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第三章 前編・後編

今回は長くなりました。前章からの期間や、内容などです。そろそろお話が暴走し始めています。正直言ってタイトルに「恋愛」なんででかでかと付けなきゃよかったと後悔です。今回もひきこもりくんがんばってますよ。

〜第三章〜ぼくのことと、きみのこと

「前編」

 

 <1>

少年と少女が出会うずっとまえ、遠いむかしのこと・・・。


ぼくは東京でうまれた。

草花の芽生えが始まり、生命の息吹があたりを潤す、春先の頃だった。

下町のちいさな病院で、ぼくはおおきな産声をあげた。


ほかのどの子よりもおおきな、生命の喜びを世界に知らせるかのような声だった。

母親のからだが小さかったため、母は帝王切開でおなかをひらかれ

ぼくはシャバへと、意気揚々と躍り出た。

そのため、生まれたてだというのに、元気すぎるほどの男の子だった。

いつまでもぶんぶんと腕を振り回していたという。


赤ん坊は、母親の子宮から外の世界へと旅立つときに、すさまじい苦しみを味わうのだそうだ。

人生のいちばんはじめに、もしかしたらいちばんおおきいかもしれない壮絶な試練を乗り越えて、

ひとは生まれる。それでやっと一人前の、にんげんになれる。


でも、ぼくはそれを知らない。


この世界の苦しみをなにひとつ知らない、

まんまるで、ふにゃふにゃのこころをもった赤ん坊が、ここにちいさく生き始めた。


 <2>

まだピアノのしたを走れるくらい、ちいさかったあのとき。

ものごころついた頃から、父親はもういなかった。だいぶ最近になるまで、それを不思議におもうことは

なぜだか無かった。世界中の子どもたちが、ははおやと、ちちおやがいることをまるで当たり前のように思って

いるのと同じように、ぼくは何も感じることなく、母さんのほそい2本のうでがぼくを必死に支え続けるのをぼんやり見つめていた。


小学生時代。

小学生のころは、楽しかった。だれかとうまく話せなくて仲間はずれにされたこともあったけれど、

それでもまだ、ぼくは世界の本当の恐怖に気づいてはいなかった。


学ランを窮屈に着込んでいる、中学のころ。

部活動にはいっていなかったぼくは

静寂が悲しく耳にひびく一軒家で、遅くに帰ってくる母をひとり待った。

この家は祖父の所有物だった。


しだいに、ひとと話すことのあまり無いぼくは、その(すべ)を失くしていった。

孤独の苦しさに耐えるため、こころを内側に押し潰した。


いつしかぼくは、この世界では生きてゆけないのだとしった。



そして、15回目の春、高校生。


あのとき・・・。一週間前のあのひ、ぼくは

一瞬の恐怖におびえた。そこから惨めに逃げ出し、

ひととひととの間にあった大切な、いくつもの光を、すべて捨てた。


ははが残していったお金もつきかけていた。

なのに、ぼくはひきこもりになった。


・・・いつしか母は、いなくなっていたんだ。長い年月を生き、世界の数え切れないほどの痛みを

知っていたぼくはとても自然にそれを受け入れた。ぼくの、この信じたくなくなるほどのひろい世界で

たったひとりだけの家族、母さんは


ぼくを捨てたんだ。

だから、ぼくはこれでいいと思った。


ぼくがもしこの世界の、なにもかもを放り捨ててただひとり宇宙のはじっこで

ちっぽけに朽ち果てても、悲しむひとはいない。

ぼくを想い、こころでぽろぽろと涙を落としてくれるものは、どこにもない。

どんなに泣き叫びながら探したってない。無いんだ・・・。



ぼくは、いつだってひとりぼっちだった。


 <3>


ええと・・・。

これは、きみのこと。

ぼくをこころの底から救おうとしてくれた、愛すべき、信ずべきひと。

ぼくが守りたいと、願う彼女。


けれどぼくはきみを知らない。

きみは・・・。きみは一体、


だれなんだ?


