第1話 突然の裏切り
「最近思った。リシア可愛すぎじゃないか」
俺は魔物を斬りながらふとそう思い誰にも聞こえないように静かに叫んだ。
俺はこのミルージア帝国の騎士団の特殊隊で毎日人々の為、帝国の為、世界の為に働いている。
特殊隊というのは魔法や剣に長けた者が集まる隊のことだ。
ちなみに俺は特殊部二番隊の隊長だ。
結構ちゃんとした地位にいる。
「よし、これで倒し終わったか」
今日倒したのは中級程度の魔物だ。
倒せるがただめんどくさい。
「わー僕達ひまだなー」
「私達の分も少しくらいは残しておきなさいよ」
「さすがオル...!!」
「俺も戦いたいんだけどな」
この四人は俺が隊長をしている特殊隊の大切な仲間のエルとマリネアとリシアとダントだ。
これまでこのメンバーで様々な困難を超えてきた。
「お腹空いたしかえろーぜー」
「そうだな。討伐したしかえるかー」
いつもこんな感じで結構てきとうな部分もあるがなんやかんやうまくやってきている。
だが....うまくやってきていると言ったがひとつ問題がある。
それは....。
「あ! リシア様だ! こんにちわー!」
「アルトくん、こんにちわ! 元気にしてました?」
「ナァアアア!!!」
「いきなり叫ばないでよ」
「またか....」
なぜか最近リシアが可愛い。
いやめちゃくちゃ可愛い。
いや天使。
いつからこんなこと思い始めたかはわからないが気づいたら可愛いと思うようになっていた。
俺はもう崇拝の域に到達しているのかもしれない。
「オル、何に祈りを捧げてるんだ」
リシアは地に降りてきた天使なんだということで今は結論づけている。
「オル? どうしたの?」
「は!?」
リシア様よ〜。
いきなり顔を近づけてくるのは犯罪だ....。
心臓持ちません...。
「な、なんでもないよ。ただ考え事をしてただけだ」
「悩みごとがあるなら相談してね! オルは私が助けるから!!」
そんな相談を出来るか。
恋の話を...しかも本人にするとか。
死刑より恐ろしい。
「今日もオルの様子はおかしいわね」
「お、俺はおかしくないぞ!」
「何から何までおかしいわよ」
「そうなのか....? ダント! そうなのか....?」
「そうだな」
まさか俺のこの心の中の声が体にまで現れていたなんて....。
崇拝を自重しなくては。
「もう王城に着いたんだからしっかりしろよ」
そうだ。
しっかりしなくては。
なぜ今俺達が王城に来ているかというと騎士団は受けた仕事を終えたら王城にいる帝国攻防に報告しなければならないのだ。
はっきり言ってめんどくさい作業である。
正直のところこのまま騎士団の宿舎に帰りたい。
「オル! もう帰ってきたのか!」
「あぁ! そっこー終わったぞ」
「さすが特殊隊だ!」
こいつは王城門番のヘイルだ。
攻防採用試験からの仲だ。
「そう言えばオル、なんかやらかしたのか?」
「どうしてだ?」
「さっきデリア様が会議の間にオルを大至急連れてこいって言ってたから」
デリア様というのは帝国攻防を担当する人。
つまりはお偉いさんということだ。
それにしても俺はなにもした覚えがないんだが....。
「僕の知らないとこで犯罪に手を染めていたのか....!?」
「そんな事してないからな!!」
「オルはそんなことしないよ!」
相変わらずリシアは優しい....。
あぁ、天使だ。
「とりあえず早く行った方がいいぞ」
「わかった。それじゃあ俺は行ってくるからみんなは先に宿舎に戻っといてくれ!」
「何があったか教えろよ」
「おう!」
とりあえず今は急ごう。
お怒りかもしれないがもしかしたら褒められるかもしれない。
もしや団長に昇進とか。
でもみんなと離れるのはな...。
「オルトリア・レステンクール、こっちだ」
彼は確か側近の誰かだ。
名前は覚えてない。
「中へ」
中に入ると部屋は薄暗くなんだが不気味だった。
「遅い」
「申し訳ありません! 本日分の任務に行っておりました!」
デリア様は相変わらずおっかない。
それよりデリア様に視線を向けていたから気づかなかったが俺を囲むようにテーブルが置かれそこには人がいた。
そこに居たのは帝国経済のリサイヤ、帝国農林のクローネ様そしてこの帝国の王フォルデルア様だった。
どうやら数名いないようだ。
「それは許そう。オルトリア、真ん中へ来るのだ」
フォルデルア様、寛大だ。
「フォルデルア様。本日はどのようなご要件でございましょうか」
「そうだな。本題に入ろう。デリア、説明してやれ」
「わかりました」
デリア様はテーブルに肘をついて話始めた。
「率直に言おう。オルトリア・レステンクール、君には騎士団をやめてもらう」
どういうことだ。
騎士団をやめてもらうと言ったのか。
「ど、どうしてですか!! 一体なぜ!」
「落ち着け。ただ君は不要になっただけだ」
この人は何が言いたいんだよ....。
「自分で言うのもあれですが十分に貢献してきたと言い切れます! それなのに...!」
「確かに君はこの帝国にとてつもない貢献をしてくれた。それは称賛しよう。だがもう必要はない
「だからどうしてなんですか! 理由になっていないんですよ!!」
「もう関係のない者に理由を説明することは出来ない。それと君の仲間も全員辞めてもらう」
みんなまで...。
「自分が解雇になるのはもうわかりました。ですがなぜ彼らまで解雇するのですか! 彼らも同じ様に貢献してきました!!」
「確かにそうだ。だがこれはもう決定事項。明日中に宿舎から荷物をまとめてこの帝国を出て行ってくれ」
帝国も出ていくのか。
なんで俺達がそんなことをしなくちゃならないんだ...。
はぁ。
もうこれ以上何を言っても意味がないか....。
「わかりました。明日中に荷物をまとめて出ていきます」
「このような戦力を失うのは実に帝国にとって惜しいです。ですがそれよりメリットがでかいですからね」
リサイヤ様、何を言ってるんだ。
「もう行って良いぞ」
「はい。今までありがとうございました。それでは」
「本当に惜しいことするわね〜。解雇する必要まであったのかしら〜」
部屋を出ていく時後ろでクローネ様がそう言ってるのが聞こえたが振り返ることなく俺はそのまま歩き部屋を出た。
はぁ。
もうこれ、なんて説明したらいいんだよ。
これで全員無職だぞ。
洒落にならない。
俺は「なんでこう人生はうまく行かないんだよ!!!」と叫び王城をあとにして宿舎へ向かうのだった。
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第2話はこのあと。
第3話は2話投稿後少しあとに投稿予定
第4話は朝投稿予定です。
第5話は18時頃投稿予定です。