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人次元では最推しです  作者: 聿八路彰
第九章 聖国の灰聖女
119/213

9ー1 白の神殿

「ようこそ、イシューニェンタの首都、イシュニゥアンテへ……って、あんた大丈夫か? 今にも死にそうな顔色してるけど」


「ヒッ………ハッ………ヒッ………ハッ………は、い。だいっ……ヒッ、ハッ、ヒッ……じょうぶっ、ヒッ、ハッ、ヒィーッ、ハッ……ですっ………」


「いや全然大丈夫な感じじゃないんだが……」


「あー……ま、気にしなくていいっすよ。死ぬようなことはないし、もし倒れたら俺がちゃんと運ぶし」


「いや、倒れる可能性があるって時点で相当まずい体調の気がするんだが……なんなら詰所で少し休んでいくか?」


「ご親切にありがとうございます。お気持ちは嬉しいんですが、本人が先に宿までたどり着きたいと言っているもので……」


「……そうなのか?」


 真っ向から訊ねられて、ロワは(カティフによりかかった状態のまま)こくこくとうなずきを返す。正直死にそうに疲れているのも確かなのだが、それはここ数日間ではいつものことだし、肩を借りながら歩かせてもらっているので、この街の中までくらいならなんとか体力がもつ。それなら思う存分休める宿屋で休ませてもらった方が楽だろう。


「まぁ、そうまで言うならこちらとしても引き下がるほかないが……無理はするなよ? もう歩けないとなったらすぐに休ませてもらうんだぞ? この街の人間には、疲れ果てた人間を打ち捨てておくような根性曲がりはいないからな?」


「ヒィーッ、ハッ、ヒィーッ……あ、りがとう……ヒィーッ……ござ、います……ヒッ、ハーッ……」


「いや、無理して話さなくていいから……」


「なんかさー、この国……イシュニに入ってしばらく経つけどさ、この国の人らって、なんかやたら親切だよな? どの人にも、すげー優しくしてもらってる気がすんだけど」


 首を傾げながら言うジルディンに、イシュニゥアンテの門衛兵は誇らしげに笑ってみせる。


「そりゃまぁ、イシュニはイキシュテアフさまのお膝元だからな。大陸中の神官や司祭の規範となる人たちが治めている国なんだ、そりゃ神殿とはまるで関係ない仕事をしてる奴らでも、それなりに行いを慎むさ」


「ふーん……」


 門衛兵の言葉に、ジルディンはさして興味がなさそうな顔で肩をすくめた。




   *   *   *




 イシューニェンタ。ビュセジラゥリオーユから街道を北進した先にある、それなりの面積と人口を有する中規模国家だ。


 超巨大都市国家であるゾシュキーヌレフとも、それと同程度の面積しか有しない小国であるビュセジラゥリオーユとも異なり、国家と呼んで恥ずかしくないだけの規模の国土があり、村落があり、農地がある。それなりに食料を自給することはできているらしい。


 といっても、ゾシュキーヌレフから食料を輸入していない、というわけではない。この国で栽培されている作物は、北部の山地を開墾した畑などでの、ソバや芋などの救荒作物の方が多いからだ。それらの食物はもちろん国民の食料にもなるが、近隣の貧しい国々へのほどこしのひとつとして使われることも多い。


 なにせ、この国の護国神はイキシュテアフ。信仰と神事の神。大陸中の神殿が『規範とすべし』と(一応は)定めた、『信仰の正しい形』を示し続ける、神事諸式の典範を有する神なのだから。


「ま、別にこの国の神官の方がえらいとか、そーいうんじゃねーんだけどさー。この国の神官連中が、ややこしー神事やら、きっちり正式な神事やらをしなくちゃなんない時とかに、毎回呼ばれてくるっつーのも確かなんだよな」


 宿を取り、ベッドに倒れ込んだロワの隣で、ジルディンがそう説明する。曲がりなりにもゾシュキーヌレフで神官の修行をしたジルディンは、この国の神官たちとそれなりに関わりを持つこともあったらしい。


