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廣田探偵事務所の事件簿~助手業始めました!~  作者: 七海飛鳥
高校の呪い

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2/10

「「「ギャアアアアァァァァァアアアアアア!!!!!!!」」」

「うるさっ!」

 手近な教室に入ると、三人分の悲鳴にお出迎えされた。


 耳を押さえ、その悲鳴の発生源を見やると、そこにいたのはクラスメイトの木戸、友永、松山だった。


「おおお、お前かよおぉぉぉ……、すす須藤!」

「そんなに怯えてどうしたんだ……」

 俺はすっかり怯えて、まるで残像が見えるくらいに体をバイブレーションしている三馬鹿に、心なしか、安心した。今までの震えが、ちょっと収まった。


 しかし、次の瞬間、俺は目の前が真っ赤になるほど怒り狂うことになる。



「おおお俺たちいいぃぃぃ、はは入っちゃったんだよおおおおぉぉぉぉ」

「どこに」

「ああ、あそこだよおおおぉぉぉ。きゅ、旧校舎の、三階」

「は?」

「はは、入っちゃいけないって、せ、先公に言われてたところあるだろおおぉぉ?右から二番目の教室ううぅぅ!!」

「お前ら馬鹿か!?」

 三馬鹿の言葉を理解するや否や、俺は三馬鹿を怒鳴りつけていた。

 この事態、こいつらの所為かよ!


 恐怖でどもりまくるこいつらの話を、簡単に要約すると、部活もない今日の放課後、こいつらは肝試しをしていたらしい。


 最初は近所の心霊スポットを巡ろう、という話をしていたものの、いつの間にか“入っちゃいけない場所”に入ろう、という話になっていたのだとか。

 いや、誰か思いとどまれよ。



 先生が、入学した時から言っていた、“入っちゃいけない場所”。

 そこは、色々と噂があり、その全てがろくでもない。


 いじめられていた生徒が、呪詛を吐きながら自殺した場所だとか、犬や猫を殺して、その血肉を用いて儀式をしていた場所とか、色々。


 教室に入ったら呪われるとか、とあることをしたら呪われるとか。



 そんな場所に、こいつらは入ったらしい。


 普段は鍵がかけられ、職員室で保管されているだろうそれを、先生たちがいなくなる隙を窺って、盗んでおいたらしい。

 それを使って、こいつらは”入っちゃいけない場所”――旧校舎三階の、右から二番目の教室へと、足を踏み入れた。


 こいつらによると、その教室の中にあったものは、シンプルな祭壇のようなものと、手のひらほどの大きい黒水晶だったそうだ。

 綺麗だな~、と手に取って見とれていると、ウッカリ手を滑らせて落としてしまった、と。


 よりにもよって、そんな場所にある水晶を、こいつらは割ってしまったらしい。


 それにどうやら、その水晶は、黒水晶ではなかった。こいつらが言うには、水晶を黒く見せていたのは、中で(うごめ)くものだったようなのだ。


 そいつらが、水晶が割れたことで解放され、一気に教室を埋め尽くした。

 三馬鹿は、恐怖でそこから即座に逃げ出した、らしい……。



「わざとじゃなかったんだよおおおぉぉぉおおお!!」

「うるさい!あの化け物に見つかるだろ!」

 俺は、一発ずつこいつらの頭を殴りつけた。完全に、俺は三馬鹿によって巻き込まれた。


「どどど、どこに逃げよううううぅぅぅ」

「はぁ、あのなぁ、校門は鍵がかかっていて、どこにも逃げられない。それに、あんなやばいやつらを封じてたものを壊して、どうするんだよ……。俺たちの手に、負えるものじゃない……」

 俺たちが途方に暮れていた、その時だった。


「ギエエェェェェェエエエエエ!!!!!」

「「「「「!!??」」」」

 扉の破裂音と同時に聞こえた化物の奇声。

 俺たちは、化け物がこの教室に入ってきたことを感じ、一気に恐怖に染まった。


 しっかり見てしまった。その化け物は、やけに大きく、そして膨らんでいる。喉が潰れたような声をしているこの化け物は、校門を壊した化け物とは違う。


 あいつは、手足が長かったが、こいつは首が異様に長い。舌がだらんと力なく垂れさがり、そして黒目が縦に長くまるで猫のようだ。

 それがより、人ならざる者、という印象を受けた。


「逃げろ!!」

 俺の言葉と共に、全員で走り出した。


 気配が禍々しい。今まで普通に暮らしていて、気配とか、感じたことなんかなかったが、なんとなくこれが“気配”なんだろうな、とこんな状況なのに考えていた。


 なんだか、あの獣臭いにおいが、鼻にまとわりついて離れない錯覚に陥る。どうするどうするどうする!!??

 焦りだけが募る。このままじゃ、全員化け物に捕まってお陀仏だ!


 あれこれ、あの怪物をどうすれば撃退できるのか、考えてるうちに、ふと思いついた。


「なあ、こいつら、塩って効くんじゃないのか?」

 よく、こういうのって、塩が一番とか聞くし。そんな、(わら)にも(すが)る様な俺の案に、三馬鹿は目を輝かせた。

 

「お、須藤天才!!」

「さすが須藤!」

「いい男!」

「普通はお前らが思いつくんだよ……」

 俺は溜息を吐いたが、気を取り直して木戸、友永、松山に家庭科室に行くように指示した。


「お前は……?」

「俺たちの中では、俺が一番足速いし、そもそもお前ら逃げれんの?あれに」

 そう言って、俺は背後を親指で指し示す。

 どろどろと、張うように蠢く化け物。動くスピードは、ひどく遅いものの、高校のそこら中にいる化け物から逃げなければならない。


 三馬鹿はソロっと後ろを見て、「「「無理無理無理無理無理!!」」」と叫んだ。


「さっさと家庭科室に行って、塩大量に持ってこい。詰め替え用のやつとかだぞ!」

「「「任せろ!!」」」

 威勢のいい返事が返ってきた。


 正直、肝試しでこんな事態を引き起こす奴らのことだ、全く信じられないのだが、他に頼れるあてもいないことだし、一旦信じることにした。



 三馬鹿が、家庭科室に向かって、塩を探すまでの時間。


 俺は背後の、俺を追いかける化け物を見て、五分くらいが限界だな、と思った。


 廊下を一気に駆け抜け、階段を手すりを滑って距離を稼ぐ。一度怪物から逃げた経験をもとに、俺は教室なんかも使って、奴らから逃げ続けた。

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