3話
今日から僕の中学生活が始まった。入学式のみだったので、早めに帰ることができた。
とりあえず、お姉ちゃんが帰ってくるまで部屋で待っていよう。そう思いドアを開けると、
・・・見知らぬ女性が寝っ転がっていた
「・・・ん?なんだお前」
その女性は、まさに見るからにギャルといった感じであった。制服を着崩し、爪も加工され、アクセサリーも結構つけていた。
少し怖いが、とりあえず声をかけることとした。
「あの、ここ僕の部屋なんですけど・・・」
「はぁ?ここは光の部屋じゃないのか?」
「あの、あなたはお姉ちゃんの知り合いですか?」
「知り合いも何も、アタシはあいつの幼馴染だっつーの。同じ大学に通っているし、家も近所のアパートに一人暮らしだから寄ってみたんだが・・・ って、あいつのことを『お姉ちゃん』と呼ぶということは、お前が噂の『弟君』か?」
「まぁ、僕は彼女の従弟ですけど・・・ 名前は夜って言います」
「そうかそうかお前か!いやー、あいつが四六時中お前のことをアタシに話すもんだから気になっていたんだ。お前相当可愛がられているようだな? ・・・おっと、紹介が遅れたな。アタシは"月"っていうんだ。よろしくな」
それから、月さんは僕にお姉ちゃんについて色々話してくれた。
「・・・てなかんじで、あいつは昔から大人しい奴でさ、基本的に誰にでも優しくて男女問わず人気があったんだ」
「あの、さっきから気になっていたんですけど、なんで月さんって制服着ているんですか?」
「あぁこれか、アタシはJKの遊び呆けて楽しかった頃が忘れなんなくてさ。今でもいわゆる”なんちゃって制服”を着ているってわけさ。気分は永遠のJKってやつ?」
「よ、よくそんなに遊んでいたのに大学受かりましたね」
「・・・まー、アタシ地頭はいいからさ?楽勝だっての。てかそもそもあいつが寂しいって泣きわめくから、アタシもしょうがねえなって同じ大学にしてやっt、」
「・・・ふぅん?誰が誰に泣きついたって?」
突然、後ろから氷のように冷たい声が聞こえた。僕と月さんがおそるおそる振り向くと、お姉ちゃんが笑顔で立っていた。
「や、や、や、やぁ光」
月さんの声が明らかに震えている。
「勝手に人の家に上がり込んだ挙句夜君に嘘を教え込むなんてどういうことかな、月ちゃん?」
お姉ちゃんはあくまでも笑顔を崩さない。
「あのね、夜君。本当はこの子高校デビューを機にギャルデビューしたら、周りに敬遠されて友達が私しかいなかったんだから。遊び呆けていたとかいうけど、本当は私とたまにゲーセンとか家で遊んでた程度だし、私と同じ大学じゃなきゃ嫌だって言って、必死に勉強を・・・」
「だぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!!!!その話はこいつの前でするなぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!!!!」
月さんは必死に止めにかかる。・・・そんなに見栄をはりたいのだろうか。
「ところで月、私と夜君はこれから2人でゲームをする予定だから用件は後にしてくれないかな?」
「はぁ?アタシは一人暮らしだから帰っても暇なんだよ!いたって良いじゃねぇか」
もう隠す気も失せたのか月さんは開き直った。
「あ、あのよかったらいてもいいですよ」
少し彼女のことを哀れに思ったので、僕は思わずそう口にした。
「まぁ、夜君がそう言うなら・・・」
「マジか!?サンキューな夜!この恩はいつか返す!」
この時の僕は、二人よりも三人の方が楽しそうだろうし、それに、お姉ちゃんとはいつでも二人きりになれるだろうからまぁいいだろうと思い、これ以上は深く考えなかった。
2時間後ー
「だぁっーーー!!!また負けた!」
「ふふっ、もう一回やる?」
「当たり前だ!」
某格闘ゲームをやることにしたのだが、二人とも勝負が白熱し、全然コントーローラーを離さなかった。なんというか、素人レベルの僕が言うのもなんだけど、二人ともレベルが異次元だった・・・
それに加えて熱が冷めないものだから、ますます僕の出る幕はない。お姉ちゃんも僕との約束はどこへやら、完全にそっちのけである。声をかれられる雰囲気でもないし・・・
でも、なんか安心した。互いにとても仲が良さそうで、見ていて微笑ましかった。
さらにもう少し経って、夕食の時間だということで月さんは帰ると僕らに告げた。母さんは一緒に食べていくように言ったものの、ギャルらしくなく丁重に断っていた。
「ごめんね夜君すっかり夢中になっちゃった・・・」
「悪かったな、さっきの礼も含めてきっと返すよ」
「いや、大丈夫ですよ。また是非来てください」
「そうか、んじゃまた行くわ。光、また明日な」
「うん、またね」
空を見上げると、すっかり暗くなっていた。
ー月は夜空で、光満つー
月についての補足
光同様スタイルは良い
髪は茶寄り、ロング
化粧はギャルとはいえ、あまり濃くない