壱
短編より、加筆修正しています!
今日も、いつもと同じ日々だった。
同じ道を通り、同じ電車に乗り、同じ学校に通い、何の変哲もない授業を受ける。
何も変わらない、つまらない日々。
今日も、いつも見慣れた道を歩く。
そんな日常に、うんざりしていたのが悪かったのだろうか。ライトノベルの主人公たちのように、何か非日常が起こればいい、と考えたのがいけなかったのだろうか。
俺――須藤直哉は、とある事件の所為で、何の変哲もない普通の日常を、送ることができなくなった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ふぁ……。ねむ……」
「よお、珍しいな、須藤。お前が寝てるなんて。友永が感染ったか?」
いつの間にか、寝ていたらしい。確か、数学の矢野先生の授業だった筈だ。
異常な眠気に、また居眠りを再開しそうになる。しかし、根性で目を開く。
「そうだな……」
そんな俺の顔を覗き込むようにして、ニヤニヤしているクラスメイトに、俺は返事をした。
ちなみに友永は、よくこの男――木戸とつるんでいる、居眠り常習犯の名だ。
赤点常習犯の松山と一緒に、三馬鹿と呼ばれていたりもする。目の前にいる木戸は、遅刻常習犯だ。
「もう授業は終わったぞ。ほら、ノートいるか?」
「いる。サンキュー、木戸」
俺は、木戸からノートをありがたく受け取り、黒板の板書を写す。
それから俺は、異常に眠かったものの、授業中に居眠りすることもなく、そのまま放課後になった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
昼の異常なほどの眠気はどこに行ったのか、と言いたいくらい、頭がすっきりしてきた放課後。
用事をしていたら、かなり遅くなってしまった。
すっかり、静まり返った校舎。流石に、先生たちはいるんだろうが、生徒たちはいないように見えた。
教室が、夕日で赤く染まる。俺は、教室に置いてあった荷物をまとめて教室から出た。
校舎から出る。部活をしている生徒はいない。水曜日である今日は、部活がない日だから、当然と言えば当然だ。
俺は、誰もいないグラウンドを視界に収めつつ、校門へと向かう。
「……?」
どこかで、何か割れる音がした。しかし、周りを見渡しても、その音の元凶となるものは、何もない。
「気のせいか」
俺は、そう結論付けて、さっさと家に帰ることにする。
いつも、解放されている校門は、なぜか閉まっていた。
まだ日は沈んでいない。校門を閉じるには、早い時間だ。まだ、七時の下校時間に到達していない。
俺は嫌な予感を感じつつ、校門に手をかけるが、鍵がかかっているようで開かない。
「はぁ?なんで?」
俺は学校に閉じ込められたと思い、冷や汗をかく。
今まで部活で下校時間を過ぎていたとしても、校門に鍵が閉まっていたことはなかったのに。
校門を激しく揺らしたが、一向に開く気配がしない。その事実が、妙に焦りを募らせる。
「開け、開けよ!」
俺は、音を立てて校門を揺らす。しかし、校門は頑なに開く様子がなかった。
ここから出られないなら裏門か……?と考えていた、その時だった。
どこか、獣臭いにおいがした。
「グオオオオォォォォォ」
どこからか、獣のような、それでいて禍々しい声が聞こえた。
俺は、恐る恐る振り返った。
すると、そこには異形の存在がいた。なんというか、獣のような、どろどろしていて、臭い、禍々しいもの。
犬のような四足歩行。だが、顔は人のもののように見える。
校門を超えるほどの大きさ。そこから俺を見下ろす二つの黒い目は、ひどく濁って見えた。
自然と体が震える。今、自分が何を見ているのか。これが現実だという事を、脳は理解し、危険を伝えるが、感情はそれを受け入れることを拒否する。
――な、なんだよ、これ……。なんでこんなのが高校にいるんだよ!?
俺は、視線を化け物に向けたまま、固まった。すると、化け物が動き出した。――俺に向かって。
ガシャン!!
すぐ隣から、そんな音が聞こえた。俺は、いつの間にか地面に倒れていた。アスファルトのじんわりとした熱が、俺の手を温める。
どうやら、俺はこの化け物の攻撃を避けたようだった。
俺は、その方向をうっかり見てしまった。俺は、すぐ隣を視界に収めたことを後悔した。
何せ、そこには鉄製なのにもかかわらず、大きくひしゃげた校門があったからだ。
化け物の、どろどろとした何かが、校門にも垂れていた。それは、異様な光景だった。
だが、鍵は校門がひしゃげても関係なく、外部と内部を遮断した。それが、まるで一種の結界のようで、ひどく不気味だった。
心臓が、ドッドッと、いやな音を立てる。呼吸が乱れる。目が、そこにくぎ付けになって、動けない。
長い手足を持つ怪物が、校門から手を離し、こちらを見た。怪物の目は、黒目が異常に大きく、まるで獣のようだった。
「あぁ、ああ!!」
そうして、ふと気づいた。化け物が、たくさんいることに。そして、俺を取り囲んでいることに。
嫌に獣臭いにおいが、この辺りを蹂躙していた。化け物が、俺に近づく。そのかすかな動きは、俺の金縛りをすっかり解いた。
俺は、咄嗟に鞄を一番近くにいた化け物に投げつけ、すぐに逃げた。
化け物たちは足がとても遅かった。だから、何とか逃げ切ることに成功した。
――校門からは逃げられない。校舎の方に逃げなければ!
俺は、息を切らしてもなお、走っていた。まだ、あの化け物に追われている気がして。
いつの間にか、校舎にも化け物がたくさんいる。犬や猫に、人間が混ざったようなものが多いが、それ以外の何物でもない、形容しがたい化け物もいる。
俺は、そいつらに、見つからないように移動した。
どこでもいい。とにかく、隠れなければ。
俺は、近くの教室の戸に、手をかけた。
星、評価、感想お願いします!




