表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トンネルの向こうは異世界!?  作者: 神代零
1章 最初の友
4/33

第四話 夜咫烏

本日四話目!

 


 たった今、作られた『黒銀神器』である黒い銃の『夜咫烏ヤタガラス』。それが、ジェイドの手からジュンの手に渡ったのだった。




「『八咫烏』…………」

『付け加えるけど、八咫烏じゃなくて、夜の烏と言う意味で、『夜咫烏』だからねー』


 光を操って、文字を作り出した。×『八咫烏』→○『夜咫烏』と言うように。




「って、なんで八咫烏を知っているんだよ?」

『こっちにもいるからね』

「マジかよ…………って、漢字を使っている!?」


 日本で使う漢字がそのまま使っていたことに驚愕していた。




『漢字?あ、もしかして大陸共通語のこと?』

「まさかな、カタカナや漢字…………平仮名まであるんじゃないよな?」

『平仮名?』


 世界のことを知らないジュンは、『夜咫烏』を試す前に、聞くだけ聞くのだった。

 文字は平仮名、カタカナ、漢字と全く変わらなかったことに驚いたが、コミュニケーションの問題が無くなったので、良かったと思っている。


 次に、世界の名前を知った。

 大陸が四つもあって、各地に様々な種族の街がある。全ての大陸を纏めた世界のことを『アース』と呼び、ここは西の大陸で『トラベス』と言うらしい。

 アースは、今の時代を戦争時代と呼ばれており、西の大陸には『白銀神器』を貰い受けたルークディア帝国があり、東の大陸にあるアステミス王国にも『黒銀神器』を与えてしまったため、北の大陸と南の大陸も戦争に巻き込まれている状況になっている。


 西の大陸にあるルークディア帝国は全ての大陸に『覇』を宣言し、東の大陸にあるアステミス王国は魔物や他種族の殲滅を唄い、人間主義の王国である。


 今は、ジェイドが死んでから100年も経っており、神器は全てがアステミス王国やルークディア帝国にあるわけでもなく、巻き込まれた北と南の大陸にある王国や帝国が奪った神器もあり、さらにジェイドがまだ生きていた時、他種族である民族が持っている噂もあったようだ。

 それらは長い歴史の中で起こったことなので、ジェイドが全てを把握していないのも仕方がないだろう。




「面倒な世界に飛ばされたな…………」

『え、ええと、ゴメン』

「いや、終わったことだから、もういい。この世界には魔法はあるのか?」

『あるよ。ただ、才能が必要だけどね』

「才能か……、それはどうやって調べるんだ?」

『あれ、向こうの世界には魔法は無かったの?ステータスと念じれば、出るよ?』

「……………………俺はゲームの中にでも飛ばされたのか?」


 ステータスがある世界なんて、ゲームの中でしか知らない。遠い目で虚空を見ていた純だったが、ジェイドの呼び掛けに現実へ戻された。




『現実逃避していないで、ステータスを見てみてよ』

「……わかったよ、ステータスと念じればいいんだな?」


 純はジェイドの言う通りに、ステータスと念じたら、




 ーーーーーーーーーー


 ジュン・ヤガミ


 適正:『雷』

 称号:『夜咫烏の主』、『暗躍する者』

 特殊能力:『直感』


 ーーーーーーーーーー



 ゲームのように数値が並んでいるということはなく、ジュンの適正、称号、特殊能力だけが並んでいた。恐らく、ジェイドが言っていた魔法の才能とは適正のことを指しているだろう。




「雷?」

『お、あったんだね』


 その後、ジェイドの説明によると適正はわかっているだけでも七種類はあるというらしい。

 その七種類とは、『火』、『水』、『土』、『雷』、『光』、『闇』、『空』になる。


 ジュンは雷の適正を持っており、魔法の訓練をすれば、使えるようになる。魔法を使えるようになるためには、魔力と言うものを理解していないと話にならない。




『まぁ、魔法の訓練は自分でなんとかしてね。私は魔法の適正がないから、使えないし教えられないからね』

「あれ、光を操っていたのは、魔法じゃないのか?」

『うん、この宝樹の能力でね。今はそれよりも『夜咫烏』の能力を理解して貰わないとね』


 ジュンの新たな力となるNo.4の『黒銀神器』、『夜咫烏』の能力が明らかになる。




『夜咫烏は銃の形をしているけど、三つの型がある。そして、エネルギーにするのは魔力ではなく、自分の心。つまり、感情の力だと言えるね。さて、私が教えられるのはここまでだよ』

