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第十二話 コンプレックス・コンプレックス

「ラキャちゃんおはよー!」

「おはよー!」

「おはよーラキャちゃん!」


 ラキャが教室に入ると、数人の女子が挨拶をしてきた。


「みんなおはよー」

「今日ラキャちゃん日直だよ」

「あ、そお? りょうかーい」


 季節は春。

 まだ少し寒いかな? という日もある。

 野生の桜は既に散りきっているが、超都市の一部ではまだ花見ができる。

 そんな季節。

 今日もいつも通りの普通の1日。

 ラキャは鼻歌を歌いながら出席簿を取りに行った。


「ああ、おはよう。カルザ」

「おはようございますニッシュ先生」


 ラキャが職員室前で会ったのは、ラキャのクラスの担任、ダルメシアンのニッシュ先生だ。

 ニッシュ先生は手帳を開き、日付を確認する。


「たしか、今日は役員会議があったよな?」

「はい。16:00から会議です。今日スモティーネさんが用事で参加できないみたいです」

「そうか。助かった」


 ニッシュ先生は手帳を閉じた。


「はい。では私は日直なのでこれで」

「ああ」


 ラキャはニッシュ先生に会釈をすると、教室に帰った。





「ラキャちゃーん」

「どうしたー、マリリン」


 黒板消しを掃除しているラキャに話しかけたのは、ジャーマンシェパードのマリーナだ。

 マリリンと言うのは、マリーナを呼ぶときのあだ名である。

 マリーナはラキャと中学校の頃からの親友であり、高校で同じクラスになったときは2人で抱き合ったほどだ。

 マリーナはスマホの画面をラキャに見せた。


「放課後さ、ここ行かない?」


 マリーナのスマホの画面には、カラフルなアイスクリーム屋が表示されていた。


「えー、なにこれー、かわいいー!」


 ラキャが黄色い声を上げる。


「最近出来たんだって。アイスクリームショップサーティー。どう?」

「行く行くー! どこにあるの?」

「えっとねー、176-18だって」

「割と近いねー。じゃあ、終わったら行こ?」

「うん!」


 その時、丁度授業開始のチャイムが鳴った。

 クラス生徒40人中40人が着席した。


「今日は特に連絡なし。じゃ、今日も1日お元気で」

「気をつけ、礼!」


 ありがとうございましたー






 昼。


「そういえばラキャちゃんってさ」

「んふ? ふぁに?(なに?)」


 ラキャが購買で買ったパンを食べていると、マリーナが話しかけてきた。


「滅茶苦茶強いけど、どこで習ったの? 道場?」

「ふぉんふぁふぁけふぁいやん。(そんなわけないじゃん)………ごっくん。お父さんから教え込まれたんだよ」

「へー。お父さん!?」


 ラキャは強い。

 どれほど強いのかというと、以前、陸上部でパワハラが行われていたことがあった。

 パワハラを行っていたのは陸上部三年部長、シベリアンのルー。

 暴力が振るわれていたことはつい最近まで明らかにされてなかった。

 なぜなら、ルーの父親がこの超都市の市長であり、最高権力者だからだ。

 ルーの父親が口封じした訳ではない。

 ルー自身がもし暴力を振るった事をばらせば、親の社会的地位が危ないぞ、といった脅しをしていたようだ。

 親の権力を振り被り、弱いものに暴力を振るっていたルー。

 だが、1ヶ月前、たまたま校内巡回をしていたラキャがパワハラの現場に遭遇してしまい、ルーが口封じをしようとラキャに詰め寄ったところ、綺麗に投げ飛ばされ地面に叩きつけられた。

