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廣田探偵事務所の事件簿~助手業始めました!~  作者: 七海飛鳥
高校の呪い

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1/10

短編より、加筆修正しています!

 今日も、いつもと同じ日々だった。

 同じ道を通り、同じ電車に乗り、同じ学校に通い、何の変哲もない授業を受ける。

 何も変わらない、つまらない日々。


 今日も、いつも見慣れた道を歩く。


 そんな日常に、うんざりしていたのが悪かったのだろうか。ライトノベルの主人公たちのように、何か非日常が起こればいい、と考えたのがいけなかったのだろうか。


 俺――須藤直哉は、とある事件の所為で、何の変哲もない普通の日常を、送ることができなくなった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ふぁ……。ねむ……」

「よお、珍しいな、須藤。お前が寝てるなんて。友永が感染ったか?」

 いつの間にか、寝ていたらしい。確か、数学の矢野先生の授業だった筈だ。

 異常な眠気に、また居眠りを再開しそうになる。しかし、根性で目を開く。


「そうだな……」

 そんな俺の顔を覗き込むようにして、ニヤニヤしているクラスメイトに、俺は返事をした。


 ちなみに友永は、よくこの男――木戸とつるんでいる、居眠り常習犯の名だ。

 赤点常習犯の松山と一緒に、三馬鹿と呼ばれていたりもする。目の前にいる木戸は、遅刻常習犯だ。


「もう授業は終わったぞ。ほら、ノートいるか?」

「いる。サンキュー、木戸」

 俺は、木戸からノートをありがたく受け取り、黒板の板書を写す。


 それから俺は、異常に眠かったものの、授業中に居眠りすることもなく、そのまま放課後になった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 昼の異常なほどの眠気はどこに行ったのか、と言いたいくらい、頭がすっきりしてきた放課後。

 用事をしていたら、かなり遅くなってしまった。

 すっかり、静まり返った校舎。流石に、先生たちはいるんだろうが、生徒たちはいないように見えた。


 教室が、夕日で赤く染まる。俺は、教室に置いてあった荷物をまとめて教室から出た。



 校舎から出る。部活をしている生徒はいない。水曜日である今日は、部活がない日だから、当然と言えば当然だ。


 俺は、誰もいないグラウンドを視界に収めつつ、校門へと向かう。


「……?」

 どこかで、何か割れる音がした。しかし、周りを見渡しても、その音の元凶となるものは、何もない。


「気のせいか」

 俺は、そう結論付けて、さっさと家に帰ることにする。



 いつも、解放されている校門は、なぜか閉まっていた。

 まだ日は沈んでいない。校門を閉じるには、早い時間だ。まだ、七時の下校時間に到達していない。


 俺は嫌な予感を感じつつ、校門に手をかけるが、鍵がかかっているようで開かない。


「はぁ?なんで?」

 俺は学校に閉じ込められたと思い、冷や汗をかく。

 今まで部活で下校時間を過ぎていたとしても、校門に鍵が閉まっていたことはなかったのに。


 校門を激しく揺らしたが、一向に開く気配がしない。その事実が、妙に焦りを募らせる。


「開け、開けよ!」

 俺は、音を立てて校門を揺らす。しかし、校門は頑なに開く様子がなかった。


 ここから出られないなら裏門か……?と考えていた、その時だった。


 どこか、獣臭いにおいがした。


「グオオオオォォォォォ」

 どこからか、獣のような、それでいて禍々しい声が聞こえた。

 俺は、恐る恐る振り返った。


 すると、そこには異形の存在がいた。なんというか、獣のような、どろどろしていて、臭い、禍々しいもの。

 犬のような四足歩行。だが、顔は人のもののように見える。


 校門を超えるほどの大きさ。そこから俺を見下ろす二つの黒い目は、ひどく濁って見えた。



 自然と体が震える。今、自分が何を見ているのか。これが現実だという事を、脳は理解し、危険を伝えるが、感情はそれを受け入れることを拒否する。



――な、なんだよ、これ……。なんでこんなのが高校にいるんだよ!?



 俺は、視線を化け物に向けたまま、固まった。すると、化け物が動き出した。――俺に向かって。


 ガシャン!!


 すぐ隣から、そんな音が聞こえた。俺は、いつの間にか地面に倒れていた。アスファルトのじんわりとした熱が、俺の手を温める。


 どうやら、俺はこの化け物の攻撃を避けたようだった。


 俺は、その方向をうっかり見てしまった。俺は、すぐ隣を視界に収めたことを後悔した。

 何せ、そこには鉄製なのにもかかわらず、大きくひしゃげた校門があったからだ。

 化け物の、どろどろとした何かが、校門にも垂れていた。それは、異様な光景だった。


 だが、鍵は校門がひしゃげても関係なく、外部と内部を遮断した。それが、まるで一種の結界のようで、ひどく不気味だった。


 心臓が、ドッドッと、いやな音を立てる。呼吸が乱れる。目が、そこにくぎ付けになって、動けない。

 長い手足を持つ怪物が、校門から手を離し、こちらを見た。怪物の目は、黒目が異常に大きく、まるで獣のようだった。


「あぁ、ああ!!」


 そうして、ふと気づいた。化け物が、たくさんいることに。そして、俺を取り囲んでいることに。


 嫌に獣臭いにおいが、この辺りを蹂躙していた。化け物が、俺に近づく。そのかすかな動きは、俺の金縛りをすっかり解いた。



 俺は、咄嗟に鞄を一番近くにいた化け物に投げつけ、すぐに逃げた。


 化け物たちは足がとても遅かった。だから、何とか逃げ切ることに成功した。



――校門からは逃げられない。校舎の方に逃げなければ!



 俺は、息を切らしてもなお、走っていた。まだ、あの化け物に追われている気がして。

 いつの間にか、校舎にも化け物がたくさんいる。犬や猫に、人間が混ざったようなものが多いが、それ以外の何物でもない、形容しがたい化け物もいる。

 俺は、そいつらに、見つからないように移動した。



 どこでもいい。とにかく、隠れなければ。


 俺は、近くの教室の戸に、手をかけた。

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