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夜明けをもたらすは、君

日本の民法734条によると、三親等までの人との結婚が禁止されている。つまり四親等にあたる従兄弟、従姉妹とは結婚ができると言える。

僕がなぜいきなりこんな話をするのかというと、僕の想い人が6歳上の従姉だからだ。彼女とは、元々年に数回しか会えない関係だった。親戚が一堂に会するような正月、お盆・・・ 僕はそのたびに彼女、お姉ちゃんに会うのが楽しみでならなかった。お互い一人っ子で、姉や弟というものに憧れをもっていたのだろう。一緒にテレビゲームをしたり、外で駆けまわったり、色んな遊びをしたものだった。


僕は、その頃からお姉ちゃんのことが大好きだった。でもここでいう「好き」はあくまでも家族間における愛のようなものでしかなかった。でも去年、思春期に片足を突っ込んでいた小学校卒業間近の僕は、お姉ちゃんのことを見ると急に心臓の鼓動が早くなった。いつものように直視したり、まともに話すことができなかった。家に帰ってから、それが恋なのだと自覚した。


元々、僕はそのような感情を抱いたことはない。だから僕は強く動揺した。でも、それは一時の感情にすぎない、そもそも頻繁に会える関係でもないだろうし、見てくれも良いのだからとっくに彼氏がいるにきまってる、もしいなかったとしてもこんな幼い僕なんかが釣り合うはずもない・・・ そう割り切り、この気持ちを忘れようとした。そして、ようやく気持ちが薄れかけてきたときに、思いがけないことが起きるのだった・・・


現在、僕は中学校に入りたての13歳。お姉ちゃんは大学に入りたての19歳。その入った大学というのが、僕の家の近くらしい。その流れで、なんと僕の家で同居することになったというのだ。


・・・え? マジで?



今日はついにお姉ちゃんが来る日。それを聞かされてから数日、僕はもう緊張が止まらなかった。忘れようとしてた人が、嫌でも目に入ってしまう。ごくまれにしか会えない人が、これから毎日家にいる。好きな人が同じ屋根の下にいる。それだけで、僕はもうおかしくなりそうだ。どうしても僕は健全な一人の男子、あわよくば一緒にお風呂に入ったり、添い寝したりできないだろうか、なんて淡い期待も抱いてしまう。もちろん、僕から誘うなんてことはしないし、できないけれども・・・


そんなこんなで、僕はさっきから落ち着きがなく自分の部屋の中を行ったり来たりうろうろしている。やがて、チャイムが鳴った。僕の両親が出迎えたのだろう。でも、僕は行かない。行けない。もう、今までのように見ることができない。でも、ずっとここにこもっているわけにもいかないので、心の準備をしなきゃ。できるだけいつも通りに、違和感のない、普通の表情でいられるように・・・


しかし、そう思ってた矢先、階段を駆け足で昇り近づいてくる足音が聞こえてきた。おそらく母だろう。きっと僕に、下に降りてきて挨拶するように言うつもりだろう。まぁ仕方ない、僕の心中なんて知る由も無いし、ここは合わせる他ない・・・ そして、慌ただしくドアが開く。・・・僕は絶句した。

「久しぶりだね、(よる)君」

あろうことか、お姉ちゃんの方から僕に会いにきた。去年のあの時と同じように、長く綺麗な黒髪、すらっとしたスタイルの良い身体、そして、昔から変わらない優しくおっとりした目・・・ 彼女は間違いなく、僕の従姉、(ひかり)お姉ちゃんだった。

「おじさんやおばさんと一緒に迎えてくれると思ったら、夜君がいなかったからびっくりしたよ。私、君とこれから毎日過ごせるのを楽しみにしてたんだよ?それで我慢できなくて自分から来たんだけど・・・ ねぇ聞こえてる?」

「あ、えっと・・・」

想定していないことだったので、なかなか上手く話せない。なんとか軽い挨拶とかをしようと思っても上手い言葉が出てこない。そんな僕の姿を見たお姉ちゃんは申し訳なさそうにしながら、

「ええと・・・ そう頻繁に会うわけでもない人から色々言われても困っちゃうよね・・・ごめんね? 昔も言った気がするけど、私一人っ子だからさ、夜君が本当の弟だったら良いなって思っていたの。だから夜君にも、私のことを実の姉のように思ってほしくて、ついつい先走っちゃったの・・・ こんなお姉ちゃんでごめんね・・・」

そう言って、分かりやすくしゅんとする。それを見ると僕もさすがに申し訳なくなって、

「い、いや大丈夫だって、僕の方こそてんぱっちゃってなんかごめん」

極力、昔のように振る舞いながら軽い笑顔を見せる。

「そうだ、荷物運ぶの手伝うよ。せっかく今日来たばかりなんだからゆっくりしなよ」

「う、うんありがとう。それじゃあ、お願いしようかな」


そうだ、僕も覚悟を決めなきゃならない。これはきっとチャンスなんだ、いつかきっとお姉ちゃんに気持ちを伝えて、本当の家族になるんだ・・・ 僕は、重い荷物を力いっぱい持ち上げた。


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