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04:何事もやってみなけりゃわからない。

人生に失敗は付き物である。

「お前はバッティングセンターに行った事はあるか?」


冒頭がこれでは、まるでバッティングセンターで失敗したみたいではないか。


そうなのか?失敗したのか?

否である!


失敗はバッティングセンターで起こったのではない。

その翌日に起きたのである。


その時の話をしよう。


あれは自動車の免許を取りに合宿形式で取りに行った時の話だ。

集中的に授業が受けられて最短で講習が終わる

それが合宿免許の良い所。

当然授業も実技もほぼ毎日行われる。


だが教習所の営業時間はそれほど長くなく

夜は時間を持て余してしまう。

その際に同室の仲間が「バッティングセンターへ行こうぜ」と誘ってくれて

面白そうなので付いていった。


夜のバッティングセンター・・・

飛んできた玉にバットが当たろうが外れようが、バットを振りぬくのはとても楽しかった。

人生初のバッティングセンターであり、とても貴重な経験だったと今でも思っている。


しかし問題は翌朝訪れる。

酷い筋肉痛となって。

今はおっさんだけど、若かりし頃のおっさんは

バイトこそ頑張っていたが、インドア派で滅多に外に出ないタイプだったのだ。

そりゃ当然そうなるってものだ。


全身が筋肉痛、首も当然痛い。

だが合宿免許の日程上、無理に出席せねばならず、

実技において左右確認は目線ではなく首を動かして

確認してることを教官にアピールしなければならない


あの時の事は地獄の教習として、今も心に刻まれている。

「何事もやってみなければわからない」・・・と。


最初から話が逸れているが、何を言いたいかと言うと

「とりあえず魔法陣描いてみるか」ってことだ。


「庭に5m級の魔法陣を描けるスペースがある」

ではなく

「庭に5m級の魔方陣が描ける」

という形で、魔法陣が描けることをさりげなくアピールしたくなったのである。


とは言え、魔法陣と言っても知識があるわけでもなく

なんとなく面白そうだから始める。

それでいいのだ、人生とはそんなものなのだ。


地面というキャンパスは用意された。

では何を手に持って描こうか

適当な木の枝でもあれば良いのだが、

手入れが大変になることが目に見えていたので、庭に木は植えていない。


なら足で?

-作業用の靴と言えども、過度に汚したくはない。


スコップや立鎌で?

-最初だから深く掘る気は無い。


そう、ケガキ程度で足でこすったら消えてしまうくらいで良いと思っている。


ならば・・・アレを使うか

建物の壁際に、銀色に輝くステンレスの物干し竿。

片方が折れているため短くすることが出来ず

弓鋸で切断してから粗大ごみとして処理しようと思っていたモノだ。


手に取り、折れていない部位をトンッと降ろし垂直に立てる。

長さはやや見上げる程だから、2mはあるだろうか。

先端から2/3、折れた場所から若干余裕のある位置で脇に挟み軽く持ち上げる。

反対側の手を乗せ、先端の動きを確かめる。


「これならば」


土のある庭の中心に立ち、自分を中心とした円をステンレスの物干し竿で描く。

数日晴れて乾き始めていた土ではあったが、

物干し竿でこすられた地面に水分を持った黒い土が現れる。

地面に振れた先端の抵抗に、足がふらつきつつも

なんとなくで描いたにしては悪くない円が出来上がる。


基本は円だと思うけれど、その先は何も考えていなかった。

そもそも魔法陣とは何ぞや?

描き始めてから考える事ではないと思っているのだが・・・・・・


少々考えたのち、

今回は魔法陣を描いてみたという実績が作れれば良い

そういう結論に落ち着いた。


それに魔法陣を描く以前にデザインは苦手だし、

丸、四角、多角形を組み合わせた

幾何学模様ここにあり!って感じの認識しかないんだよな。


「じゃぁ、これだっ!」


円に内接するような正三角形を


長すぎる得物では、まだ上手く直線を引けず

自信なさげで、微妙に二等辺三角形となってしまったが

とりあえず今日は手短にこんなところで、良いんじゃないかな。


あ、そうだ

今日の庭作業は終わりだし、コレも消さなきゃ。

割と強力な屋外用の蚊取り線香

今もわずかな煙を放ちつつ、まだ残りは半回転分。

室内で使うには煙の量が多すぎるため、終わり際には燃えている部分を折って捨てている。


今日は折角だし、魔法陣(仮)の中心に蚊取り線香を捧げよう


魔法陣に何か期待するわけじゃないけれど、

今年はあまり蚊に刺されませんように・・・・・・っと。


とても簡単だけど、何か描いたという実績。

魔法陣とは呼べない落書きだとしても

魔法陣と捧げものと、ささやかな願い。


これが私の最初の一歩。

その後、置いた蚊取り線香の残りが心配になって

何度か庭を見に行ったのであった。

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