第二十二話 旅の始まり
お待たせました!
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真っ白な世界、霧で真っ白に塗りつぶされているような場所にて、一人の少年がいた。側には数人の男性がいて、手を繋いでいた。
前には夫婦の男女がいて、その表情は良いものではなかった。そこに、少年から質問を投げかけられる。
「ママ、パパ。この人は誰なの?」
手を繋いでいる男性を含め、側にいる男性のことは知らない。ママと呼ばれた女性は悲しそうな顔をして教えてくれた。
「その人達は***の新しい家族になるわ。私達には家族でいる資格はないから…………」
「すまない……」
パパと呼ばれた男性は、謝りながらママの手を引いて反対の道へ行こうとする。
「ママ、パパ……?ママーーーー!!」
少年が何回も二人を呼び込むが、振り返らずにそのまま行ってしまう。走って追いつこうとしたが、手に繋がれた手によって、それは遮られる。その間に二人の姿が見えなくなって行く…………
「ママーーーーーーーーー!!パパーーーーーーーーーーー………………」
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ジュンはゆっくりと眼を開いて、身体を起こして行く。周りはさっきまでいた解放軍の拠点にある部屋の一つ…………ではなく、森の中にいた。野宿をしており、巨木の洞窟と言える場所で寝泊まりをしていた。巨木の中にあるその影はジュン一つだけではなく、隣には小さな影が見える。
「あまり見なくなった夢を見ることになるとはな……。これもこいつがいるせいか?」
その小さな影とは、解放軍にいるはずのアリアであった。隣には長い黒髪を束ねた少女はグッスリとよく寝ている。まだ陽が上っていない時間、ジュンはアリアを起こさないように身体を起きあげてから、さっきまでのことを思い出していた。
トーデルと帝国の偵察部隊を全滅させた後のことだ……
「お前には世話になったな」
「宿を貸してくれたその御礼だと思えばいい」
ジュンはまた解放軍の拠点で一泊して、翌日にはここを出ようとしていた。周りには解放軍のメンバーが揃っており、皆がジュンを見送りに来ていた。その中にはジョバンニやチェリーの姿があった。
ゲール隊長は深傷を負っているが、立つには問題はないようで、代表として御礼を言ってきた。そこまではいい。だが…………
「なんで、アリアが荷物を持って、俺のローブを掴んでいるんだ?」
「うみゅ?」
アリアはジュンにポンポンと撫でられて、目を細めていた。その顔は嬉しそうだった。
「あぁ、アリアが決めたことなんだから、アリアに聞けよ」
「私はジュンに着いて行く……」
「お、お兄様はやめたんだな?」
「ジュンはお兄様みたいな人だけど、本当のお兄様じゃないから……」
アリアはジュンのことをロンお兄様と重ねていた節もあり、仇を取れて泣いたことから吹っ切れたようだ。
さらに、ジュンに着いて行くのはある理由があってのことからだ。
「私はジュンの見て行く世界を見てみたいの」
「……俺が進む道は血みどろのような道だろうと、着いてくるつもりか?」
ジュンは帝国と違って、弱者を貶めて見下すことはしないが、場合によって必要なことなら殺すことに躊躇はない。弱者や強者であろうが、敵と見なした時は逃すつもりはないのだ。
「うん……。それでもだよ」
「……なら、俺からは何も言わない。だが、お前らはいいのか?同じ解放軍だろ?」
「あぁ、それは心配ねぇぞ。元から解放軍の本部にはアリアが解放軍に入ったと伝えてないからな」
「神器を持っていると、使えていなかった時なら取り上げられてもおかしくはなかったし、今にしては覚醒したのがわかると前線に出してしまうからな」
「苦渋の選択だけど、ここにいるよりも強いジュンと一緒にいた方がいいわ」
ここの解放軍は数人に減ってしまい、本部は解体して他の解放軍へ配属してしまうのはわかっている。その時、アリアがまだ解放軍にいたら神器を使えると知ったら戦争へ出される可能性が高い。
だから、アリアの望むようにジュンへ着いて行くことが一番の選択だと判断したのだ。ジュンなら無理矢理にアリアを戦わせることはないだろう。
「はぁ、配属までの戦力は大丈夫か?無事なのはジョバンニとチェリーだけだろ」
よく見ると、ゲール隊長と他に生き残ったメンバーは腕を吊りしたり、松葉枝をついている人もいた。配属はすぐに行われるわけでもなく、時間がかかるのだ。それまでに自分の身を守れるのかと思ったが、ジョバンニが槍を取り出して胸を張っていた。
「この『魔弾槍』だっけ。これがあれば、自分の身を守るぐらいは出来るさ」
「何処に行ったかと思ったが、お前がネコババしていたんだな……」
「いいじゃん!?お前は神器を持って行くんだろ!?」
トーデルが使っていた『白絶』は、ジュンが取り上げてあり、この前にアリアから貰った魔法の袋に入れてある。魔法の袋は中の空間が広がっており、沢山の物を入れることが出来る。アリアが預かっていたロンの物だったが、ジュンに渡して使ってくれた方が良いと考え、昨日の夜にくれたものだ。
ちなみに、『白絶』を使えないか嵌めてみたが、魔力の糸が出なくて金属の部分が錆びていたことからジュンには使えないようだ。
「まぁいい。それはやるよ」
「ははー、ありがとうございます!」
「似合わないわね!!」
ジョバンニは槍を持ち上げて、礼をするがチェリーは似合わないとからかっていた。
「で、お前はこれからどうするつもりだぃ?」
「そうだな、ここにいる奴らだけで秘密にするなら話してもいいが……」
「おう、本部にも伝えねえよ。お前は解放軍じゃないんだからな。皆もいいな?」
皆が頷いたのを確認した後、ジュンのこれからやることを話す事に。ジュンの口から出た言葉で皆は眼を見開くことになったーーーー
「神器を集める」
ようやく陽が上ってきて、その日差しにアリアは眼を覚ますことに。さっきのことを思い出していたジュンは挨拶をした。
「おはよう、アリア」
「みゅ、おはよう……」
ジュンはアリアを撫でて、後のことを考えていた。何故、神器を集めるのか?
この世界では神器が頂点に立っていて、力がなければ死ぬしかない世界である。だから、力を集めようとする理由もあるが、一番の理由はジュンが持つ特殊能力の『直感』が集めた方がいいと訴えてくるのだ。
(今まで直感に従ってきたが、これはどうなんだろうな……)
神器を集めるということは、ルークディア帝国やアステミス王国に喧嘩を売ることに等しいことなのだから。
「まぁいい、もう少し歩けばメルデア王国に着くんだな?」
「うん、行ったことがないけど地図通りに進むならもう少しだと思う」
ジュンとアリアは今、近くにある王国を目指していた。ルークディア帝国やアステミス王国のように大きくはないが、大陸各地には様々な王国や帝国があり、その一つに向かおうとしていた。
「俺の旅はここからが始まるんだな」
ジュンは遠くに目をやるとメルデア王国だと思える街が見えているのだった…………
どうでしたか?
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