表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/84

009 クルト君……噂だと、年上の女にモテるタイプらしいけど

「クルト君……噂だと、年上の女にモテるタイプらしいけど、そんな感じに、あちこちで年上の女の保護欲を、刺激してるのかもね」


 驚きの表情を浮かべ、ジーナはジョエルに訊ねる。


「そんな噂あるの?」


「ほら、アウラ・アーツの指導教官のアンヘラや、剣術指導教官のカルメンとかが、あんたと似たパターンで、世話焼きたがってるって噂だよ」


「あの二人、確かクルト君が冒険者登録した頃の、指導教官だったよね」


 ギルドで冒険者として登録する場合、最初に能力を調べる為のテストを行う。

 その際、能力が低いと判断された者は、ギルドが用意した講習を受けなければ、冒険者として登録出来ないのだ。


 クルトは一年前の六月中頃、ブラックハウスを訪れた際、テストを受けたのだが、能力は低いと判断された。

 ギルドに登録せずとも、冒険者活動は出来るのだが、登録した方が便利なので、クルトは仕方なく、ギルドが用意した講習を、受ける事にしたのである。


 冒険者には、様々な技能を持つ者達がいる。

 その技能により、様々な戦闘職業に分かれるのだが、クルトが選んだ戦闘職業は、武術を使って戦う戦士。


 戦士として活動する為には、アウラ・アクセルやアウラ・アーマーなどの、アウラを扱う武術の技術である、アウラ・アーツが必須となる。

 大抵の武術では、アウラ・アーツが必須となっているので。


 戦士系の戦闘職業で、冒険者としてギルドで登録する為には、最低限のアウラ・アーツを使えなければならない。

 それ故、クルトはアウラ・アーツの講習を、ブラックハウスで受ける事になった。


 武器として剣を選んだクルトは、剣の技術も低いと判断された。

 アウラ・アーツだけでなく、クルトは剣術の講習も、受けさせられる羽目になったのだ。


 クルトのアウラ・アーツの講習を担当した指導教官が、アンヘラ・アティエンサであり、剣術の講習を担当した指導教官が、カルメン・フェルテスだった。

 どちらも女性の、上級冒険者である。


「でも、あの二人は……三十代でしょ?」


 ジーナの言う通り、アンヘラとカルメンは、三十代の中頃だった。

 二人共、名の知られた上級冒険者なのだが、ギルドに請われて、初心者を指導する指導教官としても、活動しているのだ。


 三十代を超えると、腕の立つ冒険者は、そういった指導者としての仕事を、頼まれがちなのである。


「幾らなんでも、クルト君は年下過ぎて、男としては見てないと思うんだけど」


「どうかな?」


 ジョエルは、疑問を呈する。


「最近聞いた話だけど、あの二人……クルト君を街ン中で見かけると、ひっ捕まえて強引に修行させたり、酒や食事に付き合わせたりしてるらしいよ」


 その話は初耳だったので、ジーナは驚きの表情を浮かべる。


「本当の弟子ならともかく、ギルドの依頼で短期間の講習を担当しただけの相手に、そこまで世話焼かないでしょ」


 ジーナの言う「本当の弟子」というのは、契約を結んで、正式に師匠と弟子の関係となり、長期間の修行を担当した弟子という意味だ。

 そういった本当の弟子は、師匠となった者にとっては、子供……もしくは弟や妹も同然の、親しい相手となる。


「だから、あの二人も……クルト君を狙ってるんじゃないかって、ジムの連中が噂してたんだ」


 ジムというのは、ギルドが所有する、修行の為の施設だ。

 ジョエルは昨日、ジムに仕事で行ったのだが、その時にジムで働く、ギルドの女性職員達に、アンヘラとカルメン……そしてクルトに関する噂話を、聞いたのである。


「まぁ、クルト君は……彼女はいないって言ってるから、まだアンヘラやカルメンとも、どうこうなったって訳でも、無いんだろうけどね」


 ジョエルは、話を続ける。


「他にも、ほら……シロッコが最近、クルト君をスカウトしてるって噂があるじゃない?」


 ジーナは頷く。


「レベル1のクルト君を、上級者パーティのシロッコが、能力を目当てに誘う訳ないから、シロッコも……アンヘラやカルメンと、同じなのかもしれないよ」


 有り得ない話ではないと、ジーナは不安気な表情を浮かべる。

 シロッコがクルトの能力を目当てに、スカウトするよりも、保護欲を刺激され、世話を焼く為にパーティに引き込もうとしているという話の方が、遥かに説得力がある気がしたのだ。


「とにかく、クルト君……年上の女に、モテてるみたいだから、あんたも積極的に行かないと、他の女に奪われちゃうよ」


 焦りの表情を、ジーナは浮かべる。


「キャンプに行くのなら、注意ばかりしていないで、『私もキャンプに興味あるから、連れて行って!』くらいの事、言わないと」


「今度は、そうしてみようかな……。いや、でも……あの子の為にならない気が……」


「あんたがキャンプについていって、修行させればいいのよ。あんただって、元々はレベル5まで行った冒険者なんだから、アウラ・アーツや魔術は教えられるでしょ?」


 ジーナは元々は、冒険者だったのだ。

 剣士ではないので、剣を教える事は出来ないが、アウラ・アーツと魔術の腕は、中々のものだったのである。


 子供の頃からの友人グループでパーティを組み、冒険者活動をしていたのだが、無茶をしてパーティのメンバーから、死者が出てしまった。

 そのショックから、冒険者を若くして引退し、サポートするギルドの職員に回ったのである。


 二十歳になったばかりで、中級のレベル5というのは、かなり優秀な部類であり、間違いなく上級冒険者になると言われていた程に、ジーナは才能があったのだ。

 自分と同様に、才能があった仲間達が、ダンジョンで死亡したのを目にしたジーナは、ダンジョンや冒険者活動を、甘い目では見ていない。


 故に、ダンジョンや冒険者活動を、侮り過ぎているように見えるクルトを見ると、厳しい言葉をかけ、修行させて強くしようと思ってしまうのである。

 そうしないと、クルトが死んでしまう気がするので。


「その手があったか……。今度はキャンプについていって、自然の中でアウラ・アーツの指導……してあげる事にするよ」


「そうそう、その意気だよ。頑張んな!」


 友人の背中を押す言葉をかけた直後、ジュリアの席に冒険者が現れたので、二人の会話は終わる。

 ジーナの席にも、すぐに冒険者が現れたので、二人は受付の仕事に専念する。



    ×    ×    ×






近い内に、タイトルを変更する可能性があります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