第5話 オルの昔の話
リシア視点
「あれリットくんどうしたの〜?」
「リシアさんがオルの昔の話を聞きたいらしくて!」
「なら私も参加するわ〜! ほらみんな座って!」
やっとオルの昔の話を聞ける....。
昔はどんな感じだったんだろう。
やっぱりわんぱくで元気な子供とか。
いやもしかしたら今とは違って静かで本とかを読んでいたとか。
確か前に本が好きと言っていたしありえるのでは。
表向きでは帝国でもトップレベルの強さを誇る騎士だけど裏では静かに読書を嗜んでいたりしたらそれはもう。
最高です....。
いけないけない。
こんなことを考えてたら話を聞き過ごしてしまうかもしれない。
「それでさっそく聞かせてもらいましょうか。オルの昔の話とやらをね」
マリネアがなんだか尋問官みたいな雰囲気を醸し出してる。
「オルちゃんはなんだかいつも考え事をしている感じがしてたわよ〜」
「確かに遊んでる時になぜかぼーっとしてる時もありました!」
オルは見た目によらずそこまでははしゃいでなかったんだ。
「そうなのね。ところでオルがさっき言ってたローナって誰なのよ」
「ローナは俺達とよく遊んでた女の子のことだよ」
お、女の子。
「ローナとオルは特に仲良かったな。って言ってもローナがずっとオルの後ろをおっかけてただけなんだけどな」
な、仲がよかった。
「懐かしいわね〜! この家にローナちゃんとリットくんとアリーシャちゃん泊まりに来た時のことを今でも覚えてるわよ〜!」
「あー、あれは凄かったですよね」
「リット、その日は何があったんだよ?」
「その日はオルの部屋で寝てたんだけどそこで問題が起こったんだよ。朝起きたらローナがオルのベッドに入って抱きついて寝ててさ、俺とアリーシャとたまたま来たオルのお母さんと悶絶してたな」
「オルって結構モテるのね」
「確かにまぁまぁモテてたな。なんせ村の子供の中では強いしかっこいいし弱点なんてなかったからな。ただひとつ抱きつかれてたのに起きた時に何も思ってなかったことが何よりの弱点かもしれない」
「オルのあれはその時から始まっていたのか」
「お! お前らもわかるのか!!」
みんな何の話をしてるんだろう。
それにしてもオルが女の子と一つ屋根の下で寝た...。
しかも抱きついて....。
その上モテる。
わ、私、もしかしてライバル多めなのでは。
「他にもオルちゃんは両サイドに女の子を連れてた時もあったわね〜」
ハ、ハーレムオル。
両サイドとも飛ばして私だけが...。
「しかも手をつないで!」
手をつなぐ。
そ、そんなことまだされたことないのに....。
あ、でも私オルと握手をしましたしそこは負けてません。
うん、負けてない。
「でもやっぱりその時もあれだったんでしょ?」
「そう! そうなんだよ。あいつモテてんのにずっとあの調子だからちょいむかつくんだよな.....」
先程からエルやマリネア、リットさんが言ってるあれって何なんだろう。
「でもまだオルちゃんはあの事も引きずってるのよね。見ててもわかるわ。まだ何か思っているところがあるんでしょうね」
「俺達も何度かオルを励ましたけどそれも意味をなさなかったからな....」
「あの事ってなんですか?」
「そうね〜。でもこれはオルちゃんが気づいてあなた達に話したいと思ったときに聞いて知ったほうが良いことかも知れないわ」
「そ、そうですか」
「ごめんなさいね〜。でもこれがオルちゃんの為になることだから。自分で立ち上がらないと....」
そっか。
オルはまだ私達に話してないことがあるんだ。
でもわかる。
打ち明けられないオルの気持ちを。
打ち明けたくてもそれが出来ないんだよね。
もう少しオルのことを知らないと。私は約束したんだから。
オルの味方だって。
「疲れたーってお前ら戻ってたのか。てかなんでリットもいるんだよ。それに座って....。余計なこと言ってないだろうな?」
「ちょっとオルちゃんの可愛い過去を話してただけよ!!」
「オルは昔からオルだったのね」
「早く成長することを僕はただただ願うよ」
「なんだよその対応は!!」
オルは今も今までもこんなに笑顔。
明日もきっと笑顔。
だから私はそんなオルの笑顔を守りたい。
「リシア、そんなにニコニコでどうしたんだ?」
「え! あ! いや...!! なんでもない!!」
オルを笑顔にする前に私...おかしくなっちゃうかも。