アサガオの観察日記がおかしい
小学5年生の鈴木君は何かと変わった生徒でした。そんな彼は夏休み明けに自由研究で「アサガオの観察日記」を提出しました。
早速担任の先生が確認してみると、少々ユニークな仕上がりになっていました。
【7月25日】
『この前植えた種はまだ芽を出さない。早く芽を出さないかな』
担任「うんうん、新しい種を埋めた時ってワクワクするよね」
【7月26日】
『小さな芽が出てきた。ここからが本番だ』
担任「頑張れ鈴木君」
【7月28日】
『双葉が開いた。可愛い』
担任「ここまでは順調だな」
【7月29日】
『ギョロっとした目が出てきた。ぱっちりお目目で可愛いな』
担任「……ん? き、気のせいだよね? 字を間違えてるだけだよね?」
【7月30日】
『茎から黒い縮れ毛が生えてきた。めっちゃキモい。多分スネ毛だと思う』
担任「スネ毛!? それアサガオじゃないの!?」
【7月31日】
『アサガオのスネ毛がだいぶ伸びてきた』
担任「スネ毛観察日記になってるよ!!」
【8月1日】
『今度は口が形成され始めた』
担任「何そのクリーチャー?! っていうか口より先に生えるスネ毛って何なのか!」
【8月2日】
『他に植えたアサガオたちもどんどん芽を出してきた。数えたら全部で12個あった』
担任「他のアサガオはまともなのだろうか……」
【8月3日】
『朝、様子を見てみたら、アサガオ同士が殴り合いの喧嘩を始めていた』
担任「さらっと手が生えてることになってる!」
『しょうがないので負けてる方を別のプラントに移しました』
担任「鈴木君は優しいなあ」
『これじゃあアサガオの保護観察ですね。あはは』
担任「……」
【8月4日】
『相変わらずスネ毛の成長が止まらくてキモい。まるで先生のパンツを見てしまった時の気分になった』
担任「おい」
【8月5日】
『アサガオが言葉を発するようになった』
担任「ついに喋り始めた!」
『一番最初に喋った言葉は「肉をよこせ」だった』
担任「まさかの肉食!?」
【8月6日】
『もうすぐ花が咲く頃だと思ったけど、何にも変化なし。強いて変わったことを挙げれば虫やネズミを捕食するようになったことくらい』
担任「どう猛すぎるわ!」
【8月14日】
『「人類は我々に支配される奴隷となるのだ」とか喋り始める』
担任「さっきからアサガオがアグレッシブすぎるんだけど!」
『付け上がるなよ植物風情が』
担任「!?」
『僕はアサガオの一つを抜き取り、たき火にぶち込んで燃やしました。そしたら残りのアサガオは何も言わなくなりました。楽しかったです』
担任「この子が一番おっかねえ!!」
【8月17日】
『雨が降った翌朝、一気にツルが伸びてきました。ここまで育てたかいがあったなあ』
担任「やっと普通の観察日記に戻った……。多分戻ってないけど」
『伸びたツルは全部お父さんに絡みつきました』
担任「なんで!?」
『面白かったです』
担任「さっきから悪魔か!!」
【8月20日】
『ツボミがいくつか付いていました。早く花が開かないかなあ』
担任「その前にお父さんを助けてあげて!!」
【8月21日】
『やった! 花が開いた! きれいな紫色の花が咲きました』
担任「うんうん。一から育てた花が咲く瞬間って嬉しいよね。でも早くお父さんを助けてあげて」
『そして花の中からお父さんが出てきました』
担任「エイリアンか!!」
【8月24日】
『花がたくさん咲き、見頃を迎えました』
担任「お、お父さんはどうなったんだ……」
『そして開いた全ての花からお父さんが出てきました』
担任「お父さん何人おるの!?」
『まるで将棋だな』
担任「絶対違うよ!!」
『これでアサガオの観察日記は終わりです』
担任「終わった……。まあこれはアレだな。鈴木君なりのジョークか何かだな」
PS
担任「ん?」
『先生にアサガオの種をあげます』
担任「いらんわ!」
『先生の給食のパンに混ぜときますね』
担任「もう食っちまったよ、チックショー!!!」
おわり
お読みいただきありがとうございました!