「まぁ、それがイキシュテアフ神官というか、この国の神官の仕事だからな。もろもろの神事の正しいやり方を伝え続け、他国の神殿で正式な神事を行う時に指導役・取り仕切り役として赴き指示を出す。知識を伝達する伝正術による、膨大な神事祭事の伝統知識がこの国の神官の売りだ。ゾヌからは馬車でもさして時間がかかるわけじゃないからよく呼び出されるだろうし、遠方の国でも重大な神事の際にはイキシュテアフ神官が来るまで神事を延期する、なんてことまであるくらいだそうだぞ」


「っつかさ、俺いまいちよくわかんねーんだけど。そーいうのって、別にこの国の神官じゃなくてもいいんじゃねぇの? だって、知識なんだろ? なにをどうすればいいか、ってやり方を伝えりゃすむ話なんだろ? それならあらかじめそういうのを伝えといてもらったら、わざわざ来てもらう必要とかなくなんじゃねぇの?」


「そうだな。僕もそれは疑問だった。どうなんだ、ジル。そこらへんは」


「や、俺だって別にくわしく知ってるってわけじゃねーけどさー……イシュニの神官の奴らが、特別扱いされてたってのはホントだぜ。たちいふるまい、っつーの? そーいうのも、イシュニの神官連中の真似するよーに、ってイシュニの神官が来るたびに言われたもん」


「ああ、なるほど……そういう、口で言っただけじゃ伝わらない、神職としての細かい振る舞いなんかについても、イシュニの神官は見本になるわけか。礼法というのは、言葉で伝えただけでは、どうしたって完全には伝わらないからな。実際に美しい所作をやってみせなければ、ぴんとこない人間は多いだろうし」


「そーそー、なんかそんな感じのこと言ってた。イシュニの神官は、そーいうことの厳しい修行してるから、遠慮なく真似しろ、って。大陸中の神官が『そういうことについては見本にしろ』って決めてるんだから、って」


「ふーん……」


 いまひとつぴんときていない顔のヒュノの横で、仏頂面のカティフが唸るように口を挟んでくる。


「んなことよりも。ロワの体調の回復に、二日はかかるって本気なのかよ。本気で二日はこの街から動けねぇ、ってのか?」


「説明しただろ? そもそも最初からこの街で二日休むのは織り込み済みだって。移動中に厳しい修練を課して、その疲労を大きな町で休んで癒す。そういう流れでやっていこうっていうのは、ヒュノも納得してるぞ」


「ま、それが一番効率がいいってネテに言われたからな」


「俺が体力やらなんやらを、術式でロワに渡してもダメなのか?」


「そういうのも考えに入れた上で計算して、この時間を出したんだよ。ロワの心身に負担をかけることなく、健康を損なうことなく、元気に旅を続けるにはこの時間が最適だろう、ってな」


「ぐぬぬ……」


 カティフがまたも唸り声を上げる。一刻も早く童貞を捨てたいカティフとしては、大陸中の神職が『規範とすべし』と定めるような、清く正しい街で時間を食うのはいやなのだろう。


 だが、正直ロワとしては、少しくらい休ませてくれないともたないというのが本音だった。ビュシクタリェーシュを出発してからというもの、ロワはヒュノに(ロワの基準では)徹底的に鍛え上げられてきた。移動中ずっと全力疾走を課されるのみならず、移動中に襲いかかってこられたり、小休憩の時には絶えず稽古をつけられたり、就寝前には必ず一度は死ぬぎりぎりまで追い込まれた上で、どう行動するかという判断力を試されたり、などなどと。


 体力がもたず倒れ込んだ時には運んでもらえる、というか体力が減ってくれば基本仲間たち(主にカティフ)から術式で体力を分け与えてもらえるおかげで体力的には死ぬほどにはつらくはないのだが、四六時中剣の達人に圧力をかけられっぱなし、というのは精神的につらいというか、心魂の勢力をがりがり削いでいくのだ。