きみはこのとき、まだこの世界に存在していなかった。

けれど遠い未来、ぼくがきみと出会うとき、きみは確かにこういうだろう。


きみは、ぼくとおなじくらい長い年月を、生きてきた。

きみはぼくと同じようなひと。同じ場所にいる。

だから、きみとぼくはいっしょ。おんなじなんだよ。

とてもやさしい声で・・・。


それから以前のことは、ぼくはなにも知らない。











そしてあの日。久しぶりのそらはひたすらに青かった。

暗いネットの深海から打ち上げられたぼくは、横たわりながら___・・・。

____________________________________________________________________________________________________________________


〜第三章〜ぼくのことと・きみのこと

「本編(後編)」

 

 <1>

流れる雲と、青空をみあげていた。

ぼくときみがであった、この日のことです。


意識を取り戻したぼくが存在していた場所は白く、清浄な世界だった。

開け放った窓からさらさらりところがってくる風が、心地いい。空気が輝くみどりを含んでいるのがわかる。

そのちいさな四角から、巨大な雲と空がのっそりと、すぐそこに見えた。

そのおおきさに恐怖して、のみこまれないようにとぼくはふわりと目を閉じる。すると光が閉ざされた。


おなじ暗闇がえんえんと満ちていた、あの部屋でのことが、

ぼくの脳内で静寂の音をともなって再生される・・・。



昨夜、極度のひきこもり生活の末にぼくのからだは限界をむかえた。


ぼくは凄まじいだるさに襲われていた。

頭蓋のなかは鬱鬱としたもやにつつまれているようで、なにも言葉を生もうとしない。

このからだは絶望的な何かにつらつらと支配されているのではないかという気がして、

ぼくはそれに必死で抵抗してみる。

すると突然、目の前がぐにゃりと歪むのがみえた。

そしてぼくは意識をうしないその場に倒れこむ・・・。


それからぼくは、電気代の集金にきた男に発見され、ここに運ばれたそうだ。

玄関のドアは開いていて、部屋の扉の鍵穴からぼくの姿がうかがえたらしい。


ぼくはいま、町の病院にいる。


 <2>

きみとぼくが出会うはずの、今日。


どこか偉そうで、患者を目下にみているような医者がいう。

もうすこし発見が遅れていれば危なかったのだよ。きみはいったい何をしていたら

こんな状態になるんだね。

まったくもってやる気の無い声で、何の意味もない説教を垂れ流す。


ぼくはとくに聞いていなかった。せかせかと、音声を耳の穴から

もう片方の耳穴へと通りぬけさながら、おもった。

こういう奴がうじゃうじゃいるからこの世界がいやになるんだな・・・。

しかし、ぼくはもうこのだだっぴろい世の中に

着の身着のまま放り込まれてしまった。王国は崩壊し、信頼する相棒とも別れてしまったのだ。やつはまだあの部屋にぽつんと残っているのだろうか。

ちいさな希望と、絶望の残骸に埋もれながら・・・。



夜になった。


ひんやりとした空気があたりを静かに包み込み、

落ちついた紺色の空には、遠い宇宙の彼方かなたに回りながら巨大に浮かぶ、ぴかぴかした惑星や、衛星たちが今夜もぼくらにその美しく、幻想的な姿をお披露目している。

ぼくは病院のベッドの中で夜空を見つめていた。医者の言葉を断片的に思い出してみるとどうやら、ぼくは入院することになったようだった。

なんだかじっとしていることに苛つきを感じた。なんだろう。なんだか妙な胸騒ぎを感じる。

ダメだ。ここに居てはダメだ。わぁわぁと本能が騒ぎ立てる。すると、ぼくはすこしおかしなことを思いついた。

それは、いくぶん狂っていたとも思える。


ぼくはベッドの中からはい出し、病人たちの寝静まった病院の閑散とした廊下を歩く。

音を立てないよう、ちいさくゆっくりと移動した。夜の病院というのは、ときに恐怖すら感じさせた。

息づかいすらも、漆黒の回廊のむこうまで響いていた。やっぱり、やめようかと思った。

と理性さんが心のなかでいってみるとまた、本能くんのブーイングである。


廊下のまがりかどでいったんとまり、視覚と聴覚の入力ポートの感度を最大にする。

病院にもやっぱり見回りとかあるもんなのだろうか?けれどもぼくのセンサーはなにも拾わなかったようなので、右折して進む。

そして、表の道路に面した窓を見つけた。

