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050 今のでレベル4に、なっちまっただろうな……アウラ・バーストは、アウラ大量に使うから

「今のでレベル4に、なっちまっただろうな……アウラ・バーストは、アウラ大量に使うから」


 苦々し気な表情で、果敢は呟く。

 戦闘中なので、指輪を動かして隠蔽魔術を解除し、胸の呪印の状態を確認する余裕は無いし、余裕があっても、果敢は現実を直視したくない気分だった。


 氷の牢獄に閉じ込められた果敢は、手足を動かす事すら、出来なくなってしまった。

 アウラ・アーマーのお陰で、極低温の氷の中でも、果敢は凍えていたが、身体にダメージを負う程の状態では無かった。


 アウラ・アーマーには、力を強化する能力もある。

 だが、さすがに氷の量が多く、重量と厚みが有り過ぎて、アウラ・アーマーで力を強化しても、どうにも出来なかったのだ。


 そこで、果敢は膨大なアウラを練り上げると、身体の表面から、周囲に爆発的な勢いで放出した。

 通常なら、周囲にいる敵を一気に片付ける場合に使用する、アウラ・バーストというアウラ・アーツを、果敢は使ったのである。


 膨大かつ強烈なアウラの放出により、氷の牢獄は内側から粉々に破砕されていき、最終的には爆砕されたのだ。

 桁外れに膨大なアウラを扱える、果敢だからこそ可能な、プリソン・デ・イエロの打ち破り方であった。


 ちなみに、果敢が身に纏うディアンドルは、先程までは魔族達の血で、赤く染まっていたのだが、元の色に戻っていた。

 アウラ・バーストに耐え切れず、血に染まったディアンドルは吹き飛んでしまったのだが、目にも留まらぬ速さで、血に染まらない状態のディアンドルに、再生されてしまったので。


 猫の仮面やリュックと中身の道具なども、実はディアンドルと共に吹き飛んだ。

 でも、リュックと同様、果敢の着衣の一部と、呪いが判断している為、元通りに完全再生されている。


 アウラ・バーストを放った為、練り上げたアウラの殆どは使い切ってしまったので、果敢は再びアウラを練り上げ始めている。

 氷の中から姿を現した時は、仄かな光しか放っていなかった、果敢の身体が放つ光が、次第に強くなっていく。


 急激に強まる光を目にして、果敢がアウラを練り上げ溜めているのを、チキータは察した。

 プリソン・デ・イエロを、アウラの力技で破るような相手に、アウラを溜めさせるのは危険だと考え、チキータは果敢に突撃を開始。


 ルー・モータの呪文を、唱え続けはしない。

 プリソン・デ・イエロが破られた以上、ルー・モータは当てようが無いので。


 チキータはクリケを唱えて、加速魔術と飛行魔術、更には防御魔術を瞬時に同時発動。

 普通の人間であれば、残像しか見えぬ程の速さで、空中に浮いている果敢に向かって突進、手にした長剣で切りかかる。


 加速魔術で、全体的な動きの速さを引き上げているので、チキータの動きは異常に速い。

 しかも、チキータの剣術は鍛え上げられていて、そのレベルは、人間の特級の剣士に匹敵する。


 加速魔術と高度な剣術を組み合わせた、チキータの超高速の剣術戦闘は、超高速で舞い踊っているかのように華麗な動きで、敵を殺戮する。

 故に、ダンザ・デ・ラ・ムーテ……チキータの出身地の古い言葉で、氷の「死の舞踏」を意味する名で、呼ばれている。


 果敢もアウラ・ブレードを両手に作り出し、チキータのダンザ・デ・ラ・ムーテに応戦する。

 二人は空を飛び回りながら、空中で激しい剣戟を開始。


 湖上を飛び交い、二人がぶつけ合うのは、アウラ・ブレードと長剣の刃だけではない。

 距離が開けば、アウラと魔力を飛ばし合い、砲撃戦のような戦いを、剣戟の合間に織り込む。


 果敢が使うのは、アウラを圧縮し、砲弾のように放つアウラ・ショット。

 チキータが使うのはマジック・バレットだが、倉庫街で下級魔族が使っていたのに比べれば、威力も射程も速射能力も、全て圧倒的に上回っている。


 アウラと魔力の砲弾は、湖上に着水し水柱を上げ、遠く離れたローゼンシュタットの町まで飛び、エイセーラス・スクリーンに衝突し大爆発を引き起こす。

 キール湖の湖上と近辺で、閃光と爆発音が、立て続けに発生し続ける。


 互角の切り合い……撃ち合いを、果敢とチキータは続ける。

 だが、次第に果敢の速さと、アウラの双剣による剣術が、チキータを圧し始める。


 チキータの速さと剣術は、果敢が戦った相手の中でも、トップクラスといえるのだが、トップでは無かった。

 果敢にとって、チキータは既に、通り過ぎたレベルでしかなかったのである。


 ここ最近は、全力で戦う機会が殆ど無かった果敢は、ブランクのせいで鈍り気味であり、チキータとの剣戟の初期は、本来の実力を発揮出来なかった。

 だが、短い時間の内に、果敢は本調子を取り戻しつつあった。


 英雄として戦っていた頃の、本調子に近付いた果敢にとって、チキータは互角の相手ではない。

 果敢はチキータを、剣戟で圧倒し始める。


 圧されているのを自覚し、チキータは焦りの表情を浮かべる。

 ダンザ・デ・ラ・ムーテとマジック・バレットだけでは、果敢に負けると覚ったチキータは、剣戟の合間に膨大な魔力を練り上げつつ、長いクリケを唱え、超強力な魔術攻撃の準備を整える。


 そして、チキータの唱えたクリケが完成、魔術が発動する。

 突如、湖上の空中に、数千本もの剣が姿を現し、果敢の上空を雲のように埋め尽くす。


「食らえ、トルメンタ・デ・エスパダ!」


 チキータが鋭い声を発するのと同時に、姿を現した数千本の剣が、その切っ先を果敢に向けて、襲い掛かる。

 チキータの動きを上回る速さで、剣の雨が果敢に降り注ぐ。


「!」


 果敢は驚きつつも、素早く飛び回り、剣を回避し続ける。

 だが、あたかも自動追尾ホーミングミサイルであるかのように、剣の大群は逃げ回る果敢を、追い駆け続ける。


 人族最速と言える飛行速度を誇る果敢ですら、超高速で四方八方から襲い掛かる多数の剣を、全て避け続けるのは不可能。

 唸りを上げながら、次々と身に迫る剣を、果敢はアウラ・ブレードで叩き切り続ける。


 高速で飛び回る剣の大群に、空中を追い駆け回され、巻き込まれてしまう果敢の姿は、まるで剣の嵐にでも、巻き込まれたかのようだ。

 それ故、この魔術の名は、チキータの出身地の古い言葉で、「つるぎの嵐」を意味する、トルメンタ・デ・エスパダとなっている。




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