第九話 スキンヘッドが隊長
本日二話目!
ジュンはアリア、トーデルと一緒に前の世界で言うと、リビングのような場所へ案内された。結構、広くて何十人も入れそうだった。
暫く待つと、扉から隊長と呼ばれた男が現れた。続いてメンバーである男女が7人も出てくる。
他にもいるみたいだが、偵察組は外へ出ており、今すぐ顔合わせは難しいようだ。メンバーの中でジュンをロンと勘違いして驚く人もいたが、口を噤んだ。
「此奴が今回の騒動か?」
「ゲール隊長、この人はアリアの恩人であり、客になりますので騒動と呼ぶには相応しくないのでは?」
トーデルは先程と違って、敬語や礼儀を使って隊長と話していた。隊長はジュンをジロッと見て、鼻を鳴らした。
「ふん、解放軍に入隊したいわけでもないのに、ここに居るのは問題だと言いたいんだぞ。何故、此処に連れてきた?」
「ジュンお兄様は私の恩人です。帝国の人ではないし、宿のアテが無かったから誘ったの」
「アリアの恩人?ふん、山賊に襲われたと聞いたが、強襲組なら蹴散らせて当たり前だ。お前は今日から強襲組から外れろ」
「なっ!?」
アリアは強襲組から外れることに心外だというように、眉を吊り上げていた。だが、隊長はアリアのことを相手にしておらず、ジュンとトーデルに目を向けていた。
「二択だ。此処の場所を知られたには、何処かへ帰すにはいかねぇ。一つ目は解放軍に入る。二つ目は死ぬのどちらだ。選べ……」
「ジュンお兄様を殺すのは許さない!!」
アリアが前に出て、ジュンを庇う。周りにいたメンバーは躊躇をする人もいたが、全員が武器を抜いていた。ジュンが断ったらすぐに飛びかかれるようにだ。
その様子にジュンは…………
(トーデルの奴、全く役に立ってねぇじゃんか。どうするか…………)
表情を変えずに考え事をしていた。普通の人なら選択がない状態だが、ジュンは違う。
先程の二択を答えずに、話を切り替える。
「はぁ、お前は隊長だよな?アリアがまだ子供だから強襲から外して安全な場所にいさせたいのはわかるが、それは正解なのかな?」
「……何を言っている?実力に見合わないから、外す。それだけだ」
「はっ、表情は上手くやっているが、目にある甘さは隠せてねぇな。それに、周りのメンバーもアリアの身を案じていたのは確かだろう?」
周りを見るとギクッと動作を隠せてなかった人がいたのが見とれた。つまり、アリアの実力は認めているが、わざわざ自分から危ない場所へ行かせたいとは思ってない人がいたのだ。それも隊長も同じで、山賊相手に戦えなかった理由から強襲組から無理矢理外そうと、この部屋に入る前から決めていたことだ。
「……ち、だったら何だ?お前には関係ないだろう?」
「隊長、その話は本当に……?な、なら!絶対に、強襲組から抜けない!!私は絶対にお兄様の仇を討つの!!」
「そこがまだガキなんだよ!!お前が死んだら、悲しむ奴がいるってことを理解しやがれよ!!」
周りにいるのは本当の家族ではないが、家族だと思っているこそだから、まだ小さいアリアを早期に死なさせたくはないのだ。
アリアは理解しているのだ。だが、ロンお兄様を殺した帝国は絶対に許せそうもないし、人に任せて見ているだけなのも嫌だ。
その気持ちの押し付けが、お互いの意見が交わらない。それでは、拉致がいかないので、問題を掘り下げた本人であるジュンを睨んだ。
「アリアのことは後だ!今はお前のことだろうが!どっちだ!!」
「やれやれ、改めて聞くが、お前は隊長だろう?隊長なら、今の戦力で勝てることを考えるのが仕事だろう?」
「だから、なんだ?これ以上、話を逸らすなら…………!?」
ここでジュンが動いた。隊長であるゲールの元へ突っ込み、片手にはナイフを持っていた。反応出来たのは、ゲール隊長とさっき見張りをしていたシャオウという銃使いだけだった。
