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5話

翌日、いきなり月さんはアクションを起こした。

「お邪魔します。おばさん、本日は”お泊り”の許しを与えてくださりありがとうございます」

「いいのよ光ちゃんのお友達なら、ゆっくりしていってね」


事の発端は、昨夜僕と月さんのメールのやり取りに遡る。

「早速だが、明日お前の家に泊まりにいってもいいか?」

「え、どういうことですか!?」

「たしか光の部屋って一人で寝るのが精一杯だろ?だから、アタシがあいつの部屋で寝て、お前と光が同じベッドで寝るんだ」

「えぇ!?急にそんなところまでもっていくんですか!?」

「あいつは鈍感だから、このくらいしないとだめなんだ。さすがにこれなら嫌でもお前を意識するだろ」

「と、とにかくお姉ちゃんにも聞いてみてください。僕は、月さんが泊まること自体はオッケーなんで」

「わかった、親御さんにも聞いててくれよな」


そして事がスムーズに運んで、現在の状況である。

「それにしても、月ちゃんどうしたの急に」

「それは前にも言ったろ、一人暮らしは退屈だからだよ。これからもたまにこうして泊まりに来ると思うからよろしくな♪」

裏表のなさそうな笑顔で、月さんはそう言う。

「あぁそれと、お前らの親御さんにはもう話したんだが、アタシが光の部屋で寝て、夜と光が同じ部屋で寝るっていう感じにしてもいいか?」

や、やっぱりすぐ聞いてきたか・・・

「私はいいよ、夜君は?」

ええっ!?こんなにもあっさり乗るの!?僕って男だよね、そこまで魅力ない!?逆にショックなんだけど・・・ でもここで拒否したら、今日月さんに来てもらった意味がないし・・・

「い、いいよ僕も」

「決まりだな! それじゃゲームしようぜ、ゲーム!」

「あの、その前に私からも提案があるんだけど・・・」

「どうしたのお姉ちゃん?」

「せっかく月ちゃんが来てくれたのに一人で寝させるのは可哀想だよ。だからせめて、夜君と月ちゃんが一緒にお風呂に入るってのはどうかな?」

・・・

・・・

・・・

「「・・・はい?」」

僕と月さんは目を点にする。聞き間違いだろうか。

「今日はいつもより人数が多いから、どうしてもお風呂の使用時間が長くなるでしょ?おじさんやおばさんにも迷惑かかりそうだし・・・ それに、私ばかり夜君を占領しちゃうのは良くないよ」

「いや、何言ってるのお姉ちゃん・・・?」

「あぁ、こいつの天然がまた露わに・・・」


前から薄々気づいてはいたが、お姉ちゃんは少しどこかずれているような節がある。こんな感じに、たまに突拍子のないようなことを言ったりするのだ。

「いや待て光、よく考えろ。アタシは大学生、こいつは中学生。いくら同志、じゃなかった、友達といってもそれはまずいとは思わんのか」

「そ、そうだってお姉ちゃん。前にも言ったけど、恥ずかしいよ・・・」

2人で赤面しながら抗議の目を向ける。

「え、それなら2人で寝るのはどうなるのさ」

「こいつ、次は痛いところを突きやがって・・・このド天然が。夜、ちょっと来い」

月さんは僕と二人きりになれる所に呼んだ。

「まずいですって・・・ 今回は諦めましょうよ」

「いやそれもダメだ。ここで妥協したら次も同じだ」

「でも、まさか僕と一緒になんてことは・・・」

「いや、アタシに考えがある。とりあえずここはあいつに乗れ」


そして夕食も済み、お風呂の時間になる。。僕と月さんはそろって洗面所に向かった。

「いいか、今日はアタシもお前も湯舟は我慢だ。交代でシャワーを浴びて出る、片方はここで待つ。下手に互いに気を遣って時間を浪費したら怪しまれるだろ、だから、それでいくぞ」

「でも着替えは・・・」

「そこは互いに目をそらそう!な!?アタシから行くからお前あっち向いてろ!」

「は、はぁい!」

・・・なんて状況だ、本来はもっと喜ぶべき状況のはずなのに、なんか複雑な気分だ。

布どうしが擦れる音がする、意識してはいけない、僕は無になろうとした。


ドアが開く、閉まる、シャワーから水が出てくる、それ以外に音はない。

僕と彼女の間に会話はなかった。ていうか、それどころじゃない。お互い様だ。

もちろん、後ろを向きたくないと言ったら嘘になる。でもそれは月さんへの裏切り行為だ。何故かはわからないが、彼女は僕のためにここまでしてくれている。そんなことをしたら、僕は屑だ。


・・・時の流れが遅く感じた。僕は一体何をしているのだろうと思うが仕方ない。水の流れは、こんなにもゆっくりだっただろうか。

「おい、出たぞ」

いつまでこれが続くのだろうか、精神がおかしくなりそうだ。

「おーい、聞こえてんのか?」

一回外に出るわけにもいかないし、その間に月さんがあがってきたら・・・

「夜!上がったぞ!」

「あ、ええとすみませんっ・・・」

はっと我に帰った。そして、


ー反射的に振り向いた。


互いの目が合う、きょとんとする。先に気づいたのは、今度は僕だった。

「す、すみません!」

とっさに目をそらす。だが、既に僕の視界には、その・・・

「・・・お前も入れ。むこう向いててやるから、さっさとしろ」

月さんは小声でそうつぶやき、他には何も言わなかった。僕は慌てて服を脱ぎ、言われたとおりにした。

やがてすぐ、月さんは服を着終わって出て行ったようだった。


ー水が元の速さで流れる。いや、もっと早くなったかもしれない。

今はとりあえず、体の汚れと、脳内を洗い流さなきゃ。

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