「ジェイド?」


 あっさりとした説明にジュンは訝しんだ。さっきまで詳しく教えてもらったのに、急いでいるような説明だったから。




 しかし、その理由はすぐにわかった。




「な!?」

『あはは、もう時間がないからね』


 ジェイドの光を包んだような身体だったが、今は少しずつ光が消えているのだ。




『最後に迷惑を掛けたお詫びに、夜咫烏とは別のものをあげよう』


 ジェイドがジュンに向かって手をかざすと、着ていた黒い服と防弾チョッキが光に包まれて、この世界にピッタリな服に作り変えられていた。今のジュンは黒の服に、赤と黒の装飾が付いたローブのような物に変わっていた。




『良い物を着ていたね。そのローブなら、銃ぐらいは簡単に防げるし、衝撃を和らげる効果が付いている最高の防具になるよ』

「…………厨二臭い格好だが、お礼は言っておこう」

『ははっ、構わないよ。私の身体はもう限界みたいだね』


 ジェイドの脚がもう消えており、そのまま下半身が完全に消えそうになっている。




『最後にお願いがあるけど、この宝樹を『夜咫烏』で跡形もなく消して欲しい…………』

「なんでだ?」

『この宝樹は、たまたま見つけたものだけど、『宝樹セラフィティム』と言って、生き物を生き返らせる効果を持つ』

「なら、破壊しない方が皆のためになるんじゃないか?」

『いや、それは簡単なことではないんだよね。何故なら、生き返らせた者をーーーー』






 不死者にすることが出来るからね






 この『宝樹セラフィティム』は、理から外れた存在であり、生き返らせた者を不死者にする効果がある。


 ジェイドはそんな物があれば、さらに世界がおかしくなってしまうのが読めるので、自分は使わなかった。ただ、宝樹のエネルギーを借りるだけで、意識を仮死状態になって試練をクリアした人と会って話せるようにしてあるだけで、ジェイドは決して不死者ではないのだ。その証拠に身体の限界がきたジェイドは消えかかっている。




「…………わかった。俺は不死なんかに興味がないし、不死者が敵になったら、笑えねぇしな」

『そうか、頼んだよ』


 ジュンは夜咫烏を構え、トリガーに指をかける。




「最後に聞く。俺は向こうの世界では、悪だった。間違いなく、死刑になってもおかしくはなかった。そんな人にこの神器を渡して良かったのか?間違いなく、私欲のために使うぞ」


 そう言って、問いかけるジュン。だが、ジェイドの表情は笑顔だったことに、ジュンは呆気に取られてしまう。




『普通は自分からそんな事を言わないけど、ジュンは正直だね』

「そんな事……」

『いいんだ。その夜咫烏がジュンを主だと認めている。ジュンが私欲のために使おうが、それは君の物だから、好きに使って生きていくといいんだ。それが全てだ』


 平和を願っていた人の言葉ではないように聞こえるが、ジェイドは自分の願いを押し付けるつもりはない。

 平和を願う、それも私欲と同じであり、ジェイドも私欲のために生きてきたのと変わらない。

 だから、ジュンにも自分の私欲、願い、目標に従って生きていて欲しいのだ。

 後は顔だけになったジェイドに向けて、ジュンも微笑みを浮かべて見ていた。




「……やっぱり、お前は変な奴だな」

『ははっ……、変な奴と言うなんて、ヒドイなぁ』

「だが、感謝はしている。この世界で最初の友を心地良く、天へ送り返してやろう」

『最初の友か……。嬉しいよ、ありがとう…………』


 心の力をエネルギーにする夜咫烏は、感謝という優しくて暖かい感情が込められた。







 そして、引き鉄が引かれた。







 ドバッーー!と大きな音を立てて、白い光が銃口から放たれた。

 ジェイドごと宝樹セラフィティムを光の放流が飲み込み、煙が晴れた後は地面が抉れた状態で何も残っていなかった。

 銃を下ろし、消えた場所をじっと見るジュン。




 これが、最初の友との出会いと別れになったのだった…………







どうでしたか?感想と評価を待っています!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