窓の前に立つと鍵をあけ、ぼくは枠に腕をかけてなんとか乗り越える。そとの地面にどたりと着地したとたん、猛然と走り出す。


ぼくは、病院を脱走してみた。


 <3>

きみと出会う、月夜の晩。


ぼくは途方にくれていた。いまさらになって気づいてしまったのだが、

ぼくはあの病院が、町のいったいどの位置にあったのかを知らない。

いや、もしかすると隣町の病院だったりするんじゃないのだろうか。

気を失ったまま運ばれたのだから、わかるわけない。無我夢中で駆けた為にここがどこなのかもわからなくっていた。

病院に戻ることすら出来ない。


ぴいんと張り詰めた冷たさがぼくを冷静にさせると、からだの奥の方から

轟々ごうごうと音を響かせながら、恐怖の烈火がせりあがってきた。

こうなってしまえば、もうあまり時間は残されていなかった。

恐怖がぼくをじりじり焦がし始めているのがわかる。このまま焼き尽くされてしまえば、

ぼくは恐怖に耐えられず、パニックに陥ってしまうはずだった。


楽観的な状況ではなかった。


日本トップレベル、

つまり世界トップレベルのひきこもり生活によって、ぼくの

運動能力や、体力などといったものは極限まで削減され、そういえばさっきからなんだか

ふらふらするし、少し気を抜いたら嘔吐して

黒い地面にうずくまってしまいそうなのだ。入院患者がタイム更新目指して全力疾走するべきではないということが判明した。

しかし、そんなのは許されなかった。

こんな状態のまま野外で一晩明かしたら、ぼくは死んでしまう・・・。

全身からどくどく流れ落ちる脂汗が炎を激しくさせるなか、ぼくは意識をはっきりと

させていなかったが、それだけは確かに理解できた。

ぼやけた景色をみまわしてみたが、光が灯っている建物はあらず

もう深夜なのでしっかり戸締りがしてあるようだった。

息が上がっている。きもち悪い。暗黒の景色が数秒に一度、くらりとぶれる。

なにかにすがるように、闇の向こう側まで目線を馳せながらよろりぐらりと進んだ。


つらかった。泣き出してしまいそうだった。

だけど、ぼくを誰も助けることは出来ない。まわりには人っ子一人居なかった。

黄金色の月が、いつもと変わらずゆったりとぼくの頭上に浮かんでいた。


彼はなぜ、いつまでもぼくを助けることをしないのだ?


そうか、とぼくはあはは、とよれた笑い声をたてる。

冥界の死の使いに、金色に輝きながらぼくがここにいると知らせているのか・・・。

ちくしょうめ・・・。くやしい・・・。ぼくは死ぬのか?

だれも助けてくれない。ぼくは・・・。


ぼくは、いつかのことばを思い出す。


”ぼくはひとりなんだ”


それはひとひらの、ちいさな、忘れかけられていた言の葉だった。

すると、どこからか優しく吹いた電脳の風が、ふわりとぼくを取り巻く。


強い意志をもった風が、葉をのせて、ひらひらと舞い踊りながらぼくのちっぽけなからだの全てを、

あたたかい黒で包み込みながらひゅるひゅるりと幾度も駆け、巡った。


それらは、遠くとおい遥か彼方かなたからやってきた、ぼくにとって大切なものたちだった。


ぼくは思い出した。あの日々を。そうだ、ぼくはいつだってひとりだったじゃないか。

今回だって、いつもと同じだ。なにも変わらない。ぼくの漆黒の力が、赤の炎を飲みこみながら恐怖を消し飛ばした。

戦える・・・!ぼくのこころが爆発するようにふくらんで、みなぎった。


ぼくは孤独とたたかう戦士だ。孤独の戦士。


電脳の、戦士だ。


・・・めざすは、没落の王国。ちいさな世界のなかの王さまは、いまむくりと立ち上がった。


少年の、最後の戦いがはじまる。













少年の背後で月がうなずくように、きらりと輝いた。

_________________________________________________________________________________


〜第4章〜戦いのはてに




・・・・・・つづく




















それにしても・・・テスト終わりましたよ・・・。ここ何日か勉強しなきゃっていう嫌な感じのプレッシャーで好きなこととか勉強とか小説の更新とか勉強ができなかったので、今日から趣味にいそしみます。テストからの逃避ではじめた小説ですが、これからも、どうか末永く、願わくば完結できますように・・・よろしくお願いいたします。

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