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誓いの果て

誓いの果て -黒き華-

作者: チーズ

  私ね、養子に出てからずっと利麻が嫌いだったよ


  いつも利麻ばっかりが幸せになる。


  養子に出た時の約束なんて、忘れちゃったよ


  ねえ、お願い


  私よりも幸せになんてならないで--




  薄暗い施設の1室。

  私の目の前には双子の姉である利麻がいる。

  離れたくない。

  私は涙を流しながらそう呟いていた。

  すると、利麻は無理したように笑う。

  笑ってるつもりなんだろう。でも、私には分かる。私と利麻は2人で一つだよ。顔だって瓜二つだし、考えてることだってすぐに分かっちゃうもん。

  「うん! 絶対に迎えに行くから!」

  無理してお姉ちゃんぶってる利麻に笑いかける。

  辛い時くらい、辛いって言いなさいよ。今では、たった1人になった家族なんだから--


  手を繋いで、2人は笑う。


  こんな日が、今日で終わるなんて考えたく無い。


  だから、私はいつかまた会える日を妄想した。


  遠くなって行く施設を車の中から眺めながら、新しく始まる毎日にワクワクしていた。


  終わりなんて、見えていたのに--



  私を引き取ってくれたのはお爺さんだった。

  優しくて優しくて、甘えてばかりだった私。

  お爺さん家はそれなりにお金持ちで私は好き放題遊んだ。

  そして、高校生になったある日。

  お爺さんが病で倒れて、あっけなく死んで行った。

  人間とは脆い物で、前の日まで笑顔で私にお金を渡してきたお爺さんはもう2度と動かないそうだ。私が好き放題遊んでるとき、お爺さんは何を考えたのだろう。

  お葬式には大勢の人が来てくれた。

  お爺さんに家族はいなくても信頼を寄せてくれる友達や仲間がいた。

  私には、そんな人いない。


  そして、自分が最低の人間だった事をまもなく知る。


  お爺さんの遺物を片付けていると、通帳が見つかった。

  中身を見てみると、貯金は0に近かった。

  はじめの方は、何千万という感じに貯金されていたのに、毎日のように下ろされる貯金でどんどんお金がなくなっていた。

  その理由は明白だ。


  私が遊び呆けていたから。


  それでもお爺さんは私を見捨てなかった。

  でも、それは優しさだったのだろうか。

  注意もせず、やりたい放題やらせるのが優しさなのだろうか。

  その時初めて、お爺さんを恨めしいと感じた。

  (こんなやつ、死んで当然だ。)

  自分でした事を棚に上げ、お爺さんを批難した。

  しばらくして、学校も行けなくなり水商売をするしか私には道がなくなっていた。

  学校を中退し、年齢を誤魔化してキャバクラで働いた。

  もともと顔は良かったおかげですぐに店のNo.3まで上り詰めた。やろうと思えば、No.1だって取れたと思う。だが、店に出勤する度に思うのだ。利麻にこんな姿、見せたくないと。

  キャバクラでNo.1の妹を利麻は胸を張って自慢の妹だと言えるのかと。

  私と利麻は太陽と闇だ。利麻が幸せに笑えば、笑う分だけ私が不幸になる。もういっそ、笑ってくれなければいい。そう願った。そして、利麻の私を呼ぶ声と無邪気な笑顔が私の頭に蘇る。いつもいつも世の中の事なんて知らないというように笑う彼女。そして、その笑顔を憎む事しかできない私。

  だんだんと嫌になる。

  たった1人の家族を恨み、家族になろうとしてくれた人を蔑み、こんな所で働いている理由をいつも誰かのせいにしている私が嫌になる。

  これ以上自分を嫌いになれば、私が壊れる。

  そう感じていた毎日に、光がさした。


  「大丈夫?」


  夜の街を歩く私に見知らぬ彼は笑いかけてくれた。

  その瞳は私を闇から救い出してくれた。

  彼と出会ってからは毎日が楽しかった。

  「なんで、私に声をかけてくれたの?」

  2人でベッドに横たわりながらそう話した。

  「好きだった人に瓜二つだからだよ。本人かと思った」

  私の求めていた答えとは違った答えだった。

  運命を感じたからとか、一目惚れだったからとかじゃなかったんだ--

  私は現実リアルを知った。

  私が見てきた全ては幻想だった。

  私と瓜二つの存在なんて利麻しかいない。

  「今は、君が好きだけどね。いつか、結婚しよう」

  彼はそう言って、私の頭を撫でる。

  それなら何故、今すぐに私を手に入れてくれないの?

  こみ上げてくる思いを口に出せるはずも無く、私は目を閉じた。


  ごめんね、利麻--


  私、最低だ


  いつも自分のことしか考えれて無い。


  約束、破っちゃうね


  醜い妹でごめんね


  でも、お願い--


  私以上に、幸せにならないでよ--


  誰かに愛されることが幸せなら、私達、ずっと幸せなはずなのに、どうしてこんなにも虚しくなるの?


  「好き」って言われる度に生きている価値を見つけてないとダメなの--


  今は、貴方の涙と彼の優しさに甘えさせて--

利麻とはまったく違う人生を歩んだ美陽。

利麻を光とするならば美陽は漆黒--と言った所かな?

「白い華」に比べて、「黒き華」は書きやすかった!たぶん、自分とリンクするからでしょうね。とりあえず、「誓いの果て」は利麻と美陽が恋をした「彼」目線を書いておしまい--かな?それまでお付き合いください

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― 新着の感想 ―
[良い点]  陰と陽、二人だとそうなりやすいです。 [一言]  好きな人はまさか・・・・・・・。
2016/04/17 11:15 退会済み
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