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人次元では最推しです  作者: 聿八路彰
第九章 聖国の灰聖女
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9-9 翠の神官

「ぜんっぜん、思いっきり、納得いかねーんだけどぉっ!!?」


 だんっ! とジルディンにしては全力で腹に据えかねた様子で、宿の卓を殴りつけるのに、仲間たちは揃って肩をすくめてみせた。


「納得いかねーって、なにが?」


「なにがじゃねーだろっ、なんもかんもだよっ! あの女のやったことも気に入らねーし、そー言ったらえらそーなこと言われたのにもムカつくし、それに文句言ったら縛られて放り出されたのもめちゃくちゃ腹立つし、もーなんもかんも死ぬほど納得いかねーんだけどっ!!」


「そうかい。それにしちゃお前、暴発して術式ぶちかまそうとかしなかったみたいじゃねぇか」


「それやったらすぐ気絶させられる術式、ネテがかけてたからじゃんっ! それなかったらぜってーあいつらめったくそにやっつけてやったのにっ!」


「つまりその術式をかけておいて大正解、ということだな。僕の先見の明にせいぜい感謝することだ」


「むぐぐぎぎー!」


 さすがのジルディンも、腹が立ったからといって一般人(というには地位と権力を持っている)相手に攻撃術式をぶつけるのは犯罪で、冒険者ギルドからも除名されて牢獄にぶちこまれる、ということは理解しているらしい。その一件についてそれ以上ネーツェに憤懣をぶつけることはなかったが、納得はまるでしていない様子で、ばんばんと卓を叩いて喚きたてる。


「なんっであんな女に、俺がえらっそーなこと言われなきゃなんないわけぇ!? 俺なんっも間違ったこと言ってないじゃん! 魔獣は間引くなんてのはあったりまえのじょーしきじゃん! それもやんねぇで、あんなふーに………ざっすざす………あんなことやるほーがおかしいじゃん! みんなはそう思わねーわけ!?」


「………ま、フツーに変な話だとは思ったな。なんでわざわざそんなやり方してんだ、っつーか。間引けば素材やらなんやらもそれなりに手に入るってのに」


「つか、まぁ………俺的には女扱いするような年の子じゃねぇにしろ、可愛い顔した子が自分を刺しまくる、なんつぅのはいっくらなんでも心臓に悪かったよな。ぶっちゃけ、俺驚いて固まっちまったし。止めようとか考える以前に、状況がわけわかんなかったっつーかよ」


「だよなっ、変だよなっ! あの女ふっざけんなよって思ったよなっ!」


「………僕としては、驚きはしたが、止めようとは思わなかったな」


「はあぁぁ!?」


 ジルディンにぎっと睨みつけられながらも、ネーツェは仏頂面で説明する。


「なにせ、あれは宗教行為だ。一宗派の首座が行う儀式のひとつだ。その行為自体の意義や意味についてはおいておいて、宗教が絡むとなれば常識や良識だけでなく、その人間の宗教観や崇める神の存在意義についても踏み込まなきゃならない。複雑すぎて繊細すぎる、そんな問題に関わるなんていうのは、見えている地雷に突っ込むようなものだろうが」


「はぁぁ―――!? ネテお前なに言ってんの!? しゅーきょーがどうだろうがなんだろーが、あんなばっかばかしーやり方で魔物追っ払ってえらそーな顔してるとか、馬鹿のやることとしか言いようねーじゃんっ!」


「お前な………それが神官の言うことか? 人それぞれの信仰を尊重するというのは、どんな神を信ずるものだろうが、まともな宗派で学んだ者なら当然以前の心得だろうが。というか、ゾシュキアの教えの根幹は、独立独歩と自主自尊じゃないのか。個々人の価値観を尊重するというのも、ゾシュキア神官なら順守しなければならないことのひとつだったと思うが?」


「ぅぐっ………」


 さすがにゾシュキアの教えを持ち出されるとジルディンの勢いもいくぶん減衰したが、それでも熱された頭と心の勢いは止まりはしないようで、すぐにネーツェを睨みつけて噛みついてくる。


