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第十六話 麦の香りの温もり

長編前書き

リリナとカッレーの出会い


9年前

リリナ、超都市に入居

超都市でも男を喰い漁る(ついでにお金も入るからラッキー)


その過程でカッレーと出会う

スラムで一度面識があるため、馬が合う

バーで何度か語らう

お互い徐々に心を引かれあう


会ってから2ヵ月後、付き合う事になる(リリナはこの頃から男遊びを止めた)


それから更に3ヵ月後、カッレー、人身売買取引法違反で逮捕(懲役七年の実刑判決)


それから7年間、カッレーは度々一夜限りの脱獄を繰り返し、リリナと会う(バレない)


釈放後、リリナと結婚(2年前)

マンションの一室を使い、路地裏にて居酒屋ローデュム開業


今に至る




家族構成:カッレー(32) リリナ(37) 少女(8) 少年、少女、少女(6) 少年(4) 少女(0)


子ども達の名前は上から、ストリア、サウジ、イラ、ネシア、アランド、ジェリア



ドーギニアは人間と身体構造が違うので、一度に複数の子が産まれる多胎児が産まれる確率が高くなっています。

また、短期間に沢山………すればするほど、一度に産まれてくる子の数は多くなります。

つまり、仲のいい夫婦には必然的に多胎児が多くなります。


長文失礼しました。

 リリナは腕の中で眠る娘、ジェリアを揺らしながら、ふふ、と笑った。


「そうかい。ラキャちゃんは元気かい」


 ジェリアを見ながら、リリナは言った。

 あれからしばらく、リリナとボッティは会話を交わした。

 昔のラキャの事。

 ボッティが社長になった経緯。

 リリナがカッレーと結婚した時。

 その間カッレーは完全に蚊帳の外だったが。


「それが聞けただけで、私はもう十分だよ」

「そう言えば、お前俺とラキャがスラムを離れたとき泣いてたしな」

「ばっ………そんな訳あるか………!」


 リリナはジェリアが起きないように声を抑えつつも、それを否定した。

 顔は赤くなっている。


「俺が直接見たわけじゃ無いんだけどな。こっちに来たテッペイから聞いた」

「あいつ……………」


 リリナは唇を噛み、額を抑えた。

 テッペイは、スラムでリリナとつるんでいた仲間だ。

 今は超都市での普通の生活を手に入れている。

 スラムにいたころの二つ名は「口軽のテッペイ」。

 きちんと二つ名通りの仕事を果たしたようだ。


「今度会ったら締める」

「やめておいてやれ」

「あー、うー」


 そうこうしてる内に、ジェリアが目を覚ましてしまったようだ。


「ミルクかな。リー、俺が寝かしつけてくるよ」

「ああ、頼んだよ」


 カッレーはジェリアをリリナから受け取ると、店の奥に消えた。


「あんた、大企業の社長ってんだから、ちゃんとラキャちゃんを幸せにしてやんなよ?」

「ああ。分かってる。これからも、父親として最高の生活を送らせるさ」

「良い心意気。私も、母親としてこの子たちにできる限りのことはしてやってるつもりだよ」


 リリナはカウンター横に飾られた写真立てを見た。

 リリナとカッレーと6人の子供が写っている。

 それを見たリリナの表情に、一瞬陰りが見えた気がした。


「寝かしつけてきたよ」


 カッレーが少し疲れた様子で戻ってきた。

 居酒屋ローデュムは、静けさに包まれていた。


「社長さん」

「なんだ? カッレー」


 カッレーはスマホを取り出し、フリフリと振った。


「連絡取りやすいようにリンネ、交換しておきましょ」

「リンネか。分かった」


 リンネとは、巷で流行っているチャットソフトの名前である。

 メールよりも簡単に連絡を取ることができ、中高生の間で人気を博している。

 ボッティとカッレーは連絡先を交換した。


「もうこんな時間か。俺はそろそろ帰る。世話になった」


 スマホを操作したついでに時計を見たボッティが席を立った。


「もう帰るのか」


 カッレーが名残惜しそうに言う。


「明日も朝早いしな。それに、早く帰らないと………」

「帰らないと?」


 ボッティの顔がほころんだ。


「ラキャが寂しがる」





「ただいま」


 ボッティは玄関で大きな靴を脱ぐ。

 時計の針は、既に12時を回っていた。


「ん………お父さん。お帰り。今トイレに起きたとこ」


 ラキャが目を擦りながら、ボッティを出迎えた。


「ラキャ。もう、気分は良くなったか?」

「うん。まだ少し震える時もあるけど、もう大丈夫」


 ラキャはボッティに噛みついた後、しばらく精神的に不安定だった。

 時折身体が痙攣したように震えたり、寝ている時にうなされたりしていた。

 しかし、学校を休んでまで休息したお陰か、ラキャの容態は割と早くに回復していた。


「明日には、学校に行けそうか?」

「うん。大丈夫だと思う…………………あの、お父さん………」

「なんだ?」


 ラキャが言葉を詰まらせながらボッティに言う。


「えっと……………その………ぎゅって、していい?」

「ああ。いいぞ」

「ん……………」


 ボッティが手を広げると、ラキャがそこにゆっくりと抱きついた。

 ボッティはラキャを優しく抱擁する。

 こういった触れ合いは、時にどんな精神治療よりも効果がある。

 ラキャはボッティの臭いを嗅ぎ、ふてくされたような声を出した。


「ビール臭い」

「……………すまん」


 居酒屋で飲んできたばっかりのボッティの体臭は、ビールと焼き鳥に支配されていた。

 それでも、ボッティを抱きしめるラキャの腕には、自然と力が入っていた。


「…………………うん。気持ちが落ち着いた」


 ラキャはボッティから離れ、また目を擦った。


「もし、また気分が悪くなったら言えよ」

「うん。お休みなさい」


 ラキャは、少しふらついた足取りで、自室に戻っていった。





前書きが長くなってしまいました。


さて。

感想ください。

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