2話
僕の部屋は2階にあるのだが、その2階にある空き部屋にお姉ちゃんは住むことになったらしい。もはやお姉ちゃんに対して下心全開の僕にとっては、少し残念なような、ほっとしたような複雑な気分だった。ま、まぁ部屋に行こうと思えばいつでも行けるし・・・ ていうかその勇気なんてどうせないか。
そして手伝いをしている内に夜になった。母さんがいつもより豪勢な夕飯を並べる。だが、それよりもお姉ちゃんが当たり前のように僕の隣に座るものだから、味なんて分かるはずもない。何か話しかけられた気もするけど、ずっと上の空だったから正直何も覚えていない。本当はとても喜ばしいことなのに、楽しみにもしてたのに、隣に座ってくれたらいいなって思っていたのに、全てが緊張で幻のようだった。これから、これも当たり前になっていくのだと、とにかく自分に言い聞かせた。
だが、こんなことは序章にすぎなかった。この後の出来事に比べたら・・・
「夜君、一緒にお風呂に入らない?」
食後に、気を静める為に飲んでいた僕のお茶が口から飛び出した。当然むせる。
「げほっ、げほっ、え、何!?」
「え、どうしたの夜君大丈夫!?私何かした!?」
こ、この人自分の言っていることが分からないのか・・・?
「ふ、普通姉と弟は一緒に入らないから・・・!」
「よ、夜君は私と入るのは嫌なの・・・?」
い、いやそんな寂しそうな目をしないで・・・
「私と、入りたくないの?」
すげぇ入りたいです。でも入ってしまったら僕の何かが死んでしまいます。
あと、やっぱりそんな勇気はありません。
「ほ、ほらここの風呂ってあまり広くないし、1人の方が快適だって!」
「でも、久しぶりに会えたんだから私夜君ともっと2人で話したい・・・」
「それなら後でゆっくり話そう!ね!?」
ない頭を必死に回転させて、言い訳を絞り出す。それでも、お姉ちゃんはどこか納得いかない表情をしていた。こうなっては仕方ない、ちょっと恥ずかしいけれど必殺の一言だ。
「ぼ、僕だって年頃の男だから恥ずかしいんだって!」
そうはっきりと告げる。すると、さすがのお姉ちゃんも参ったのか
「そ、そうだよね・・・ なかなか会えないからどうしても私の中では、夜君はまだ幼い子にしか見えないの・・・ なら強いちゃうのは酷ってものだよね・・・ で、でもお姉ちゃんともし一緒に入りたくなたらいつでも言っていいからね」
そう言って部屋を出て行った。僕はやっと胸をなでおろす。さすがに色々まずいって・・・
繰り返すけど、僕って中学生男子だよね・・・?
よくよく考えたら、お姉ちゃんの残り湯に入るのも僕の精神衛生上良くないので、全員にことわって先に入らせてもらった。そして、お姉ちゃんとの約束もあったので、僕から部屋に行き話すこととした。
「お、お邪魔します」
「いらっしゃい、適当に布団にでも座ってよ」
お姉ちゃんの部屋は勉強机と布団を敷くスペースだけで精一杯であり、言われるがままに僕は座った。ここで、改めてお姉ちゃんを見ると、まだ少し濡れた艶やかな髪、そして仄かにシャンプーの香りがしてきて、僕の心臓の高鳴りはやはり止められそうにない。
「さっきのご飯の時間、夜君に何を話しかけてもボーっとしてたからひょっとしたら具合悪いのかなって思っていたんだけど、大丈夫?」
「いや大丈夫、ちょっと考え事を、ね」
「無事ならよかった。でさ、さっきの続きなんだけど・・・」
「さっき?」
はて、何かあっただろうか。
「もう、やっぱり聞いてないじゃん。夜君は最近どんなゲームをしてるのかって話だよ。昔、おじいちゃん家でよくゲームして遊んだでしょ?だから、また一緒に遊びたいなって」
「あ、あぁ。スマホのゲームとかが最近は多いかな。後はテレビゲームもたまにやるかな」
「私も何個かインストールしてたなぁ、でもどれもこれも簡単で飽きちゃってさ・・・」
・・・思い出した。お姉ちゃんは超絶ゲームが上手かったんだ。昔も毎回ボコボコにされたなぁ・・・
「ねぇねぇ明日私と色んなゲームであそばない?」
「明日から2人とも学校じゃん・・・」
「あちゃー、そうだった。んじゃ夕方とか」
「それならいいよ」
「やったぁ。んじゃ、約束」
そう言って、僕に小指を差し出してくる。お互いこの年にもなって指切りげんまんなんて・・・
でも、またお姉ちゃんが寂しい顔をしそうだったので乗ることにした。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーますっ♪」
僕の指とお姉ちゃんの指が絡まる。柔らかくて、温かくて・・・ これが握手じゃなくてよかった。
"僕の体温が、ダイレクトに伝わってしまう"
明日から学校なので部屋を出て寝ることにした。でも、どうやらまだまだ眠れなさそうだった。