最終話 真意のその向こうへ......
どこかの族に攫われた太晴を助けるため、和馬とフェイル族のアジトに行った。
フェイルの魔法を使って何とか族を倒した二人と一匹は各々の家に帰ったのであった。
今はLv.5でステータスは【ちから:10 かしこさ:7 MP:10】だ。
翌日、学校についた俺は驚いた。
なんと今まで話したことのない男子やら女子やらが俺のことを取り囲み、「すごい」などの声を上げ始めたのだ。少し遠くにいる太晴に事情を聞いた。どうやら太晴が、俺が来る前にみんなに、俺がヤンキーから太晴を救ったことを言ったようだ。余計なことをしたものだ。俺は言われた質問とかに対して返事を返していった。すると、
「お前、なかなか面白いやつだな。友達になろうぜ」
と、取り囲んできた奴の中の数人が言ってきた。
何を変なことを言ってるんだ。と思っているとホームルームが始まった。やっと逃げられた。
「友達になろう」なんてそんな軽い言葉では友達にはなれない。それが常識だろ? 少なくとも俺はそう思う。太晴と過ごしてきたから少しは分かるが、本当の友達とは一つのきっかけからそのうち勝手になっていくものだ。それに俺は気づくことができた。
本当に太晴には感謝だな。
放課になり、俺は校門をくぐろうとした。
その時、朝「友達になろう」と言ってきたやつの集団が俺に話しかけてきた。
「これからゲーセン行くんだ。お前も来いよ」
一瞬カツアゲされたのかと思ったが、表情を見てもその心配はなさそうだ。
「なぜ顔を見ただけで分かるんだ」と思うかもしれないが陰キャの経験から培われた俺の勘はこういうことには敏感なんだ。
とりあえず、ゲーセンに行ったことは俺はもちろんない。フェイルのレベルアップへの経験を積むためにもにも誘いにのることにし、俺はそいつらについて行った。
結局カツアゲやその他、いじめまがいの事は何もされなかった。フェイルのレベルアップも結論、しなかったが、俺の人としてのレベルアップはできた。意外にも楽しかった。
人とワイワイしながら何かする、というのは社会の闇、裏側の構造を考えることを忘れてしまうのだ。
いや、“忘れることができる” のだ。
「なあフェイル。人と関わることって大事なのか?」
「まあ大事ね。後から得となって帰ってくることは多いわよ」
「そうなのか......」
「でもねカズカズ、」
ん? いきなりフェイルの目つきが変わった気がした。真剣そうな目に見える。こんなフェイルは見たことがない。
フェイルは話を続けた
「人と関わるのには途方もないエネルギーが必要なの。しかも関わっていくと悩みや不安が増えて押しつぶされそうになる。だから、人と関わっていくか関わらないかは人それぞれだわ。どちらにも均等にメリットとデメリットがあるの。どちらを選ぶにしろ正解も不正解もない。あと、もし人と関わる方を選ぶのなら、人に合わせ続けると『自分を壊して、全てを失ってしまうこともある』ということを知った上での付き合いをすることよ。今まで私が強引にでも『友達』というものを作らせようとしたのはそれらを知ってもらうため」
「......」
あまりにもフェイルらしくない真面目で長い、でもしっかりとした言葉を聞かされた俺は驚いていた。さも俺の母さんにでもなったような口ぶりだ。
「ありがとな。なんか色々分かった気がする」
「一応私はあなたの手伝いをする妖精よ。馬鹿にしないでもらえる?」
別に馬鹿にはしてないのだが、フェイルにとったら常識のような話だったようだ。それから俺は徐々に学校でいわゆる『友達』と呼ばれる関係を構築する努力をしていった。二次元の嫁と培ってきたコミュ力(?)のおかげか、意外にも早く関係を作っていくことができた。
【しかし和馬は友達を作っていくにつれ、段々と自己中心的な考えが芽生え、育っていき、いわゆる『うざいやつ』と化していった。
「和馬くん、最近話しかけてくれないな……僕のこと嫌いになっちゃったのかな」
そう木沙良は考えていると教室の端で友達と話している和馬の声が聞こえてきた。
「木沙良ってやつ知ってる?アイツ、めっちゃヲタクでマジきもいんだぜ」
そう、和馬は木沙良の悪口を言っていたのだ。それから木沙良は和馬と話すことはなかった。そして和馬もその性格から友達はいなくなっていき、初めと同じ、『ボッチ』となっていったのである……】
〜10年後〜
「おいフェイル! ご飯まだかよ!」
「ごめん今作ってる」
「『ごめん』じゃなくて『すみません』だろ? 俺とお前は別に友達でもなければ家族でもないんだぞ! お前は俺の妖精だ」
【10年経つとフェイルもレベルアップしていき大抵のことはプロレベルにまでできるようになった。しかしフェイルに任せきりな和馬はどんどん落ちぶれていきフェイルがいないと生きていけない生活になっていた】
次の日の朝になり窓の外には雲一つない晴天。自分以外が発する音は何も聞こえない、そんな静かな朝に和馬は目覚めた。
「おいフェイル! 朝ご飯!」
「……」
「フェイル! 聞いてんのか!? おいフェイル!」
何度呼んでも返事をくれない。そう思って、俺は必死に家中を探した。が、どこにもフェイルの姿はない。俺は一人家の中で泣き崩れた。
「日本には勝者と敗者が存在している」
「でも、俺は高校生のとき友達がたくさんできて一時的に社会の勝者になれた気がした。あれは紛れもなく、フェイルが能力を俺に与えてくれたからだ」
「能力によって人に好かれたり好かれなかったりする。ないしは何をやってもダメだと目を向けられることすらされなくなることもある。生まれてきたときにその後の人生が決めつけられるなんてそんなの面白くもないしただ死ぬために生を受けたようなもんだ」
「もし『神は二物を与えない』のなら社会の勝者なんて存在しない。だがもしその言葉が嘘で、神が公平に能力を与えないのならば……」
俺はこんな世界で生きたいとは思わないだろうな
ー完ー
まず感想を述べる前に、ここまで読んでいただきありがとうございました。
一話を投稿した頃に想像していたより、とても多くの人が読んでくれて正直驚いてます。
さて、和馬くんは結局落ちぶれてしまい、太晴くんもハッピーとは言えないエンドを迎えてしまいました。作者自身は正直、あまりハッピーエンドが好きではないんです。
でも、本当のバッドエンドで終わるのも嫌いで、それもスッキリはしないんです。全員がハッピーだなんてそんなのありえないし、全員がアンハッピーな状況も胸糞悪いじゃないですか。だから、その先の「曖昧さ」を残したまま物語は終わるのが一番素敵な終わり方だと思うんです。
あと、「曖昧」って言葉から思うことがあるんです。それは人の感情についてです。
感情といえば「悲しい」だとか「悔しい」だとか「嬉しい」とかがありますが、そんな気持ちよりも「言語化できない」「自分でもどう思ってるのか分からない」って感情の方が綺麗だし、重宝されるべきだと思うんです。そんな時の方が人間として生きてるって感じがするし、人間が出来る「すごいこと」だと思います。つまり、曖昧な感情こそ本物ではないのかなと思うわけです。(あくまで作者個人の考えであり、何かに向けたような意図はありません)
初めて投稿した作品だったので下手な部分が多かったとは思いますが、読んでいただき本当にありがとうございました。ここまで読んでいただいた皆様に最大の感謝を!