第二十四話 ローブの女性
はい!続きです!
アリアは助けを求めている声が聞こえ、すぐに声の上がった場所へ向かっていた。
初めから高い場所にいたのもあり、屋根を伝って走っていたアリアは声が上がった場所へすぐに着いた。そこにはここの街には似合わない綺麗な白いローブを着た人とそれを囲むスラム街の男達が六人もいた。
「金の物を寄越せ!」
「グヘヘっ、お前の身体もな!!」
「貴方達は……恥を知りなさい!!」
「恥だと?そんな物で腹が膨れるわけねぇだろうが!!」
ローブを着た者の声から若い女性だとわかる。何故、場違いそうに見える女性がここにいるのかわからないが、アリアはロンの教えに従って助けることにする。
屋根の上にいたアリアは3階ぐらいの高さがあろうが、躊躇もなく、飛び降りたのだった。
「やめるの!!」
「え、貴女は!?」
急に上から現れて、女性の前に立って守るように刀を抜いていた。
「なんだ、このガキは?」
「グヘヘっ、可愛い子じゃねえか!お前も頂くぜ!!」
「危ない!早くここから逃げなさい!!」
「大丈夫!」
アリアは男達に刀を向けて、威圧を放っていた。一瞬、威圧にビクッとしたが、その刀を見て笑い出した。
「うはははっ!こんな刀で斬ろうと?」
「錆びてんじゃねぇか!!」
アリアの容姿、刀の状態から脅威ではないと判断したようだ。アリアは警告を発するが、男達は2人を囲むように回り込んでしまう。
このままでは、女性を守りながら戦うことになってしまう。兵士でもないただの物盗りなら”守衛”を使えば守ることが出来ても追い払うことが出来ない。戦おうとしても、女性を”守衛”無しでやるにはキツイと思っていた。
「……貴女の威圧から只者ではないのはわかるわ。自分自身は自分でなんとかするから、私のことは気にしないで」
「でも……」
アリアはわかっていた。女性には戦いの心得がないことに。今まで逃げていたことが証拠だ。
どうするか考えていたが、その時間は与えられなくて男達が襲い掛かってきた。
「ぐべぇっ!?」
「アリア、勝手に一人で先へ行くな」
「ジュン!!」
ジュンが襲ってきた男の一人を上から飛び降りて踏みつけていた。その状況に他の男達は驚いて動きを止めていた。
「き、貴様!!何者だ!!」
「ん、俺か?その少女の保護者だが?」
「さっさとヒデの上から退きやがれ!!」
ヒデと呼ばれた男は動いていないが、死んではいない。ジュンはどうでも良いように、無視してアリアに話をしていた。
「見ていた所、この男達はお前の実力を見抜けずに襲っていたで間違いないな?」
「うん……」
「まぁ、見た目は可愛らしい少女にしか見えないから仕方がないだろうしな」
可愛らしい少女と例えられたアリアは嬉しそうに頬を染めていたが、ジュンは既に男達へ視線を向けていたので、その表情は見ていなかった。
「アリア、やり方を教えてやるよ」
「え、やり方?」
「そうだ。まず……」
ジュンは一瞬で男の懐へ入り、顔を殴り飛ばした。殴られた男は殴り飛ばされて、木箱へ突っ込む。
「テメェ!」
ナイフを取り出してジュンに刺そうとするが、腕を掴まれて柔道のように背負い投げで地面に叩きつけ、次に向かってきた男の鳩尾へ拳を当て、顔が下がった隙に膝で顎を打ち抜く。
「こっちの実力をある程度、見せてやること」
続いて四人目、五人目、六人目と殺さずに無手で倒していく。男達が倒れている所にジュンは見下ろす。
「まだやるか?」
「ひっ!?」
「うぁぁぁ!!逃げろ!!」
「勝てねぇ!!」
最後に殺気混じりに威圧を放つと気絶した男を抱えて逃げ出した。
「この様に、ある程度の実力を見せてやれば、簡単に追い返せるさ」
「成る程……、あ、助けに来てくれてありがとう」
「構わないさ」
ジュンはこれで終わりだと言うようにスラム街を抜け出そうと帰り道に向かおうとした時にーーーー
「ま、待って下さい!何故、こっちを見ないのですか!?」
「…………面倒事は勘弁だからだ」
「面倒事って、間違ってはいませんが御礼ぐらいは言わせてくださいよ。助けて頂き、ありがとうございました」
「御礼を言うなら、アリアに言うんだな」
ジュンはアリアを助けに来ただけだから、御礼を言われることではないと言っている。女性もそれもそうかと、アリアに御礼を言った。
「ありがとうね。複数の男達から守ろうとして」
「い、いえ。ジュンが来てくれなかったら大変なことになっていたかもしれないので」
もし、アリアが戦ったら一人ぐらいは死人が出たかもしれないし、まだ神器の力を使った手加減はまだ難しいのもあり、守りながらになると厳しかった。
「いいから、御礼は素直に受け取りな。俺だけだったら無視していたしな」
「本心をズバッと言いますわね……。貴方は人が襲われているのを見て、なんとも思わないかしら?」
「思わないな。面倒事は避けたかったし、お前もただの娘じゃないんだろ?」
服装や振る舞いを見て、ジュンは貴族ではないかと判断していた。ジュンにしたら、貴族は面倒事しか運ばない存在だと認識していた。前の世界でもお偉い方はそうだったからだ。
「そこまで見破るとはね…………」
女性は頭に掛けていたフードを外して、聞いてもない自己紹介をし始めた。その自己紹介でジュンは珍しく呆気に取られることになる。
「私はメルデア王国の王族、第一王女のテレサ・エージェリアと言いますわ」
助けた女性は貴族とかの生半可な地位ではなく、まさかの王女様でした…………