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第四話 この都市の地面は赤く染まっている

少し長くなってしまいました。

また、前回までの話の細かい部分を改稿しました。

都市の名前 ムラノ→ウナ

「そういえば、まだ名乗ってませんでしたね」


 4人が車に揺られていると、不意にコーギーの男が口を開いた。


「私はコーギーのクゼイと申します。以後お見知りおきを」


 クゼイはボッティに向かって恭しく頭を下げた。


「ああ。俺はボッティだ」

「ボッティ………分かりました。覚えておくよう努力しましょう。ああ、そうでした。ボッティさん」


 自己紹介がお互い終わったところで、クゼイが思い出したように指を立てた。


「なんだ」

「街に行ったら、まず清潔になってもらいます」

「はあ? どうして?」


 突然のクゼイの要求に、ボッティが驚きの声を上げた。


「当たり前でしょう? あなた、服から爪の隙間から全てが汚いんですから、そのままでいては私の鼻が曲がりそうです。なので、一度きちんと綺麗になってもらいますよ」

「………そうか。超都市の奴らは綺麗好きなんだな」

「ええ、あなたがたに知識が無いだけです」


 そこで、一度会話が途切れ、またしばらく4人はガタガタと車に揺られていた。

 突然、車の揺れが止まった。

 きちんと舗装された道路になったのだ。

 街に近づいている証拠だ。


「そういえば、カレー」

「ん…………ああ? なんすか?」


 寝ていたカッレーがボッティの呼びかけで目を覚ました。


「お前、なんであんな街から遠いスラムにいたんだ?」

「ああ。それっすか。ちょっとあそこに用事があったんすよね。用事の内容はまあ言えないっすがね。あとカレーじゃなくてカッレーっす」


 カッレーが名前を訂正しつつ、ボッティの質問に答えた。


「用事? まあいい。あんまり危ないことするなよ」

「ははは、わかってるっす」


 ボッティはカッレーの事を怪しみながらも、そこで質問を打ち切った。


(こいつ、ただチャラいようにも見えるが、なにか隠しているな)


 ボッティはカッレーからクゼイに目線を移し、鼻を一度だけひくつかせた。


(それにしても、クゼイ。お前は自分では清潔にしてるつもりだろう。だが………お前の身体に染み付いた、血の香りは誤魔化せない)


