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09、換金

 異世界で手に入れた金貨は、日本の質屋で換金することにした。

 それは異世界では小金貨と呼ばれていて、1円玉よりも一回り小さく重さは3グラム程度だ。


 町の質屋に行って10枚分の値段を聞いたら、70万円だった。ゴールドを売るには身分証明書と親の承諾が必要だと店主のおじいさんに言われたので、それは提出できないと言ったら50万円に下げられた。さすが、昭和から続いている老舗の質屋は商売が上手い。

 それは違法だと思うのだが、未成年の僕にとって融通を利かせてくれるのはありがたいこと。


 原付免許を取得した。

 自転車でも良いのだが、重い荷物を運ぶときは疲れるので効率を考えるとバイクを使ったほうが合理的なのだ。


 免許が交付されて、すぐに町のバイク店で中古の3輪バイクを買った。それは荷台が広くて荷物をたくさん積めるタイプ

 店の主人が手続している間に、並んでいるバイクを見ていると隅の方に展示されていた中古の3輪バギーに目が留まる。

 それは3輪車をドデカクしたような200ccのバイクで、タイヤが異様に太いオフロード専用の物だった。異世界に持って行ってリヤカーを引くのに便利だと思う。

 僕は、その3輪バギーを即金で買った。バギーは公道を走ることができないと店主に注意されたが、山の私有地で使うと答えて家まで配達してもらうことにした。


 昼前。荷物を満載したリヤカーを3輪バギーに繋ぎ、洞窟の中を進んでいく。

 中は少しデコボコしているが、ほとんど平坦な通路なのでスピードを上げても構わない。徒歩に比べて数倍も早く鳥居に着いた。

 バギーに座ったまま精神集中。起立していないと鳥居様に対して敬意が足りないかなと思ったが、すぐに目の前が暗くなった。



  *



 視界が明るくなると正面にスザンヌの家。

 バギーのエンジン音を聞いたのか、姉妹が出てきた。


「わあー! お兄ちゃん。これ何?」


 クリスが興味深そうにバギーを見ながら回りを歩く。


「これは3輪バギーと言って、機械式の馬みたいな物かな……」


 ガソリンによる内燃機関が動力とか説明しても分からないだろう。

 スザンヌも寄ってきた。


「ニホンの分化は進んでいるんですね」


 彼女は手を後ろに組み、少しかがんでバギーを見た。豊満な胸の谷間がくっきりと見えるんだけど、この世界のブラ……というか下着はどうなっているんだろう。


「うん。でも、魔法とかは存在しないけどね」


「ねえ、乗っていい? ねえ、乗っていいでしょ」


 おねだりするようにクリスが顔を近づけてきた。


「ああ、分かった。ちょっと待ってね……」


 僕はバギーから降りてリヤカーを外し、クリスを後ろの席に座らせた。彼女に運転させるわけにもいかないので僕が運転座席に乗る。


「クリス、しっかりつかまってね」


 指示に従って彼女は、後ろから僕の体を両手で抱きしめた。

 細い女の子の体が背中に押しつけられるのも悪くないな。でも、できれば……。スザンヌの方を見る。いかん、いかん……何を考えているんだ。


 タンデムで家の近くをゆっくり走った。

 僕の背中でクリスは大声をあげて喜んでいる。スザンヌは笑いながら見ていた。このひとときが僕も楽しい。これが小さな幸せというものなのかな。


 しばらく遊んでから昼食にした。

 昼のメニューはスーパーで買ってきたパンとスープ、それに野菜サラダ。この世界には米はないらしい。ただ、パンはあるのだから麦は存在するのだろう。


 昼からリフローの町に向かった。

 バギーの後ろにクリスが乗り、牽引しているリヤカーにクッションを敷いてスザンヌが座る。それは公道を走ることができないのだが、異世界に道交法はないから関係ない。

 人力で引くのとは比較にならないほど早く町が見えてきた。あまりの速さにスザンヌは驚きが隠せないよう。僕たちは町の手前の茂みにバギーを隠してから、リヤカーを引っ張って町に入った。


「あっという間に着きましたね」


 露天を組み立てながらスザンヌが言う。まだ、興奮が収まっていないようだ。


「ああ、後で運転を教えるから僕がいないときでも使っていいよ」


 自動クラッチなので、少し練習すればスザンヌでも扱えるはず。これで荷物運搬の効率は跳ね上がるだろう。今度は日本からガソリンを持ってこないと。


 前回の様に砂糖と食器を売りまくった。

 瞬く間に売り切れて、今回は200万ペセタを超えた。


「こんなに儲けていいのかなあ……」


 あまり上手くいくと心配になる。


「大丈夫ですよ、トウヤさん」


 スザンヌは銀貨を数えながらホクホクした笑顔だ。


「商業ギルドによって商売の自由は保障されています。毎月、定額の利用料を払えば文句は言われませんから」


「ああ、そうなんだ」


 でも、大きく儲けている姿を見たら妬む人間もいるだろうな。

 人間が他人を妬む心は根深いものがある。少しでも自分より上だと感じたら引きずり下ろそうとするのが常。理屈ではなく、出る杭は打たれる、というやつだ。


「そういえばトウヤさん。スキルは持っているんですか?」


 布袋に銀貨を入れながらスザンヌが聞いてきた。


「スキル……というと?」


「はい、私はヒーリング能力を持っていて、クリスはサーチ能力のスキルを持っているんですよ。トウヤさんもスキルをもらったらどうですか」


 スキルかぁ……。やはり、異世界と言ったらスキルだよなあ。この世界ではゲームに出てくるような特殊能力を得ることができるんだ。


「そうだね。ぜひスキルを取得したい。……それで、どうやってスキルをもらうことができるの?」


 日本人でもスキルを持つことができるか心配だが。


「14歳になったら教会でスキル判定してもらって、自分に合った能力を得ることができるんです。近くに教会があるので、行ってみますか?」


「ああ、行くよ、行く。行ってみよう」


 露店の留守番をクリスに任せて僕とスザンヌは教会に向かった。


 スザンヌに説明してもらったところ、スキルとは、その人間に一つだけ与えられるもので、一度もらったら変えることはできない。捨てることもできないし、他人に渡すこともできない。一生、そのスキルと付き合うことになるというものらしい。

 それは自分で選ぶことはできず、教会の牧師が引き寄せたスキルを与えるということだ。

 どんなスキルがもらえるかは神のみぞ知るということ。


 教会はキリスト教の物と似ていた。

 その屋根は三角で、てっぺんに女神像が飾ってある。さすがに十字架ということはないか。

 教会には誰でも入って構わないそうだ。僕たちは大きな入り口を通り中に入っていく。

 内部も日本の教会と同様だった。結婚式のシーンで見る、多くの席があって奥に祭壇があるという様式だ。


 祭壇横の通路から中に入る。

 小さな部屋に入ると、修道服を着た女の人が机に座っていた。ここは事務室なのか。

 修道服は日本で見る物と同じような黒い服だ。この女の人はシスターという人なのだろう。


「あのう……スキル判定と授与をお願いしたいのですが」


 おずおずとスザンヌがシスターに依頼した。


「そうですか。少しお待ちください」


 笑顔でシスターは部屋を出て行く。なんか緊張してきたな


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