「だったらあんな真似がいーことだとかいうわけ!? かちかんがどーとかじゃなくて………えっと………あれだよ、人として守らなきゃいけないこととかだよ! あんなふーに………自分傷つけるとか………やっちゃいけない、こととかじゃん!」


「あの行為自体の是非はおいておいて、だ。彼女は別に他者に迷惑をかけたわけじゃない。自分以外の誰かを苦しめたりもしていない。ただ単に自分を傷つけて、魔物たちを追い払っただけだ。結果のみを見るならば、彼女は自分が傷つきながら戦って魔物を追い払った戦士と同じことをしている、ともいえる」


「だ、だけどっ………」


「戦って倒して、素材やらなにやらを手に入れて、それを各種産業に活用する、というやり方の方が健全だとは僕も思う。だが、彼女は一国の首長ともいえる存在だ。この国は昔からずっと、ああいうやり方で魔物を追い払ってきて、それが当たり前になってるんだろう。それならいまさら魔物を狩るやり方に戻しても、素材等を十全に活用することはできないだろうし、その他にも種々の問題が発生することは想像に難くない。それなのに、横から口出しをしてなんになる? この国の人間がどう魔物に対処するかは、この国の人間が決めることだぞ」


「けっ………けどぉっ!」


「んー、まぁそういう風に言われると、確かにそうかもな。どういう風にやってくかに、横から口出しされても余計なお世話としか言いようねぇか」


「いや、女の子を傷つけて生き延びるとか、普通にダメだろ。いい年こいた男どもが、あんな女の子に傷つく役割押しつけてるってことだろ? そんなん男として認められるわけねぇわ」


「………俺は、ジラさまの気持ち、わからないでもなかったけど」


『えっ………』


 仲間たちが、声を揃えて視線を向けてくるのに、肩をすくめてみせながら、ロワは自身の内心を淡々と語った。


「あれは要するに、『殺したくない』『殺さずに生き延びる方法はないか』って気持ちが行き着いたところだろ。基本はそんな、ごくごく単純な気持ちだと思う。まぁイシュニって国がそういう仕組みになってるってことは、イキシュテアフさまご自身の考えが大きく関わってるだろうから、人間にはとうてい理解できないような深いお志があるのかもしれないけどさ」


「はぁぁ!? っだよそれ、殺したくねーもなにも、魔獣は殺すのが当たり前じゃん! 殺さねーといろいろ面倒起こすじゃん! それなのにいまさら殺したくねーとか、手ぇ汚したくねーとか、ばっっっかじゃねぇのあいつら!?」


「俺は馬鹿だとは思わない。殺すのが当たり前だ、っていう現実を踏まえた上で、奪わなくちゃいけない命、殺さなきゃいけない事態を、少しでも減らそうってあれこれやってみるのは、別に悪いことじゃないと思う」


「っ………そ、そりゃ………そーいうのは、悪いことじゃ、ないかも、しんないけどさ………」


「ふーん………もしかして、ロワ、お前さ。殺すのとか、ヤなわけ?」


「そうだな。魔獣だろうが獣だろうが人だろうが、殺さなくてすむのなら、それにこしたことはないと思ってる」


「へー。変わってんだな」


「まぁ、殺すの大好き、ってのよりは普通だと思うけどよ」


「や、だって生きてんなら殺すのなんて当たり前だろ? 殺さなきゃ肉も魚も食えねぇんだし。それなのに殺すのいやがるとか、ばかばかしくね?」


「生きてる以上殺すのなんて当たり前だ、っていうのはわかってるけど。それでも俺は、殺さなくてすむならその方が嬉しいよ。食べるために獣や魚を殺す時も、殺したくないな、って思っちゃうのを無理やり抑えつけて殺してるから。正直、だいぶ日常生活で気が楽になる」


