招き猫は何を思う?
東方虹龍洞のネタバレを含みます。
ある寺に、猫が産まれた。とても可愛らしい猫だった。けれど、その猫は、三毛猫であった。招き猫である彼女は三毛猫。本来の招き猫は白い猫であった。三毛猫である彼女は、他の招き猫に虐められていた。それでも彼女は生き抜いた。三毛猫である招き猫は、何を思う?
「うわ、ミケだ」
「客とお金を同時に招くことが招き猫の仕事だってのに」
私は、他の招き猫達とは違う。三毛猫だからって、こんな風に誰も近づいてはくれぬ。誰も。
「忌々しい三毛猫め.......そうだ、白に染めてやる」
「や、やめて!やめてください!」
三毛猫だから、三毛猫に産まれてきたから、白に染められそうになったり、招き猫の修行もさせてくれない。
なんで、三毛猫に産まれてきたんだろうと、そう考えない日はなかった。
「誰もお前なんかを店に置きやしない」
客かお金、どちらかしか私は招くことができなかった。
自分を好きでいてくれる人なんかいなかった。誰一人。
「三毛猫だ」
「あっち行こう」
三毛猫だから何が悪いの?私だって三毛猫になりたくて産まれてきた訳じゃない。現実はどうすることもできなかった。
ある日のことだ。
寺に河童が来て、私を見つけて言った。
「お前さん、こんな所にいて、生きづらくないのかい?」
「...そう、だけど」
「三毛猫だからって、こんな独りぼっちにされて。寂しいんだろ?誰も必要としてくれてないんだろ?」
河童は私の姿を見回してそう言った。そして、私の顔を見て、こう言った。
「山においでよ!」
私は朝、手紙を書いていた。置き手紙を。
そして、誰にも気づかれないよう、そっと寺を出た。日の出が出てきていて、眩しい。清々しい朝。ゆっくりと深呼吸をする。三毛猫で何が悪い。私は私だ。もう、何も怖くない。
ゆっくりと1歩を踏み出す。向かう先は決まってる。自由な世界。狭い箱じゃなく、広い広い場所へ。
豪徳寺ミケ。私は、自分が好きだ。