 なので、心身を賦活する時間を与えるべきだというネーツェの判断は、ロワとしてはありがたい限りだった。


「ま、術法使いとしての鍛錬についちゃ、移動しねぇ時の方がやりやすいらしいしな。気の押し合いなんかもそうだし。静と動を交互にやるってのは、鍛錬の基本だしな」


「言ってることは正しいとは思うが、休息の時間もちゃんと与えてやれよ? お前のように、向上心だけを原動力にいついつまでも鍛錬を続けられる、という奴はごくごく少数なんだからな?」


「っつかさー、せっかくでかい街に来たんだから、俺らもちょっとくらいは休みたいし! たいして観るもんなさそーな街ではあっけどさ、せっかく通るんだから街の見物くらいはしてーじゃん!」


「お前……その言い草は神官の端くれとしてどうなんだ? 曲がりなりにも大陸中の神職が規範とする神官たちの街だというのに……」


「知らねーよそんなん! 俺別に神官として立派になってやろーとか考えてねーし! けどどーいう街なのかとかはフツーに気になるしさ、飯食ったら街ん中うろうろしてみよーぜ! 一人で街うろついたってつまんねーし!」


 正直かつ身も蓋もないジルディンの言葉に苦笑して、ネーツェは仲間たちを見回す。


「まぁ……ちょっと街の見物をしてみたいのは僕も同じだしな。食事をしたら、街に見物に出てみるか?」


「や、俺らはいいけどよ、ロワはどうすんだよ。ここまで疲れてんのにおんぶだのなんだのして引っ張ってくのか? それこそ疲れが取れねぇなんてもんじゃねぇだろ」


「そこらへんは俺にまかせろって! 飛翔術使えば、身体は寝っ転がってるのと同じ感じのまんま、他の人からは歩いてるように見える感じで、街中を引っ張ってくことぐらいできっからさ!」


「へー、便利だな。そんなことできんのか。ロワとしちゃどうなんだ、それでいいのか?」


「………、寝転がった、ままで、いい、んなら………」


 ようやく落ち着いてきた呼吸を意識してさらにゆるめながら、ぼそぼそと答える。もちろん心底疲れているし、体力が回復するまでずっと宿屋で寝ていたい気持ちも間違いなくあるのだが、せっかく新しい街に来たのだから軽くでもどんな街か見て回りたい、というのも本音なのだ。


 特にイシューニェンタは、大陸中の神職が『規範とすべし』と定めた、信仰の正しい形を伝え続ける国。そこの首都ともなれば、神と人の関わりのあるべき形のひとつくらいは見せてくれるだろう。神々と関わることになった人間として、参考にできるものがあるなら知っておきたい、という気持ちもあった。


「っし! んじゃ飯食ったら街ん中うろうろしてみるってことで!」


「いや、さすがに無目的にうろうろするのは時間の無駄すぎるだろう。せめて最低限の目的地ぐらい決めておきたい」


「えー、めんどくっさくね? まーネテはそーいう奴だからいーけどさー。で、どこにすんの? なんか当てとかあんの?」


「そうだな……この宿は街の出入り口近くにあるわけだし。普通に白の神殿を目指せばいいんじゃないか」


「なにそれ?」


「……なんでお前が知らないんだ、まぁいつものことだが。白の神殿はイシューニェンタ国府の中枢部、他国で言うなら議事堂とか、その類の場所になる。イシュニは〝聖国〟だからな、最高権力者以下、行政権だろうが立法権だろうが司法権だろうが、権力の持ち主はすべて聖職者で占められてるんだ、中枢部が神殿になるのはごく当たり前の話だろう」


「あーそっか、イシュニってそーいうとこだっけ。ただの神さまに加護を与えられた国じゃなかったんだよな、思い出した思い出した」


「嘘つけや」




   *   *   *




 そこそこ人通りのある目抜き通りを、買い食いをしながらのんびりと歩く。といっても、ロワは本当に身体から力を抜いて寝転がっているのと同じような感覚で、身体を支える力から移動する力まで、すべてジルディンの飛翔術に頼っている状態だったが。