「え、お前食う時もそういう風に、やだやだやだやだ、って思いながら殺してんの?」


「うん、まぁ」


「いや、そんなん本気でばかばかしくね? 考えても考えなくても殺すのは一緒なんだろ? それなのにわざわざ嫌なこと考えて、なんか意味あんの?」


「意味、っていうか。勝手に頭が考えちゃうんだよな。俺も、こうなるかもしれない、って思っちゃうから」


「………は? なんだそれ、どういう意味だ?」


「俺も、こんな風に、自分より強い相手に殺されて、食われたり、死体を好き勝手に使われたりするかもしれない、って考えちゃうんだよ。俺にしてみれば、俺が殺した相手は、獣も魚も人間も、もしかしたらそうなるかもしれなかった自分に見える。だって俺は、取り立てて強いわけでも、偉いわけでもないんだからな。少しの油断や、ひとつの手違いで、魔獣や獣や人間に殺されるなんて、ごく当たり前にありうる。だろ?」


『……………』


 仲間たちは揃って黙りこむ。黙るほどのことを言ったつもりはなかったロワは、どうかしたのかなと少し訝ったが、黙ってくれているならと話を先に勧めた。


「だから俺は、人でも獣でも魔物でも、殺すのは好きじゃない。苦しめるなんてのは特にいやだけど、苦しめずに殺せたとしても、だいぶいやな気分になる。だって俺が殺された時に、苦しまされることがなかったとしても、殺されることに納得なんてまるでいかないだろうからな。もっと生きたかったとか、なんで自分が殺されなきゃならなかったんだとか、そういういまさらな未練でいっぱいになると思う。生ある者すべてを呪う、なんてことはしたくないけど、そうしたくなる気持ちもわかる、くらいにはひどい気分だろうな」


『……………』


「や………言いてぇことはわかるけどさ。だからって、そんなこといちいち考えても、意味なくねぇ? それこそいやな気分になるだけだろ? 俺らが倒す魔獣だのなんだのは、倒さなきゃならねぇ相手なんだしさ………」


「いや、言っただろ? 意味があるとかないとかじゃなくて、単に勝手に考えちゃうだけだって。だって、俺は本当に、少しでも運が悪ければ、目の前で殺されてる魔獣や獣みたいに、殺されてたかもしれない、餌になってたかもしれない人間なんだから。〝死〟を押しつけられることが当然ありうる側の人間だから、〝死〟を押しつけるのもいやな気分になる。それだけだよ」


『……………』


「だから、ジラさまも、彼女以前の聖女の方々も、似たようなことを感じたんだろうな、って思ったんだ。殺したくない、〝死〟を押しつけたくない。なにか他の方法はないのか、って。いや、もしかしたらイキシュテアフさまご自身がそうお考えなのかもしれないけど、聖女の方々自身も同じように考えていなかったら、あんな術法を使える加護なんて与えないだろうからな。ごく当たり前のやり方以外に、もっといい方法はないかってあれこれと模索して、その結果があの自傷行為なんじゃないか、って思った。だから俺は責める気にはなれないし、気持ちがわからないでもない、って言ったんだよ」


『……………』


 卓の上に沈黙が下りる。揃って黙りこむ仲間たちを怪訝に思いながらも、料理やけに時間がかかってるな、とちらりと視線を逸らすと、ジルディンが顔を歪めながら、きっとロワを睨みつけ、絞り出すように想いを告げてきた。


「………っ、けど。けどさ。俺はっ………やだ。神さまがあれが正しいっつったって、文句言うなっつったって、ぜってーヤダ! 納得いかねー! 俺はっ………ロワが、あの女のやること、間違ってないっつっても、ぜったい………ぜったい、気に入らねーもんっ………!」


「そうか。なら、どう伝えるか考えてみるか?」


『………へっ?』


「はっ? ………なんだ、俺、なにか変なこと言ったか?」


「い、いや………変、っつぅかよ」


「お前からしてみれば、ジルの言い分は、子供の駄々にすぎないように思えるんじゃないのか? てっきり、ジルを叱りつけるつもりで話をしていたんだとばかり」


「? 別に叱りつけるような話じゃないだろ。俺の言い分も、ジルの言い分も、つまるところは個人の好みなんだから。ジラさまの言い分は、国やらこれまで積み重ねられてきたイキシュテアフさまの教えやらが混じる分、それだけとは言い難いだろうけどな」