トーデルなら反応出来ていたが、何故ジュンがナイフを持って突っ込むのか理解出来なかったのだ。
シャオウが銃で頭を狙おうとするが、別に持っていたナイフが銃口へ刺さってしまい、撃てなくなった。
「貴様ぁぁぁ!!」
「遅い、先に抜いておくべきだったな」
ゲール隊長はすぐに剣を抜こうとしたが、ジュンの方が早かった。ナイフを持ってない手で拳をみぞおちへ打ち込み、前へ倒した。
そのまま、腕を捻って首にナイフを添えた。
「お前は敵の実力を見誤ったな。それで、隊長か?」
「ぐぅっ!?」
「隊ちょ……「動くな」っ!?」
ジュンからの威圧に、ゲール隊長の首へ添えられたナイフを見せられたことにより、皆は動きを止めた。
ただ、アリアとトーデルの二人は困惑していて、オロオロとしていた。
「よし、そのまま動くな。これで実力に見合わないと言えたな?」
「何のつもりだ?」
「俺に対してこの程度の武力で脅そうとするから、身の程度を教えてやろうと思ってな。俺が完全に敵だったら、お前だけじゃなくて、部下も全員死んでいたぞ?」
「貴様、これで勝ち誇ったつもりか…………舐めるな!!」
ゲール隊長は残った手でナイフの刀身がある場所を掴んだ。手から血が流れるが、これで急所を守れた。
「撃ちやがれ!!」
「ジュンお兄様!!」
銃を持った人の五人が、全方位からジュンを狙っている。頭だけではなく、的が広い胸や腹をも狙って撃った。
このままなら、ジュンに穴が開くと思われたがーーーー
「まだわからないのか?」
「なっ!?」
ジュンは赤いローブを伸ばして、自分の身体を包んで弾から守った。続けて、銃を持った人に向かって、全員が銃を払い落とした。
「これでも、無駄だと理解したかな?」
「何だと…………、これはまさか、魔道武具か!?」
魔道武具とは、神器のような武器や防具を作ろうとして、生まれた物である。神器ほどではないが、特殊能力と似た力が込められた武具であり数は少ない。
「神器に次いで、希少な魔道武具を何処で見つけやがった!?」
「これは友から貰った物だ。……で、理解したか?まだわからないようなら…………」
ジュンの眼から殺気の気配が現れ、このままだと誰かが殺されると理解したゲール隊長は隊長として、部下を無駄死にさせるにはいかないと判断した。
「チッ!わかったよ、俺等の負けだ!!」
「そうか」
ジュンは目を見て、心の底から負けを認めたとわかり、抑えるの止めてナイフを腰に戻した。武器を戻したのを見て、剣で攻撃しようとした人がいたが…………
「止めやがれ!そいつは、今から俺達の客だと認める!手出しは厳禁だ!!」
ナイフを掴んだ手に布を巻きながら立ち上がって、襲いかかろうとした部下を止めた。
「隊長!?もし、そいつが帝国のスパイだったら……」
「馬鹿か、テメェは。あいつがスパイをする必要がねぇだろ。何せ、一人で俺達を全滅に追い込むのは難しくはないだろ……」
「っ!?」
それ程の実力があるのを理解したゲール隊長は、手を出さなければ害はないと判断して客と扱うことにした。
「一つ聞くが、解放軍に入るつもりはねぇのか?」
ゲール隊長は自分達を一人で追い込める実力があるジュンを仲間に入れたいと考えていた。だが、ジュンの答えは、
「断る。帝国と解放軍の揉め事には興味がないね」
「…………そうか、帝国側に入ることもないとわかっただけでもマシだ。アリア、お前が世話をしてやれ」
「は、はい!」
アリアは状況が動きすぎて、ついて行けなかった節があったが、返事だけは返せた。
ジュンを案内すべく、ジュンとアリアは視線を感じる部屋から出て行くのだった…………
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