第二十五話 王国の事態
はい、どうぞ!
テレサと名乗った王女様、そんな人が何故ここにいるのかわからないが、ジュンが取った手は…………
「そうか、自称王女様か」
「は?」
「用はこれで終わったな。アリア、行くぞ」
そう言って、アリアの手を繋いでここから去ろうとする。自称王女様である変人にこれ以上関わらないようにと配慮だ。
「ちょっ!自称王女様って何よ……待ちなさいってば!!」
「チッ」
ローブを掴まれて、逃げることが出来ず、舌打ちを打ってしまう。話をして説き伏せてから離れるしかないかと覚悟を決める。
「離してくれないか、自称王女様?」
「それよ!私のことを知らないの!?」
「生憎、今日にここへ来たばかりだからな」
「今日、来たばかり?なら知らないのは仕方がないと思うけど……初めて会う人にその態度は失礼じゃない?」
テレサは今まで、こんな態度で接されたことがないのか、頬を膨らませていた。ジュンはどうやって説き伏せてやろうかと考えていたら、アリアが質問をしていた。
「貴女はどうしてここに?」
確かに最もな質問だろう。仮にも王女様なら護衛も付けずに、自治が悪いスラム街へ一人で来るなんて、普通はありえない。だから、何かの理由があってのことだと思うが。
その質問にテレサは歯噛みしたような表情で直ぐに答えられないでいた。
「そ、それは……言いにくいことなんだけどね…………」
「おい、テレサ」
「……会ったばかりの女性にいきなり名前で呼ぶのは如何かしら?」
「そうか、名前が嫌なら自称王女様でいいな?おい、自称王女様」
「それは嫌がらせですの!?」
ムキーと怒り、話がなかなか進まない。テレサはもういい!と言うように、言いにくかったことを話してくれた。
「…………私はクソみたいな王国を終わらせたいの。つまり、王様である私の父を殺せる人を見つけるために旅に出ようとしたのよ」
「…………お前だけで?」
見た所、旅に出ようとする荷物もあまりないし、先程の男達に勝てないのに、一人で旅に出ようとする。
王国の外に魔物がいるのを知らないのか?と言いたいぐらいにテレサは甘い考えだった。隣にいるアリアまでもテレサに呆れていた。
「貴女は死に行くつもりなの?」
「な、なんでよ?」
「貴女は一度も魔物に会わないで他の街に行けると思っているの?最近は、山賊もいるし」
「アリアの言う通りだな。そんな状態で行くなら、お前は一日も掛からずに死ぬぞ?さっき襲われても抵抗出来なかったのが証拠だ」
「うっ……」
テレサはジュンが言っていることに反論出来ず、下唇を噛み、黙るしか出来なかった。
「それに、王様の暗殺だと?他の街に行っても受けてくれる奴は余りいないと思うぞ?リスクがデカすぎるからな」
「なんで、父親を殺す人を探そうとするの?家族なのに……」
「…………今日、来たばかりの貴方達にはわからないことでしょうが、ここはどんな状態か知っているかしら?王国の半分が…………、スラム街なのよ!!」
上から見れば、わかりやすいが、王国と壁を挟んで二分にされている。大金持ちが住む区域、貧乏が住む区域の二つに。
それは、テレサの父親であるメルデア王国の王様がそうしたのだから、この国は格差の激しいことになっているのだ。
「私の父は神器を手に入れてから、変わったのよ……」
「神器だと?」
「えぇ、五年前だったわ」
王様が変わったのは五年前からであり、この状況も同じ五年前から始まった。
テレサの話によると、神器はフードで顔を隠した男が持ってきて、テレサの父に渡ったのだ。そこから、物欲な性格に変わってお金を集めることになったのだ。国を潰したら意味がないので、国の半分だけを重税を掛けて、他は軽くする。そうすれば、どうなるか?
半分は苦しみ、また別の半分は悪になった王だろうが、それを味方する人が増えた。
そこから変わって、メルデア王国は格差の酷い国となる。
テレサは父親の変わりように神器が原因だとわかっていたが、父親であるダリュゲル国王は神器を手放そうとはしない。他の人に助けを求めようとしても、王城の中にいる人は全てがダリュゲル国王の味方であり、テレサは下手に動けなかった。前からいたテレサの味方はダリュゲル国王の味方に変わったり、異議を申し立てて、追い出されたりで最後にはテレサは一人になってしまった。
テレサが我が娘だろうが、邪魔をするなら斬り捨てる命令を出すことも躊躇はなくなっている。
もうメルデア王国にテレサの味方がいなくなったので、テレサはある決意をする。
他の街に行って、父親であるダリュゲル国王を殺してくれる人を探そうと。だが、ダリュゲル国王は神器を持っているため、それに対抗できる人を探さなければならなくなる。そんな人はこの国にはいないのはわかりきっているので、他の街に行くことに決めたのだ…………
「だから、他の街へ行こうと決めたの」
「神器で性格が変わるか……………………あいつがそんな物を作るとは思えんがな」
「ジュン?」
「いや、なんでもない」
小さく呟いていた部分は二人には聞こえなかったようで、アリアは顔を傾けていた。
「で、警告を発したが、それでも行くのか?」
「いえ、その必要はなくなったわ」
テレサはジュンの目を見てきた。ジュンはすぐに理解して、面倒事が近付いて来やがったなと心の中で溜息を吐いていた。
何故、他の街へ行く必要がなくなったのか?それは…………
「ジュンと言ったかしら?貴方に王殺しの依頼をするわ」
テレサ王女は、偶然に出会ったこの国の住民ではないジュンへ依頼をするのだったーーーー
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