「ボッティさん、どうかしましたか?」

「いや、なにも。む、街が近付いてきたな」


 フロントガラスを見れば、向こう側にビル群が近付いてきた。

 超都市の一つ、ウナだ。

 超都市以外の場所はほとんど人が住んでいない。

 なぜ、超都市が作られたのか。

 30年前の紀元1830年頃。

 カプアポリス共和国でははドーギニア間の経済格差の大きくなっていた。

 あるドーギニアは一月の収入が1000以下。

 また、あるドーギニアはただ座っているだけで日に10万が手に入る。

 貧相なドーギニアは金を求め、強盗などを頻繁に起こした。

 カプアポリス共和国の治安は刻一刻と悪くなっていた。

 治安が更に悪化する事を危惧した国家政府は、突如超都市(メガロポリス)計画を始動した。

 裕福な層のドーギニアを超都市に集め、貧相なドーギニアと隔離するのだ。

 超都市は驚異的なスピードで開発され、僅か半年で直径40キロメートルの円の中に約3000万人を収納出来るほどの超都市(メガロポリス)を作り上げてしまった。

 大量の超高層ビルが密集する超都市。

 その超都市がウナの他に2つ、カプアポリス共和国にはある。

 そんな超都市のおかげで、富裕層のドーギニアは治安の良い安全な場所で暮らすことが出来ている。

 それに対し、残された貧困層のドーギニア達は超都市の周りを囲む高い灰色の壁により入れなくなっている。

 超都市に入るには通行証が必要なのだが、その通行証を手に入れるためには一定以上の収入、もしくは所持金が有ることを証明しなければならない。

 証明すれば入れるのだ。

 しかし、フィールド(超都市の外)に住むものにとって、それはあまりにも高すぎる壁だ。

 残された貧困層のドーギニア達は、やがて集まり、超都市以前に使われていた家の残骸に住み、村を作った。

 それがスラム街。


「止まれー」


 窓の外から、男の声が聞こえた。

 警備員のような格好をした男の声だった。

 男の後ろには端の見えないほど続いている灰色の壁があった。

 フィールドと超都市を隔てる壁にたどり着いたのだ。

 道路はその壁の門のようなものに続いている。

 その門は、今は閉まっている。


超都市(メガロポリス)ウナにようこそ。通行証を」

「ほれ、どうぞ」


 クゼイが胸から通行証を出し、警備員の男に見せた。


「あ、クゼイさんでしたか。どうぞお通りください」


 警備員の男がそう言うと、壁の門が開いた。

 黒塗りの高級車は再び発進し、超都市ウナに入っていった。


「すごいな」


 壁の内側に入った瞬間、景色は不毛の大地からまさに超都市(メガロポリス)そのものとなった。

 どこまでも続くビル群の壁、行き交う人々。

 日が落ちてきたので、街中のネオンサインも目立っている。

 街は活気に満ちあふれていた。


「綺麗な街だ」

「ああ、掃除は全部ロボットがやってくれるっすからね。かといってポイ捨てすると罰金っすけどね」


 カッレーが街中にまばらに姿が見える角の丸い箱のような物を指差し、ボッティに教えた。


「ロボットか…………話だけは、聞いたことがある。本当に、この街はスラムとかけ離れてるな」


 ボッティが、どこか寂しそうに窓の外のビルを見上げた。

 黒塗りの車はブレーキを踏まれ、ゆっくりとビル群の中の一つのビルの駐車場に入っていった。

 車庫のような所にはいると、床がエレベーターのように動き、4人を目的の階まで運んだ。


「すごいな。車ごと運ぶのか」

「普通はないっすけどね。このビルは特別仕様っす」


 目的の階で、車はその階の車庫に入った。


「お二人さん、着きましたよ。ここが私のビルです」

「ビルごとか」

「ええ、このビルごと私のです。ではボッティさん、早速風呂に入ってもらいます」

「急だな」


 車から降り、車庫を出ると広い階に出た。


「ここは客室の階です。が、匂いが移るので先にボッティさんは風呂に入ってください。それまではくつろがせませんよ」

「わかったよ」


 ボッティはクゼイに案内され、脱衣所に行った。


「じゃ、俺はこのままソファーに寝っころんで待っ」

「あなたもスラムに行ったんですから風呂です」

「そうっすか」


 客室のソファーにダイブしようとしたカッレーは、ナガルに担がれて風呂場に連れて行かれた。





 30分後。

 生まれて初めての風呂を堪能したボッティは、洗浄された服を着直し、湯気を上げながらソファーに座って待っていた。


「まさか革のジャンパーまで新品のように綺麗にされるとは」

「今はなんでも洗濯機にぶち込めば洗える時代っすからねー。あ、クッキーとってもらっていいっすか」


 と言うよりは、2人して完全にくつろいでいた。

 ボッティは、二度とこんなに綺麗なところでくつろぐ機会は無いので、更にだらけていた。

 そのとき、リビングのドアが開き、クゼイが出てきた。


「さて、お二人さん。そろそろ準備ができたので来てもらいましょうか」

「やっとっすか」

「時間か。もっといたかったのだがな」


 そう寂しそうに言いながらボッティが立ち上がった。


 クゼイ、ナガル、カッレー、そしてボッティはエレベーターに乗った。

 内部には階を選択するボタンがあり、地下一階から地上三十二階まで1列11個で3列に整列したように並んでいる。

 そして、今の階、つまり二十二階のボタンが点灯している。


「ボッティさん。これからあなたが見る物は、口外無用でお願いしますよ。これを破った場合、最悪死んでもらうことになりますので」

「ああ。わかった」


 クゼイの笑っていない目が、その言葉が冗談では無いことを物語っていた。

 クゼイは太い指で十一階のボタンを押した。

 と思うと、エレベーターが動き出す前に次々と別のボタンも押した。

 タイピングをするように高速で指が動き、最後に地下一階が押された。

 すると、ボタンの無いはずの壁が横にスライドし、新たに「B4」と書かれたボタンが現れた。

 クゼイがそれを押すと、ボッティは一瞬浮遊感を覚えた。

 エレベーターの二十二階のボタンのランプが消え、二十一階のランプがついた。

 二十一階のランプが消え、二十階のランプがついた。

 そんな風にランプは階をどんどんと降りていき、最後の階、地下四階で止まった。


「つきました」


 エレベーターの扉が開く。


「じゃあ、ボッティ。好きなやつを選ぶっす。代金は俺が払うっすから」

「おい。これって、まさか…………」


 地下四階、その階は、沢山の声であふれていた。

 うめき声、泣き声、叫び声。

 ショーケースのような物がずらりと並べられた地下四階。

 声の正体はショーケースの中の()()だ。

 地下四階。

 そこは奴隷売り場だった。






ここ説得力ないよー、ってところ、有れば教えてください。

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