ことの始まり 浜路の場合
この作品は、優しさとか、生き方を考えるとか、読んでもらって身に付くものとか何もない、ただ理不尽な恐怖を描いた純粋ホラーです。
「ねえ、浜路、知ってる?だーっれだの恐怖の噂。」 始業のベルが鳴って、もうすぐ授業始まるってのに、隣の席のうざい女が話かけて来た。
「知らねえって、そんなくだらない噂。」 その一言だけで、後は無視するつもりだった。
「そんなこと云ってる場合じゃないって、これはまじでやばいよ。」 普段あまり喋らない間柄なのに、どうしたっていうのか?
「もう授業始まるし、あんたの英語の成績の方がよっぽどやばいじゃないの?」
「松島なら、どうせ来るの3分は遅れて来るって。」 確かに英語の松島は来るのは遅いが、
「興味ないって。」 今度こそと思い、前向いて授業の準備をした。
「だーれだって、後ろから目隠しされたら、絶対に身近に知ってる人の名前云っちゃ駄目だって。云ったら刺殺されるってよ。」 しつこい上に、案の定くだらない。
「はいはい、そうですか。」 そう云ったところで、松島が来た。
放課後になって、2年2組の教室を出て、3年3組の雄作を迎えに行った。雄作は元野球部のキャプテンのイケメンで、夏の大会が終わってすぐに引退した。だから、私もマネージャーを辞めて、今は仲良く帰宅部だ。
「暑いね。」 学校を出ると、半端ない日差しだ。
「そりゃまだ9月なったばっかだしな。」
「あの頃はもっと暑かったはずなのに、ちっともそうは思わなかったな。」 大会中のことだ。
「気持ちがそれより熱かったからな。」
「まじで惜しかったね。あそこで鷺岡がエラーしなかったら、勝ってた試合なのに。」
「もうあんま責めんなよ。あいつにはまだもう1年あるんだし、頑張ってもらわねえと。」
「元キャプとしてはそうだね。」
「でもまさか、浜路まで辞めるとはな。」
「雄作がいない部にいたって、しょうがないじゃん。」
「優秀なマネージャーがいなくなって、あいつら可哀想。」
「あいつらじゃあ、誰がマネージャーにいたって全然無理だよ。あんなのに付き合ってるほど、私だって進路のこともっと考えないとさあ。」
「はああ、俺と一緒にいたいからじゃあなかったのか。」
「もう、意地悪。まあそれは確かだけどね。」
「で、勉強の方はどうなんだ。英語苦手なんだろ?」
「ああー、そうだあ。」 雄作の一言で、英語の宿題を机の中に忘れて来たことを思い出した。
「何だよ、急に。」
「ごめん、忘れ物。ちょっとここで待ってて。急いで取りに行って来るから。」 そう云って、もう駈け出していた。
「気を付けて行けよ。」 雄作の声が聴こえる。
急いで教室に戻ってみると、誰もいなかった。すぐに机の中の忘れ物を取り出している時だ。突然誰かに後ろから目隠しされた。その瞬間、絵里香=隣の席のうざい女の言葉が頭をよぎった。
「だーれだ。」 少し声を変えてる気がしたけど、雄作だ! 雄作は、2年の教室に来たら必ずって云っていいほどこれをするんだ。そう云えば絵里香が雄作のことを好きだと聞いたことがある。この瞬間、あれは絵里香の嫉妬による戯言だと思った。だから、迷わずいつもの様に、
「雄作!」と答えた。 その瞬間、右の目だけが開けられ、右側に振り向こうとした時、背中に鋭い痛みを感じた。そっちの方に右手を持って行こうとすると、熱い液体が流れているのを感じて、その手をさっと目の前に持って来る。
❝血!❞
「残念、はずれえ。」 その声と共に又別の場所=腰や背中に次々に痛みが走った。
❝嫌ー!❞ 痛い! 苦しい! 目が暗くなる。 頭が!
強い衝撃が、身体が床に倒れて打ちつけた痛みと感じて、何もかも消えて行く・・・・
きっと、この手のただ恐怖だけを描くみたいなのは、最初で最後だと思いますが、この作品だけは全力で恐怖ばかりを描きたいと思ってます。まだまだ深みに入って行きます。ありがとうございました。




