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こうして少年は花嫁として旅立つ  作者: 巴 雪夜
二篇:初恋はきっと

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五.天狗の神様


「ばーちゃんさ、あそこの神社って何が祀られてるの?」


「烏天狗様よ」



 夕飯に出された山菜おこわを頬ぼりながらなんとなく聞いてみた明日葉は、祖母の言葉に「烏天狗!」と声を上げる。



「神様じゃないの?」


「神様として烏天狗様を祀っているの」



 大昔にこの村の飢饉を救った烏天狗がいたらしく、村人は感謝を込めて村で祀ったのだと。そういった逸話がこの村には残っているのだと祖母は教えてくれた。


 烏天狗と聞いて明日葉は緑禅を思い浮かべていた。確か、彼は自分を烏天狗の上の位だと言っていたのを覚えていた。


 と、言うことは祀られているのは緑禅のことを言っているのだろうか。



「その烏天狗ってなんかあるの?」


「そうねぇ。あぁ、先を見る力があるって聞いたわ」


「先?」


「少し先の未来が見えるんですって」



 神社に祀られている烏天狗は少し先の未来が見えるらしく、その力を使って助言したりしていたのだという。ただの言い伝えなので本当なのかは祖母にも分からないのだとか。


 未来が見えるなんて緑禅は言っていなかったなと今までの会話を思い出す。


 彼が話していないだけなのかもしれないが、少しばかり気になったので明日にでも聞いてみようと明日葉は決めた。


   *


「見えたらお前はどうするんだい?」



 翌日の昼、神社で緑禅と話していた明日葉は祖母から聞いた話を言うと問い返されてしまった。


 未来が見えたからってこれといって何かあるわけではない、というか全く考えていなかったのだ。そう素直に答えれば、「お前らしいね」と笑われてしまった。



「なんだよ、いいじゃん」


「悪用のあの字もないところがお前の良いところだよ」


「あ、じゃあ見えるんだ!」


「見えるけど教えないよ」



 緑禅は明日葉が何を言う前に言った、お前の未来は教えてないよと。どうしてだろうかと首を傾げれば、「先を知らないほうが楽しめるだろう」と言われる。


 何も知らないから起こる全てのことに反応ができる。楽しさを、喜びを、怒りを、悲しみを感じることができるのだ。


 未来を知ってしまってはそれもできないのでつまらない人生になると。


 それはそうだなと明日葉は納得した。何もかも知っていたら面白くはないだろうことは想像ができたのだ。



「じゃあ、聞かない」


「素直でよろしい」


「りょく兄ぃはつまらなくないの?」


「毎回、先を見ている訳じゃないから問題はないよ」



 毎日、先を見ていては妖怪であっても面白くなんてないと言われて、それもそうかと明日葉は頷く。そこは人間も妖怪も同じなのだ。



「見たくない未来を見てしまうこともあるからね」


「そうなの?」


「……そうだよ」



 ふっと一瞬だけ影を落とした緑禅に明日葉は気づいたけれど、すぐに消えて「未来なんて見ても面白くないさ」と笑われてしまい聞くタイミングを逃した。

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