「また今度ね」とごまかしていた。
が、今度は長男がわめき始めた。
「僕も、回るお寿司より、回らないお寿司がいい!」
長男も、友達が高級なおすし屋さんに行ったことを聞いて、自分も行きたくなったようだ。
「わかったわかった。でも明日は回るお寿司な」
「やだ! 明日がいい! 明日は回らないお寿司がいい!」
仕舞いには泣き出してしまった。
しばらくして父親は、
「よし、明日は回らないお寿司にしよう!」
と言った。その言葉に、長女も長男も歓喜の声をあげた。
翌日、たしかに父親は、回らないお寿司をご馳走した。
しかし、子供たちの反応は……
「……お父さん、ごめん、こんなつもりじゃなかった」
「ごめんね、うち、お金ないもんね。僕我慢するよ……」
子供たちは回らないお寿司を一人前食べただけで、おなかいっぱいになったようだ。
台所から母親が、デザートとしてチョコレートケーキを出してくれた。
さすがにタイトルでオチは読めましたか?(汁
ふとスーパーでお寿司を見たときに思いついたネタなのです。鮮度はあまりよくないのですが。
まあ、そんなお愛想なんていわずに。むらさきの服を着てなみだにぬれても、ガリっとかぶりつけば勝負はゲタを履くまで分からないのです。
……と、お寿司関連のネタを列挙してみましたのです。
全国のお父さんは、同じような言い回しでごまかさないように。