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13,避難場所

 日本のホームセンターで、テントなどを買って異世界に戻ってきた。

 荷物を積んだリヤカーを3輪バギーで牽引する。僕とスザンヌは、近くにあるという洞窟に向かった。

 バギーは僕が運転し、後ろにはスザンヌが乗って僕にしがみついている。


「しっかりつかまっててね」


 ラッキーシチュエーションだ。

 あのキングボアの一件以来、僕への信頼が増したのか遠慮することが少なくなって大胆になったような気がする。


 険しいけもの道を進み、やがて洞窟の前にたどり着いた。

 それは茂みに隠された狭い入口の洞窟で、スザンヌは良く見つけられたものだと思う。以前から僕が洞窟のことを言っていたので、彼女が探しておいてくれたのだ。


 中に入ると、バギーが入ることができない狭さ。普通に歩いていると肩が壁面に擦れる。

 これならキングボアは入ってくることができないだろう。

 しばらく二人で進むと行き止まりだった。

 やはり、こちらの世界に鳥居はないのか。

 そこは円形のホールのような場所で、下は砂地になっている。

 上を見ると明かりが漏れているので、登れば外に出ることができるようだ。


 一度、外に出てリヤカーの荷物を背負った。

 また、中に入ってホールに行く。

 その中央にテントを張ってみた。動画を見て学習しただけで、実際に設営するのは初めてだったが、きちんと張ることができた。


「へえー、これが簡易住居なんですね」


 スザンヌがテントの中を覗く。


「うん、またキングボアがやってきたら、ここに避難してほしいんだ」


 うなずいてスザンヌはテントの中に入った。

 続いて僕も入ってみると彼女は横になっている。仰向けになっていても胸の張りは大きい。


「ここは寝心地が良いかもしれませんね。トウヤさんもどうです?」


「ああ、そうだね……」


 スザンヌの隣に寝ると心臓が高鳴った。

 テントの側に置いてあるランタンの光が中を薄暗く照らす。


「夜は寝袋を使うから、もっと快適なはずさ」


 キャンプ用品は一式そろえた。食料や水も用意したので、1週間くらいは洞窟の中で暮らすことができる。


「トウヤさんが、ずっとこちらの世界に滞在することはできないんですか」


「えっ」


「ずっと、家に泊まってくれれば心強い……」


 彼女を見ると、僕の方を見つめていた。慌てて目をそらす。


「うーんと……えーと、まだ日本でもやることがあるし、高校を卒業した方が向こうでは何かと有利だと思うし、通販で物を仕入れるためには家と住民票がないと困るし、えーと……」


「そうですか、分かりましたよ」


 そう言ってスザンヌがクスクス笑う。

 もしかしたら、僕をからかったのかな。


「まだ、やり残したことがあるんですね。トウヤさん」


「うん……」


 この異世界でスザンヌ達と暮らせたら楽しいに違いない。

 ずっと、スローライフで歳を取っていく。そんな人生のどこが悪いのか。

 でも、わだかまりがある。

 それは、学校で僕をいじめた人間に対する復讐だ。いくら異世界で楽しい生活を送っても、いじめられた苦い経験は忘れられない。これは一生残るような気がする。

 だから、だから、だから……いじめた人間に、他人をいじめたら仕返しされるのだと思い知らせてやりたい。



  *



 おばあちゃんの家で僕は叔父さんと向かい合って座っていた。


「どうだ、ボウズ。調子は」


 そう言ってテーブルの麦茶を飲む。


「うん、まあまあだよ……」


 それから、言葉が続かない。

 叔父さんは高そうな白いサマースーツを着ている。その隣にはグレイのワンピースを着た美人秘書。

 ごまかすように庭に視線を移すと、夕暮れで辺りが暗くなっていた。

 もう、8月も終るので夕方になると夏の熱気に秋風が混じり始めている。


「ボウズ、高校はどうするよ。……いっそのこと辞めちゃうか? まあ、俺としては卒業しておいた方が得だと思うんだけどな」


 個人で貿易業を営んでいる叔父さんは、あまり学歴を重視していないよう。今まで実力勝負で利益を上げてきたのだ。僕の両親なら学歴の絶対尊重という考えで、中退など許すことはあり得ない。


「……僕は学校に戻ろうと思う」


「そうか……」


 叔父さんは意外だという表情をしている。

 少し前までは中退しても構わないと僕は思っていた。しかし、ドレイン能力という武器を手に入れた今では、いじめたやつらに仕返しをしないと気が収まらない。

 いじめられた経験が心にこびりついて、ずっと取れないような気がするんだ。


「じゃあ、9月から復学ということで学校に連絡しておくぞ」


「うん、よろしくお願いします。叔父さん」


 僕は頭を下げた。


「学校の近くにアパートを借りてやるから、そこに引越ししろよ。この家は取り壊すからさあ」


「えっ! 壊しちゃうの」


「ああ、こんな古民家を残しておいても維持管理が大変だろう。この辺は過疎地域だから、長く住むには適していないしな」


「ダメだよ!」


 語気の強さに叔父さん達は驚いて僕を見た。


「あ、あの……この家は、おばあちゃんから僕がもらったんだ。あの……僕にくれないかなあ……」


 家を取り壊すということは洞窟の入り口の小屋も壊すということ。すると鳥居が見つかるかもしれないし、それも壊されるかもしれない。子供が遊ぶと危険だということで洞窟が封鎖されるということもありうる。そうなると異世界に行けないし、スザンヌとも会うことができなくなってしまうのだ。


「なあ、ボウズ。家を維持するには光熱費などの管理費が必要なんだぜ。壊れたら修繕しなければならないし固定資産税もある。お金というものが必要になるんだ」


 おばあちゃんから鳥居を守るようにと託された。それは遺言のようなものだったから必ず守らないと。


「お金ならあるよ!」


 勢いよく立ち上がって2階の自室に上がった。そして、布袋を持ってくると座卓の上にガシャンと置く。

 僕は袋を開いて二人に見せた。中には300枚ほどの金貨。


「おい、ボウズ。これは本物なのか」


 そう言うと1枚つまんで両面を眺める。さすがの叔父さんでもビックリしているよう。


「本物のゴールドだよ。前に質屋で確認してもらっているから」


 秘書のお姉さんも金貨を手のひらに乗せてまじまじと見ている。目の光りが普通ではないんだけど……。


「これは誰からもらったんだ。おばあちゃんから譲られたのか」


 叔父さんの目が険しくなっている。

 もう話してしまおう。僕のことを思ってくれている叔父さんに対して隠し事をするべきではない。

 僕は、おばあちゃんから能力を託された以後の全てを説明した。


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