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廣田探偵事務所の事件簿~助手業始めました!~  作者: 七海飛鳥
高校の呪い

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7/10

 あれから一週間経った。

 あの事件以来、仲良くなった俺たちは、また下校を共にしていた。とは言っても、木戸と松山は反対方向なため、最寄り駅までの道中だが。だが案外、そんな短い時間でも、話していると楽しい。


 登校も共にしたいが、遅刻常習犯の木戸に時間を合わせることになるため、それは早々に諦めていた。流石に遅刻はしたくない。

 木戸も登校時間をズラすことはしないらしい。逆に(いさぎよ)すぎる。



 「よぉ、一週間振りだな」

 そんな、聞き覚えのある声が背後から聞こえた。


 振り返ると、そこには湊音がいた。彼は、狩衣姿ではなく、白Tシャツにジーパンという、ラフな格好だった。ゆるく羽織ったジャケットの隙間からは、銀色のネックレスが覗いていた。


 まるで、最近の若者のような出で立ちに、俺たちは一瞬誰かわからなかった。


「あの神社の神主さんの恰好じゃないんですね」

 友永がそう言うと、湊音は馬鹿にしたように笑った。


「お前ら馬鹿だろ、なんでいつもあんなの着なきゃならないんだよ。あれは仕事着だ」

「え?じゃああんたは神社の神主……?」

「そんなかったい仕事、できるかよ。俺は、なんて言えばいいか……ああ、心霊探偵だ。よく、神社でも手に負えない、厄介なものを祓ったりしてるな」

 湊音が、途端に胡散臭くなった。胡散臭い男の口から発せられた、胡散臭いことこの上ない職業。俺たちは、さっさと帰ろうとしていたが、湊音は俺の腕を掴み、そして整った顔に、にっこりという言葉が似合う、笑顔を浮かべた。


「言いたいことがあるんだよ、今から暇だろ?ついて来い」

「分かりました……」

 俺たちは、この胡散臭い男の圧に負け、後をついていくことになった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ついたところは、寂れた通りの一角。そこに建てられた、これまた寂れたビルの中。

 そんな、いかにも怪しげな場所だった。


「な、なあ、帰ろうぜ……」

「でもさ、あの人俺たちのことを助けてくれたんだよ?」

「でも怪しすぎるって!」

「確かに……」

「おーい、聞こえてんぞ。ほら、さっさと入れ入れ」

 俺たちがそんな会話をしていると、湊音が呆れたように言った。


 廃れたビルの二階に上る。昭和感漂う鉄製ドアには、廣田探偵事務所と書かれた、確実にそこだけ浮いている木製のプレートが掲げられている。

 湊音は、鍵を開けて俺たちに入るように促してきた。


 そして、俺たちをぞんざいに事務所に入れると、湊音はその事務所の戸を閉めた。


 中は、外見とは反対に、とても綺麗だった。大きな書斎机に、応接間セット。壁には本棚が並べられ、中には難しそうな本、心霊についての論文。そして雑誌多数。

 その中に、ファッション雑誌があった。心霊系の本が多い中、そのファッション雑誌だけがかなり浮いて見えた。

 よく見てみると、ちょっと古い。


「ああそれ、高校の時読モやってた時のやつ」

 そう言って、ファッション雑誌を指さしていた。中を見ていると、確かに目の前の湊音とそっくりな青年が、写真の中にいた。

 さらに中には、表紙になっているやつもある。


「ほら、俺超イケメンだろ?だからスカウト凄くてな。小遣い稼ぎ感覚でやってたんだ」

 そう言って、どや顔をしていた。無駄にキラキラしている。俺たちは、イラっとした。

 この男は平凡顔の男子高校生四人を捕まえて、イケメン自慢をした。イケメン滅びろ!というのが、全員一致だっただろう。



 無機質な空間に、湊音は嫌味なくらい似合っていた。

 家具が圧迫してやや狭かったが、俺たちは二人掛けのソファーに向かい合わせで座った。


 湊音は、部屋の奥の方にある、書斎机に座り、椅子の背もたれにもたれて、腕を組んでいた。



「ここが俺の仕事場だ」

「随分と辺鄙(へんぴ)な所にあるんですね」

 俺は、嫌味交じりにそう言った。


「前は駅前に事務所を構えていたんだがな、あまりにも客が来過ぎて、かなり忙しくなったんだ」

 湊音は、楽しそうに笑うが、俺たちはじっとジト目で見た。


 心霊探偵という、信頼性の欠片もない職業が必要とされるなんて、世も末だな。一見すると、ただの探偵事務所に見えなくもないが。


「言いたいことってなんですか?」

 俺は、さっそく本題を促すことにした。

 三馬鹿は、すっかりそのことを忘れていたらしい。一体、何のために俺たちはここに来たんだよ。



「まあまず、怪異ってのはさ、たまーに人を食う訳よ」

 湊音は、そう言って、頬杖をついた。


「それは、楽しいからとか、単純に小腹が空いたとか、色々あるんだが、一番は強くなるため。人には生まれつき、霊力っつうのを持ってる奴がいるんだが、お前はそれが大量にある。この俺よりもだ。ああ、ちなみにそこの三馬鹿は一切なかっ()な」

「「「三馬鹿ぁ!?」」」

 高校でのあだ名と、違う意味ではあるが一緒のあだ名をつけられていて、ちょっと笑ってしまった。


「三馬鹿だろ。元はと言えば、あんなところで肝試しすんなよ」

「肝試しは、怖ぇ所じゃねーと、楽しくなんねーじゃん」

 三馬鹿は湊音に向かって口を尖らせるが、そういうところだ。


「というか、過去形……?」

「お、お前頭いいな」

 そう言って、湊音は俺の頭をワシャワシャと撫でた。なぜかこの湊音という男、は俺に甘い気がする。


「お、おい!」

「まあつまりは、お前ら三馬鹿も、ああいう霊的なものに深く関わっちまったせいで、霊力が生まれたって訳よ。とは言っても、ほとんど一般人と変わらないがな」

「まじか……」

 その、なんとも言えない表情を三馬鹿がしていたら、湊音が言葉をつづけた。


「ただ、他の連中と一緒に心霊スポットで肝試し行くと、真っ先に狙われるがな」

「ヒエェ……」

 割とダメージがあった。本当に、こいつらは懲りているのだろうか……。


 まあ、遅刻常習犯木戸に、居眠り常習犯長友、赤点常習犯松山。絶対懲りてないに違いない。


「だから、一つ提案がある。これは、俺にとっても、お前ら四人にとっても、いいこと尽くしだと思うぞ?」

「一体何ですか?」

 焦らす湊音に、俺は続きを急かした。


「まずお前、俺の助手になれ」

「はあ!?」

 俺は驚いた。なにせ、こんな怪しげなことをしているのだ。正直、俺は嫌だった。


「お前らは、まあパシリだな。事情知ってるし、霊力も持ってるし、ちょうどいい」

「「「なんでだよ!」」」

 三馬鹿も、俺と同じくその提案を断った。


「断りたいか?だが、これは強制だ。さっさと諦めるんだな」

「何で俺がそんなことしなきゃならないんだよ!」

 俺は、余裕たっぷりに笑う湊音に、そう叫んだ。


「まあ、今はいいや。少なくとも、すぐに助けてほしくなる状況になるからな」

 俺は、その不穏な言葉が、しばらく頭から離れなかった。

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