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廣田探偵事務所の事件簿~助手業始めました!~  作者: 七海飛鳥
高校の呪い

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4/10

 旧校舎の三階、右から二番目の教室に、俺と男――廣田湊音はいた。初めて入ったとき、祭壇が目に入り、ぞっとした。

 いかにも禍々しい、近づくのも嫌になる、そんな祭壇。


 俺は、よくあの三馬鹿はこれに近づいて、水晶割れたな、と変な方向で感心してしまった。

 俺なら、この教室に入る前に、全力で逃げてる。何なら、今も逃げたい。なんだよ、なんでここはこんなに空気が重苦しいんだよ。



 だが、その怖いもの知らずが、今の状況を生んでいる訳で。

 全てが終わったら、あいつらにもう一発は食らわせないと、気が済まなくなってきた。決して、人前で泣いたのが恥ずかしかったからではない。


 そんな俺が、湊音とここにいる理由は、あの化け物たちを退治するためだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 俺たちは、男の言葉に首をかしげた。


「協力?」

「俺ら、特別なことできねぇぞ?」

「それに、あいつらは一体何なんだよ」

「高校は、今まで一体何を隠していたんだよ!」

「まあまあ待て待て。あいつらの正体か……。お前らは、この高校でいじめを見たことがあるか?」

 男は、一斉に詰め寄る俺たちを適当に抑え、一つ疑問を投げかける。


「ないな!」

 木戸が元気に答えた。


「隠れてあるかもしれないぞ?」

 いじめというのは、分かりにくいらしいし。


「須藤、少なくともうちのクラスはないだろ?」

 松山が、肩を組んで俺の顔をのぞき込もうとしていたが10cmの壁により、結構不格好になっていた。


「まあ、確かにそうだが」

「それに、なんか道徳の授業を異様にするよな」

 友永は、そんな俺たちを無視して記憶を探っている。


「まあ当然だな。ただのいじめが、とんでもない事態を引き起こしたからな」

「「「とんでもない事態?」」」

「もしかして、あの化け物に関係しているのか?」

 俺は、あの気持ち悪い化け物を思い出しながら、男に聞く。


「お、お前頭いいな」

 そして、男は俺の頭をぐちゃぐちゃと撫でたが、初対面の人にやられたとて、全く嬉しくない。しかも男なんて……。


「この学校は昔、かなりいじめが横行していたんだ。酷い時には、他クラスも巻き込んで、相手を自殺まで追い込んだこともあった」

「うわ……」

 あまりの陰湿さに、俺たちは思わずドン引きした。なんだか、あの化け物が気持ち悪いのも、分かったような気がする。


「ある日、とあるいじめられっ子の女子高生が、とんでもない呪いを自分を虐めた連中や、それを無視した連中にかけた。代償は、術者本人の魂。犬や猫を殺して、その血で陣を描いた。その場所が――」

「――旧校舎の三階、右から二番目の教室」

 俺は、思わず口からそんな言葉が零れた。突然のことに驚き、思わず手で口を押さえる。


「そう。その教室は、当時彼女が在籍していたクラスが使っていた」

「つ、つまりあそこについての噂は……」

「全部本当だった、って訳かよぉぉ……!」

 三馬鹿が頭を抱えた。そんな、曰くがついていたとは、思わなかった。

 単純に、危険だから立ち入り禁止になっているとばかり思っていた。


「彼女がかけた呪いは、呪われた人間を殺し、呪いに取り込むこと。お前らが化け物と呼ぶ存在は、ほとんどが人間のなれの果て、という訳だ」

「あれが、元人間……?」

 確かに、人っぽい要素はあった。

 しかし、人間がどうしてああなるのか?あの化け物たちはまるで、できの悪い粘土工作のようだった。


「そうだ。ああいうのを、俺たちは“怪異”と呼んでいる」

「怪異……」

 誰かが呟く。よくアニメとか漫画とかである、幽霊とか妖怪とかのことだろうか?でもそれって、見える人と見えない人で別れるんじゃないか?


「いじめられっ子が呪いを完成し、自殺した翌日。遺体を発見したのは、生徒の一人だ。明らかに呪いの儀式をしたらしい教室の惨状に、当時の学校関係者は悩んだ。

 なんせ、その翌日から怪死事件が相次いでいたからな。当時は今よりも、呪いや霊などが信じられていた時代だった。

 そこで、いじめられっ子の呪いを解くために、霊能者に頼った。が、そこに行き着くまでに、少し人が死にすぎた。もう既に、呪いは人の手に負えないほどにまで成長していた」

「まじでとんでもねぇじゃん……!」

「本当に、俺たち無事でよかった……!」

 男の、想像以上にスケールの大きい話に、俺たちは呆気にとられた。


「そこで、呪いを封印して、ちょっとずつ解すことにした。複雑に絡み合った呪いだったからな。そうするしか、当時は解決方法がなかったんだ。そうして以後、あの場所を立ち入り禁止にしたのが、あそこの場所の真相って訳だ」

「でもさ、それにしてはその……怪異ってやつ?は多くなかったか?せいぜい一クラス30人前後だろ?」

「「「確かに……」」」

 友永の、珍しく鋭い言葉に、俺たちは校舎の様子を思い出す。どう考えても、それより多いし、かなり毛色が違う怪異もいた。

 例えば、一つ目一つ足の怪異とか。ここの怪異は、大体四本足なため、気になっていたのだ。


「それはな、単純にあの呪いの陰気に、周囲の怪異が吸い寄せられたからだ。そいつらも封印に引き寄せられて、まとめて封印された。まあ、あの呪いは人以外に害は及ばないやつだから、そこまで深刻に取らなくてもいいぞ」

 つまり、怪異を呪いが取り込むことはない、と。


「まじか……」

「そもそも、それから時間が経っていたからこそ、呪いの力が解けて弱まって、この超優秀な俺がスパッと祓えるくらいまで落ち着いている。だから祓いに来たんだが」

「「「ギクッ!」」」

 ギロリと睨まれる三馬鹿。目を必死にそらす三馬鹿。


「まあいい。今は怪異だ。まずお前」

「お、俺?」

 男が俺を指さした。俺は、男の真剣な表情に動揺する。


「まず、お前は餌だ」

「……は?」

 この瞬間、全ての時が止まった。

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