 その後、ラキャが多方面に陸上部間のパワハラをバラしたため、ルーは停学処分、また、部長の地位剥奪となった。


「お父さんって、あのデカい社長の?」

「うん。なんか、自分の身は自分で守れー、みたいな感じで、色々教え込まれたんだー」

「例えば?」


 マリーナが興味深々の眼差しでラキャを見る。


「えーっとね、パンチとかキックとかじゃ無いんだよね。関節技とか投げ方とか。あとは身近にあるものでの敵の撃退法。良ければ教えるよ」


 ラキャが身振り手振りで動きを再現した。

 座って上半身しか動かしていないにも関わらず、一つ一つの動きにキレがあり、洗礼されている。


「結構。なんか難しそうだしー」

「以外と簡単だよー」

「えへへー」

「えへへー」





 放課後、アイスクリームショップサーティーにて。


「一玉がでかい」

「かわいー!」


 ラキャはイチゴの上にチョコを乗せ、リダンのトッピングをした2段アイス。

 マリーナはホットサワーの上にウォーターフォールとスノウデイスカイを乗せ、サネスをトッピングした3段アイスだ。

 アイス一玉が拳ほどあるので、相当の大きさだ。

 ラキャはカップに入れてもらってるが、マリーナは3段をコーンに乗せているので今にも倒れそうだが、マリーナは手慣れた様子で抜群のバランス感覚を保っていた。

 2人は円形のテーブルを挟み、座った。


「撮るよー」

「はーい」


 マリーナがスマホを構えた。

 カシャカシャと数回シャッター音が鳴る。

 アイスは溶けるため、手早く、正確に様々なアングルから撮る。

 時には2人で映り、時にはアイスだけ、など、40枚ほど撮ったところで、マリーナがスマホを置いた。


「食べよー」

「わーい♡」


 ラキャはスプーンをアイスに突き立てた。

 透明なスプーンはゆっくりとアイスを割っていき、その上にアイスを一口大に切り分け、乗せた。

 ラキャは大きく口を開け、ぱくりとかぶりついた。

 カシャ、と始めの一口をマリーナのシャッターが捕らえた。


「んーおいしー♡」

「私も食べよー」


 マリーナはアイスに刺さっているスプーンを手にとり、そこからどかすと、トッピングごとかぶりついた。

 カシャ、といつの間にかにマリーナが仕掛けていたスマホのシャッターが切られ、かぶりついたその瞬間を激写した。


「…………!…………!!…………!!!」


 マリーナは目を見開き、口元を抑える。


「…………!!!!…………!!!!!…………!!!!!!」

「なんか言えや」

「ん……………なにこれー! やばいうまい!」


 ようやく飲み込んだマリーナが舌なめずりをしながら言った。


「でしょー」

「うむうむ…………ガブッ!」


 二口、三口、マリーナはあっという間に2玉を食べ尽くした。


「あー、美味しい。くちの中がパチパチしてる」

「パチパチするのって、スノウデイスカイだっけ? 今度私も……………」


 そう言ったラキャの視線が一瞬マリーナの背後で止まった。

 ラキャはすぐに視線を外し、耳をくるくるといじる。


「食べてみたいなー」

「あの大きいのってラキャのお父さんじゃない?」

「………………」


 ラキャの視線の先を見たマリーナがアイスをかじりながら言った。


「お父さん、だね。なんでここにいるんだろ」

「あ、こっちきた」


 ボッティはスーツを着込み、もう1人の男と話しながら図面のような物を広げ、こちらに歩いてきている。

 ラキャには気づいてないようだ。


「ねえ、わかる? 外でたまたま親と会ったときの気まずさ」

「まあ………分からなくもないね」


 ラキャは他人の振りをしてやり過ごすことにした。


「ん? ラキャじゃないか。アリーナちゃんと一緒か」


 あっさりと気付かれてしまった。

 アリーナというのはマリーナの名字だ。


「あ、お父さん。仕事?」


 ラキャは今気づいた、というように顔を上げ、ボッティに聞いた。


「ああ。仕事だ。今日もまた遅くなるから、夕飯はよろしくな」

「はーい」


 そう言うと、ボッティは図面を持ったまま男と並んで歩いていった。

 ラキャはアイスを食べるのを再開した。


 ボッティの姿が見えなくなった頃。


「ラキャってさ、ファザコン?」

「っ!? そんなことないよ?」


 唐突なマリーナの質問に、ラキャが動揺する。


「ふーん」

「なんで急に………………」


 ファザコンとは、父親に対して強い執着や愛着を持つ者の事を言うのだが、その定義に当てはめれば、ラキャはファザコンだろう。

 ラキャはそれを否定しているが………


「だってラキャ尻尾振ってたもん」

「え、ウソ! 振ってない振ってない!」


 ラキャは尻尾を抑えた。

 ボッティがラキャに気づいたとき、ラキャの尻尾がパタパタと振られた。

 テーブルでボッティと隣の男からは見えなかったらしいが、マリーナは見逃していなかった。


「振ってたー」

「振ってないもーん!」

「振ってた」

「うー……………」


 ラキャは赤面した。

 ドーギニアが尻尾を振るのは、もっとも分かりやすい感情の表現の一つだ。

 大きい喜びの感情。


 ラキャはやっぱりファザコンだった。





ホットサワー、ウォーターフォール、スノウデイスカイ。

色はそれぞれオレンジ、青、白です。


読みづらい文ですいません。

頑張ります。

感想ください。

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