「……あのさ。さすがにここまで楽をさせてもらうと、少し申し訳ないというか……そろそろ体力も回復してきたし、自力で身体くらいは支えられるんだけど……?」


「いーよ、めんどくさい。一回飛翔術で飛ばしちゃったんだから、他の力加わったらそっちのが感覚変わってやりづれーもん」


「や、やりづらいって……」


「ロワ、お前も知ってるだろう、こいつの頭のおかしい魔力制御能力は。飛翔術ももう、人一人を飛ばす程度なら自然回復する魔力だけでまかなえるくらいの腕前になってるんだ、甘えておけ。この街に二日間滞在するのは、お前の心身の活力を賦活するためなんだからな、文句があるなら完全に復調してから言うことだ」


「う、ううう……」


「っつかさー、この街の屋台で売ってるもんって、なんかソバ使ったもんばっかだな。ガレットとか、ファルスとか。麺はあんま見ねぇけど」


 ガレットをもぐもぐと呑み下しながらヒュノが言うと、ネーツェもガレットの端をかじってから肩をすくめる。


「まぁ、麺のソバは香りが命だからな。この国でソバを栽培しているのは、救荒作物……飢饉に強い、やせた土地でも育つ、悪天候に強い、栽培期間も少なくてすむ上に栄養価の高い作物だから、というのが大きいんだろうし。高級料理のひとつとして扱われることもある麺のソバは馴染まないんだろう」


「まぁなぁ、この国の人ら、本気でこっちの腰が引けるぐらい熱心にほどこしくれるし。飢饉の時にもしっかり食うもの渡してくれるってのは死ぬほどありがたかった、っつぅのは確かなんだけどよ」


 買い食いしたものをすべてあっという間に食べ終えてから、しみじみとそううなずいたカティフの言葉に、ソバ饅頭にとりかかったヒュノは少し驚いたようだった。


「へぇ、わざわざフィカまでほどこししに行くのか? この国からだとけっこう離れてねぇ?」


「だから言っただろ、こっちの腰が引けるくらいにほどこしに熱心なんだよ、この国の人らは。まぁフィカが崩壊しちまったら、その後ろにゃまともに防壁になるような国ねぇし、フィカで押しとどめた方がいいに決まってんだけどよ。だからってさして金持ちでもねぇ国だってのに、身銭を切って前線の支援をする、なんて国は普通ねぇよ。俺があちらこちらをうろついてる時だって、イシュニ以外にゃあ聞いたこともねぇ」


「まぁ、身銭を切るといっても、飢えた国に渡すために育てた救荒作物の配給だけどな。それでも、この国の神殿が度外れた救世欲というか、『いいことをしよう』という意欲と、実際にやってのける行動力を持ち合わせてるのは確かだろう。大陸中の神職が規範とすべしと定めたのは、決してゆえないことじゃないってわけさ」


「ふーん……けど、俺、そーいう風に人を助けまくろうって考えてる人らって、あんま神職らしいって気しねぇけどな? 神職っつぅと、もっとこう……なんかややこしいこと考えながら自分も他人も鍛えまくって神さまの役に立とう、って考えてるみてーな印象あんだけど」


「ほほう、お前はそういう意見なわけか。そこのところはどうだ、曲がりなりにも神官」


「えー……そーだなー……まーそこらへんは、神さまによるっぽいぜ。神職っつーのは、要するに神さまと人の仲立ちする仕事なわけだから。邪神の神官だったら悪いことしまくるのが仕事だし、戦いの神さまの神官だったら戦の手伝いしたり、平和の神さまの神官だったら戦をやめるように説得したり」


