第2話 俺達は5人で生きていく。
俺は宿舎に戻るとさっきあったことをみんなに説明した。
「それはどういうことなんだ!」
「僕達は無職になるってこと.....か」
「全く大変なことになったわね」
「オル.....」
みんなの気持ちは痛いほどわかる。
だっていきなり無職になったんだ。
こんな状態で焦らない人なんていないだろう。
一体どうしてこんなことになってしまったんだ。
みんなまでやめることになるなんて。
これは俺のせいなのか。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
「悪い。リシア。ちょっと一人にしてくれ」
俺はリシアにそう言い自分の部屋に行きベッドに横になった。
あー、リシアがあんなに心配してくれているのになんで俺はあんなことしたんだよ。
優しさを踏みにじるなよ。
リシアに八つ当たりでもしたいのか。
もう、何なんだよ。
俺達はあんなに頑張ってきたのに。
命の危険があることもあったのに。
それなのにどうして。
はぁ、荷造りしないとな。
これからどうすんだよ。
てか隊長の俺がこんなんで大丈夫なのかよ。
あぁ、もういろんな感情がありすぎてなにもわからない。
もう今日はまだ早いかもしれないけど寝よう。
寝て忘れよう。
そして俺は眠りについた。
@@@
「オル....? 居る?」
....リシアの声が聞こえる。
俺を呼んでるのか。
「入って良い?」
やっぱりリシアだ。
あんなことを言ったのに俺のことを気にしてくれてるのか。
優しいなぁ。
「...入っていいよ」
「スープ作ってきたからこれ....!!」
「....ありがとう」
リシアは俺の為にスープをわざわざ作ってきてくれたのか。
こんな俺にそんなことをするなんてリシアも馬鹿だな...。
俺はリシアの作ったスープを口につけた。
あぁ。温かい。
美味しい。美味しい....。
「オル!? どうしたの?!」
リシアは何に驚いてるんだろう。
なんかあったのかな。
あれ、何か流れてる。
なんだこれ。
もしかして涙か。
なんで泣いてるんだ。
「大丈夫?」
「....懐かしいなぁ」
...懐かしいから泣いてるのか。
「...リシアありがとう。なんだか昔を思い出すよ」
「そうだね」
昔、似たようなことがあった。
騎士団の戦闘試験でボロボロにされ最下位で終わり、俺だけが成績を残せず置いていかれてしまった。
もちろんその日の夜は悔しくて泣いていた。
そんな夜に俺を助けてくれたのはリシアだった。
リシアは俺にわざわざスープを作ってきてくれたのだ。
「これのんで? 元気だして!」
「え?」
俺は渡されたスープを飲むとなんだか気分が軽くなったような気がしていた。
それで色々と吹っ切れ、何日も何週間も何ヶ月も努力を重ね今に成長することができた。
だから今の俺があるのはリシアのおかげかもしれない。
そして俺はまた救われた。
このスープをのんで励まされた。
これはリシアにしか作れない魔法のスープだ。
「リシア。ありがとう。本当に...ありがとう」
「一人で抱え込まなくていいんだよ。仲間がいるんだから」
「....リシア!!」
「私はオルの味方だよ。昔も今もこれからも」
「....ああ、リシアが....」
そして俺は泣いて疲れたのかまた眠りについた。
「え!? 今なんて?! ねぇ!!」
なんかリシアが何かを言ってるのは聞こえたがどういうことかわからなかった。
でもリシアの顔が赤くなっていたのはわかった。
それより明日になったら切り替えよう。
リシアの為にも....。
@@@
朝から俺達の宿舎の扉を叩く音が聞こえてきた。
「おいオルトリア、今日が退去日なのはわかってるか」
「わかってますよ。現に準備は終わりましたし」
「ふっ。そうか。それじゃあ」
デリア様はそう言ってすぐに帰っていった。
「オル....」
「ヘイル! デリア様についてきてたのか!」
「本当にここからいなくなるのか? 街の人も悲しむぞ!」
「これはもう変えられないことらしいんだ。ごめん。でもいつか会いに来るから」
すると俺からは見えないところからデリア様の声が聞こえてきた。
「おい、ヘイル早く来い」
「悪い! もう行かなくちゃ。オル、絶対帰ってこいよ!」
「ああ!!」
そしてヘイルは去っていった。
俺達もそろそろここを出る時間だ。
ここもたくさんの思い出があったな。
みんなと別れるなんてことはしたくない...。
でもこれがけじめだ。
隊長としての。
「みんな。今までありがとう。みんなと過ごした時間は一生忘れない!」
みんなに別れの挨拶を言い宿舎を出ようとした時。
「ハハハ!!」
「ふっ」
「「ふふふ!!」」
みんなが何故か笑っていた。
「何がおかしいんだ?」
「オル、もしかして私達を置いていく気なのね?」
「僕達を置いて何が出来るのやら」
「俺達全員揃って最強だ!」
「みんなオルについていくよ! どんな事があっても私達は仲間だから!!」
「みんな....!!」
全く....。
みんな優しいやつだ。
「ダントー!! マリネア!! エル!!」
俺は嬉しさのあまり三人に抱きついてしまった。
「ちょっといきなり何してるのよ!」
「オルに抱きつかれても嬉しくないんだけど。でもまぁ、今回は許すわ」
「オル、痛いぞ!」
「みんなー!! ツンデレだな!!」
「「「ツンデレじゃない」」わよ!!」
みんなさっきまで優しかったのに怖くなってしまった。
「あ!」
「オル、リシアは?」
「リシアー!! 色々ありがとな!」
俺はその時気づいてしまった。
この勢いでは抱きついてしまうのではないか。
いきなり抱きついたら嫌われてしまうかもしれない。
耐えろ、俺。
「何卒ーよろしくお願い致しますー」
「な、なんで私だけ握手!?」
握手をすることによって耐えることが出来た。
でもなぜかリシアは顔を昨日のように赤らめていた。
「またオルが壊れてるわね」
「もう僕は慣れてきたよ。これには」
「俺もだ!」
俺そんなに壊れてるか。
「それよりもう出た方がいいんじゃないか?」
「そうだな。よし行くか!!」
俺達は外に出て宿舎の方を向いた。
「「「「「お世話になりました!!」」」」」
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今後も何卒....!