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第二十二話 電池を入れ直した日

また1、2ヵ月くらい飛びます。

時間飛びすぎですいません。

もうすこし自然に時系列を動かしたいな。

回想が多すぎる……

 カチッ……………リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ


 壊れていない規則的な目覚ましの音が、マンションの一室に響いた。

 布団の中から手を飛び出して、机の上を探る。


 バシッ


 叩かれると同時に、目覚ましがピタッと止まる。

 最近お父さんに買い替えて貰ったからね。


「んー……………ぷあ」


 私は上に伸びると、ゆっくりベッドから起き上がった。


 夏休みはもうとっくに過ぎ去って、もう少しで体育祭が目の前に迫っている。

 あーあ。

 体育めんどくさいなー。

 体育祭前だから体育が多いんだよなー。

 私はそう思いながら朝ご飯を食べ終わった。


 私は制服に着替え、学校に行く鞄を用意した。

 鞄を背負い、靴を履いた。

 ケンケン、とかかとを叩き、靴をフィットさせる。


「いってきまーす」


 返事はない。

 お父さんは、今日も朝早くから仕事だ。

 なにせ()()だから、忙しいのだ。

 私は玄関横の金魚鉢を覗いた。


「いってきまーす。黒こしょうちゃん。赤とうがらしちゃん」


 金魚鉢の中には、黒い金魚と燃えるように赤い和金が泳いでいる。

 赤とうがらしちゃんは、夏祭りですくってきた新しい子だ。

 これで、黒こしょうちゃんも寂しくなくなった。

 私が玄関の扉を開けると、朝の暖かい空気が私のほっぺを撫でた。






 夏休みに入ってすぐの頃、お父さんが裁判に掛けられた。

 そして、無罪になった。

 私は嬉しくて大泣きをしてしまったけど、お父さんが抱きしめてくれた。

 ぎゅって、抱きしめてくれた。

 家に帰ったら、ご馳走を作ってくれた。


 それからいろいろあって、お父さんは市長になった。

 この超都市の最高権力者ということになる。

 前よりもっと忙しくなったから、最近ろくに会えて無くって、寂しい。

 だから、お休みの日は、いっぱい甘えるんだ。


 夏休みが明けて、学校に来たとき、みんなは私が奴隷だったということを知っているのに、今まで通り振る舞ってくれた。

 特に、マリリンは夏休み中も一緒に遊んでくれて、楽しかった。






 朝家を出てから、大体6時間が経った。

 ぽかぽかとした日差しが、窓際の私を温める。

 そんな私の今日の日程を見てみましょう。


1時間目:数学

2時間目:現代社会

3時間目:英語

4時間目:化学

 昼ごはん

5時間目:体育

6時間目:国語古典 ←いまココ!


 はい。

 ごはんの後の5時間目に体育があるから、今もの凄く眠い。

 窓際なのも相まって、もの凄く眠い。

 ああだけど絶対に寝るもんか。

 生徒会長であるこの私がみんなのお手本としてZZZZ………


「ではこの女の声はどういう意味か。カルザさん」

「ZZZZZ………」

「カルザさーん」

「ZZZ……………あっ、ひゃい!?」


 うぶっ、寝てた!

 ていうかひゃいって言っちゃった!

 やだー、はずかしー。

 みんなから笑い声が上がる。

 ううう……………


「カルザさん。この女の叫び声の意味を答えてください」

「あ、はい………」


 平和だなー。

 まだ何人か笑ってる人がいるので、ちょっと睨みつけた。

 幸い、質問は解るものだったので、私は答えを黒板に書くために立ち上がった。

 立ち上がりながら、私は思った。

 こんな平和な日が、何時までも続けばいいのに。






 あれ、あ、地面が斜めってる。

 立ち眩み?


 教室がまわる。

 私は机に寄りかかった。


 ガタッ!


 あ、う。


「カルザさん、大丈夫ですか?」

「あ、大丈夫です。ちょっと、立ちくらみが」


 違う、大丈夫じゃない。

 その時、私はお腹の底から、何かが這い上がって来るのが分かった。

 まって、


 私は吐いた。


「ラキャちゃん!?」

「ええ、うう、げええっ、げぼっ」


 さっき食べた物が、古典のノートの上にぶちまけられていく。


「ちょ、先生! 保健室連れてっておきます!」

「あ、うん! お願い!」


 私の隣の席のマリリンが、ビニール袋を手にそう叫んだ。

 マリリンは私にビニール袋を持たせた。


「大丈夫、歩ける?」

「うん………はあ………はあ、げほっ………」


 口の中が酸っぱい。

 胸がむかむかする。

 気持ち悪い。

 マリリンは私を保健室までつれていってくれた。

 道中でも何度か内容物を戻してしまったが、マリリンが気を利かせて何枚かビニール袋を持ってきてくれたので、助かった。


「急患です!」


 マリリンが扉を開けながら言った。


「クラスと名前を」


 保健の先生が冷静に言う。


「2-4のアリーナとカルザです! カルザが急患です!」

「はいはい、分かったから。一旦落ち着いて」


 保健の先生が立ち上がり、探るように私を見る。


「取りあえず座りなさい。症状は?」


 エチケット袋を用意しながら、保健の先生が私に聞いた。


「はい、えっと、はあ………さっき、授業中に立ち上がったら、ふう、いきなり平衡感覚がなくなって…………」


 先生が新しいエチケット袋を私に渡し、テキパキと古い方を処理する。


「立ち眩みね」

「はい。それで、いきなり気持ち悪くなって、吐い………うぐ」


 私は早速エチケット袋を開き、その中に吐いた。

 さっき何度も吐いてもうほとんど吐くものが無いため、余計苦しい。

 マリリンが隣で無理しなくて良いからね、と声をかけながら背中をさすってくれている。


「何回吐いた?」

「6、7回…………だと……」

「多いわね………取りあえず、休んでいなさい。それだけ吐いたなら、何らかの悪いことがあるわ。親御さんに迎えに来て貰うから」


 私は先生が用意してくれたベッドに寝ころんだ。


「大丈夫?」


 マリリンが聞く。

 私は首を横に振る。


「最悪………」

「無理、しないでね?」

「うん………」


 恐らくお父さんに電話している先生が、マリリンに言った。


「じゃあ、あとはこっちで受けるから、もう大丈夫よ。先生に、カルザさんは早退すると言っておいて」

「はい! じゃあ、ラキャちゃん、お大事に……!」

「ん………」


 マリリンは一礼をして保健室を出て行った。

 電話が繋がったようで、先生がお父さんと話す声が聞こえる。

 しばらくして、先生が受話器を置いた。


「仕事を中断して来てくれるらしいわ。それまで、安静にね」

「はい………」


 私は毛布を肩まで被った。

 暖かいな。

 先生が体温計を私に差し出す。


「体温も計っておいて」


 私が計ると8度5分だった。


「今………頭もぐるぐるしてるみたいで、痛いです……」

「頭痛ね……いつもは何度位?」

「37,4です………」

「微熱ね……取りあえず寝てなさい」

「はい………」


 先生がベッドの周りのカーテンを閉める。

 私は、クリーム色で染み一つ無い天井を見る。

 そして想った。



 もしかして、だけど。

 もしかしたら、そうかもしれない。

 もしそうだったら。


 嬉しいな。



 私はお腹の上に手を置いた。






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