「ふーん? 神さまによって全然違うことするわけか」


「まー今のは極端っつーか、戦争の手伝いさせるような尖った戦の神さま、今のフェド大陸にはいねーらしいけど。それに、邪神じゃない神さまだったら、『いいことするにこしたことはない』っつー意識はフツーあるからさ。弱い奴を助けたり、護ったり、頑張ってる奴の手伝いしたり、みたいなことはフツーの神さまの神官だったら褒められるよ。イキシュテアフさまの神官は、そーいう『だいたいの神さまが『いいことだ』と思ってること』を、がんばって全力でやるっつーのが仕事らしいぜ」


「ふーん……」


「ま、ヒュノの場合、一番身近にいる神官がジルだからな。ジルの神官らしくなさを差し引いても、そもそもゾシュキアの教えは自由、自主、自立だ。優しさや慈愛でなく、万人が自分で自分の面倒を看ることで社会が回ることをよしとする教義だからな。孤児のような、自分の面倒など看ようがない存在に対するものをのぞけば、慈善活動には縁がない人たちばかりだから、違和感を感じるんじゃないか?」


「へー……なるほどなー」


「……あ! なーなー、あれ? 白い神殿って! なんか、ホントにやったら真っ白い神殿なんだけど!」


「ん? ……ああ、そうだな、あれのはずだ。というか、ジル、お前よくここから見えたな。僕のように感覚強化術式を常時発動させてるわけでもないのに」


「へへーん、ここんとこ弓の練習で、遠くのもんよく見るようにしてっからなー!」


「……なんか、ホンットにでっかいな。ゾヌでもあそこまででかい神殿、あんまりなかったんじゃねぇか?」


「まぁ、曲がりなりにも一国の中枢部だからな、威信をかけて大きな建物を造るだろうさ。それに大陸中の聖職者の規範となるべき人々の最高位の方々が務める神殿でもあるんだしな。しょぼい神殿だと思われるようなことがあれば面子がつぶれる、と考えるのはごく当たり前の話だろう」


「ふーん、なんかえっらそーだなー。そーいうえっらそーなこと考える相手尊敬したい奴とか、フツーいねーと思うんだけど」


「……まぁ、そういう考え方もあるのは事実だが。金があるのに形だけ清貧を貫くというのも、普通に考えてひんしゅくを買わないか?」


「え、この国の人ら金あんの?」


「もちろんゾヌほどじゃないが、大陸全土の神事諸式をつかさどる国だからな。金持ちの国の神殿は、指導料とか顧問料とかでそれなりに金を積むだろうし……なにより、『善行を為す聖職者たちの国』としての権威はたっぷりと有している国なんだ。いくら金を積んでもいいから箔をつけたい、権威の後ろ盾がほしい、なんてことを考えている人たちは、いつの世もそれなりの数がいるものだろう」


「へー、そういうもんなのか」


「あと、税金対策でどこでもいいから寄付金を払いたいっていう連中もな。ゾヌから近いから金融市場における面倒事も少ないし、善行を為す聖国として名が売れているというのは、そういう時にも有利に働く」


「うっわー、ネテよくそんなことまで知ってんな。そんなに金のこと考えんの好きなの? めんどっちくねぇ?」


「お前のようにとりあえず今楽ができればそれでいい、なんて考えるような奴がパーティの中にいるから、否が応でも僕がそういうことを考えないわけにはいかなくなるんだろうがっ! ゾヌの冒険者ギルドの人たちが持ちかける金融関係の話を一手に引き受けてるんだぞ、嫌でも少しは詳しくなる!」


 そんな風に、いつものように無駄話をしながらだらだらと歩いているうちに、ロワの目にもその『白い神殿』というのが見えるようになってきた。呼び名に恥じない壮麗な建築、というか昼に見ると光の反射が眩しいほどのくっきりとした純白の石の連なりは、白亜の神域とか白妙の至聖所とか、そういう仰々しい名前の方が似つかわしいのでは、と思うほどの迫力がある。


 エベクレナに対する感謝や尊敬の念とは違う、『信仰』の殿堂。そういう代物にもともとあまりなじみのないロワは、なんとなく、ざわりと神経がざらつくのを感じた。

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