「………個人の好みなんだから、口出し無用、と言い張るのが普通の考え方なんじゃないのか?」


「まぁ、誰もかれもに口出しされたら、ただの俺なりの好みなんだから、放っておいてくれ、って言いたくなるだろうけどな。自分から心に踏み込んだ相手に踏み込み返されるのは、当たり前というか、当然のことと覚悟してなきゃならないところだろ?」


「へっ? ど、どーいう意味?」


「どういう意味もなにも。先にお前の好みに踏み込んだのはジラさまの方だろ? ジル。ジラさまは、あの方なりの好みで、お前の考え方が気に入らないという理由で、教誨を為したいと言った。なら、お前なりの好みで、ジラさまの考えを変えさせようとしたところで、文句を言われる筋合いじゃない。そうだろ?」


「あっ………! そうだよなっ!? 先に文句つけてきたのあっちのほーなんだから、こっちが文句つけたっていーんだよなっ!?」


「いや………宗派の首座の宗教的苦悩と、子供の駄々を一緒にするのは、さすがに無茶がすぎないか?」


「宗教的苦悩も、子供の駄々も、一人の個人の中にとどまる範囲なら、本人にとっての価値は同じだと俺は思うけどな。まぁジラさまの悩みはもう出力されてるというか、何人もの人間に共有されて、肯定されちゃってるけど………だからこそ、というか」


「へ? ど、どういう意味だよ」


「イシュニの首長のようなものだからなのか、イキシュテアフ信仰がそういう形になってるからなのか、ジラさまって基本、なんでもかんでも肯定されちゃう傾向があるみたいだからさ。真正面からちゃんと、ジラさまの考えに否を突きつけてくる相手と想いをぶつけ合うのは、ジラさまとしても気持ちいいだろうって話」


「き、キモチいいって、お前な。それあんな年の子供に言っていいことかぁ? まぁお前の年からすりゃあんま離れてねぇんだろうけどよ………」


「そういうことしか言えないんだったら、この国では口を閉じていた方が賢明だぞ、カティ………つまり、ジラさまが求めていた、神学論争的な会話になる、と思ってるのか、お前は? ジルがそんな話をすることができると、本気で?」


「まぁ、普通にやったら無理だろうけどな。………ジル、話をしようと思うんだったら、ちゃんと相手に伝わるように話さなけりゃ駄目なのはわかるよな。ジラさまが聞く価値がある、と思えるように話さなけりゃ、それこそジラさまには子供の駄々としか思ってもらえないぞ?」


 一人嬉しげに盛り上がっていたジルディンにそう釘をさすと、ジルディンはわたわたと慌てて自分たちの顔を見比べる。


「き、きくかちがあるって、どんな話し方だよ!? 知らねーよ俺そんな話し方っ、どーすりゃいーわけ!?」


「それが知りたいなら、やらなきゃならないことは決まってるだろ?」


 う、と数瞬言葉に詰まって固まったものの、ジルディンは思いのほかあっさりと、仲間たち一人一人に向けて頭を下げてきた。


「みんな………俺が、あの女に………ジラに、どう話せばちゃんと言うこと聞かせられるか、教えて、ください」


「ふぅん………お前、よほどジラさまに思うところがあるんだな。お前がわざわざ自分から頭を下げて教えを乞うところなんて、初めて見た気がするぞ」


「しょーがねーだろっ、俺ほんっとにどーいう話し方すりゃいーか全然わっかんないんだから! 助けてもらうためだったら頭ぐらいいっくらでも下げるよっ」


「や、つぅかよ、お前が頭下げることなんて屁とも思ってねぇってのは知ってるけどよ、自分からってのも初めてだし誰かのためにってぇのも初めてだから、だいぶ驚いたっつぅかよ………まぁいいや、お子ちゃま同士の話だし、好きにしやがれや。えぇっと、っつっても俺も神さまの世界に足つっこんでる人間相手の話し方なんて知らねぇぞ? どうすんだ」


「っつか、神さまの世界に足つっこんでるっつーんだったら、ジル本人が一番話し方わかるんじゃねぇの? 神官なんだし。あ、神さまたちに何度も会ってるロワの方が近いってことになんのか?」


「理屈でいうなら、いくら加護を与えられているとはいえ、あくまで人間の世界にしか生きていない聖女さまと話をするのなら、神官の理屈の方が似つかわしい、という話にはなるんだろうが………ジルの場合、それが当てはまる気は微塵もしないな」


「だーもうっ、そーいうのはいーんだよっ! 役に立つ話してくれよ役に立つ話っ!」


「そういう態度を取られれば、役に立つ話の持ち合わせがある人間でも話したくなくなるのが普通だと思うが」


「あっ………お、お願いしますっ! 役に立つ話してくださいっ!」


「………まぁ、お前じゃその程度が限界か。そうだな、ジル本人の話し方では、たとえ万一ジルが聞く価値のある話ができたとしても、聖女さまがそう受け取れるとはとても思えないしな………」


「ジルの取り柄を活かして、なんかうまいことごまかすしかねぇんじゃねぇの? まぁジルに取り得があるかっつわれるとわかんねぇけどよ」


「ジルの取り柄っつったら魔法制御だろ。英雄の人らにも天才って間違いなく認めてもらったんだからな」


「や、そういう戦いに役に立つ才能とかじゃなく………いや、むしろそれしかねぇか? 日常生活でジルの取り柄って、どんだけ考えても思いつく気しねぇもんな」


「そうだな、方向性としてはその考え方でいいと思う。ジルの魔力制御の才能を活かした一点突破しかやりようはない。まぁそれを会話と言っていいのか、という気は激しくするが」


「………それなら、こういうやり方はどうかな………」


 ロワが説明した手法に、ジルディンは目を輝かせて、「それならできるっ!」と断言してみせた。普通の人間ならばそんな神業としか言いようのないやり方と、普通に真面目に謙虚に礼儀正しく話をする、というやり方などを、難易度で比較するなどそれこそおかしな話でしかなかっただろうが、ジルディン相手にそんなことを言ってもいまさらの話にしかならない。


「ま、ジルができるっつぅんならそれでいいけどよ。それって、ロワもつきあって徹夜する羽目になんねぇか? いいのかよ」


「まぁ………自分から言い出したことだし」


「………しかたない。僕も手伝ってやるとするか。そんな超絶級としか言いようのない難易度の儀式を行うのに、補助役もなしで、なぞどうかしてるとしかいいようがないぞ、お前ら」


「しょうがねぇなぁ、俺らも手伝ってやっかぁ。ヒュノ、お前もつきあえよ」


「は? 俺が術法の儀式のなにを手伝うってんだ?」


「練生術で他の連中の身魂の巡りをよくして、魔力の自然回復速度を早めんだよ。交代でやりゃあそこまで負担でもねぇだろ」


「………ま、そんくらいならいっか。交代でなら睡眠時間はきっちり取れそうだしな」


「というかカティ、せっかくだからゾヌで魔術儀式を行った時のように、生きた蓄魔石になるのはどうだ? 今回は儀式の純度を高める必要がないから、この上なく便利に使えると思うんだが」


「おい………おま、調子に乗って俺から魔力引き出しすぎてお陀仏、なんてヘマこきやがったらあの世から蘇って殺してやっかんな!?」


「いまさらんなヘマしねーって! 単にちょっと足らない魔力もらうだけだしっ!」


 そんな風にわいわい喚いている間に、卓の上には次々に料理が運ばれてくる。さすがに今日はガレットだけでなく、他の料理もあれこれと頼んでいたが、それでも足りないかもしれないと何人もの人間が追加を頼む。


 今夜は、なかなかに疲れる夜になるのだろうから。十二分に栄養を取っておかなければ、真面目に倒れかねない。


 ………それが嫌なわけではないのだが。今夜は徹夜がほぼ確定である以上、あの女神さまと話すこともできないだろうことは、さすがに少しばかり残念な気分、ではあった。

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