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トンネルの向こうは異世界!?  作者: 神代零
2章 解放軍に……
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第二十話 決着

はい、決着となります!

 


 赤い弾と青白い龍がぶつかり合い、お互いを削り合っていた。レーザーのように赤い線が伸びて貫こうとするに対して、膨大な質量を持った魔力の塊が激突しているような物で、押していたのは…………




「ふはははっ!膨大な魔力には勝てないようだなぁぁぁぁぁ!!」


 押していたのは、トーデルで”弦龍”の方だった。少しずつ”破魔弾”を喰らいながら前へ進んでいた。アリア達もジュンの方が押されているとわかり、冷や汗をかいていた。もし、ジュンが負けたら次はこっちの番なのだから。

 アリアだけは心配そうにジュンを見ていたが、その表情は心配から呆気に取られるような顔に変わっていた。何故なら、ジュンの表情はあまり変わっていなかったからだ。


 ジュンの方が押されているのに、表情は普通で慌てている様子はなかった。それに気付いたトーデルは膨大な魔力を操ることに顰めていながらも、微笑みを浮かべていた顔が眉を潜める表情に変わっていった。




「何、余裕を咬ましていやがる!!」

「余裕か、確かに今はお前の方が押しているかもしれないが…………」






 気付かないのか?と言われて、トーデルはようやく気付いた。”弦龍”が押しているように見えるが、実際はトーデルの方が押されていることに。




「なっ……!何故、”弦龍”の身体にヒビが!?」




 ヒビという表現は見た目がそうであり、実際はもっと細かい状況が今、起きていた。




「お前の技、”弦龍”だったな?確かに質も量、どちらも高いのが伺える。だが、それを維持するのはどうなんだ?今のお前は消耗しており、維持するのも限界ではないか?」

「ぐ、だが!それだけでは、ヒビが入るのはおかしい…………まさか!」

「ようやくそこまで気付いたか」


 ジュンが放った技、”破魔弾”は文字通りに魔力を破壊する弾である。いつも放っている殺気の感情で作られた弾ではなく、願望・・という感情から作り出したジュンが考えるような効果を持った弾。その弾は魔力を破壊したいという願望から生まれた魔力破壊の効果を持つ弾であり、心の力の消費が凄いほどに多かった。

 だが、その分だけ強い効果を発揮しているとも言える。トーデルが消耗していたのと合わせて、”弦龍”にヒビが広がって弾が魔力の龍を貫いた。




「そ、そんな……」


 精密に編み込まれた龍は形が崩れて、魔力が辺りに散発する。ジュンは心の力を大分消耗したが、体力は魔力を使う時と違って消耗していないので、身体はまだ動く。




「終わりだーー」

「ふ、ふざけるなーーーーぐっ!?」


 トーデルの心臓に向けて弾を撃ったが、気力だけで鈍い身体を無理矢理に動かして、心臓から右肩へズラしていた。ジュンはまだ諦めていないトーデルに感心していた。




「まだ諦めていないのか?」

「あ、当たり前だ……」


 トーデルは腰に掛けていた剣を抜き、動かない右手と右足を引きずりながらジュンを睨んでいた。その気力は素晴らしい程に強固だと言えるが、まだ余裕があるジュン相手には見苦しいのでは?と解放軍の皆はそう思うのだった。

 確かに、このままならジュンがトドメを刺して終わりだったが、ここで予想外の行動をしていたーーーー




「アリア、俺がこのままトーデルにトドメを刺してもいいんだな?」

「えっ?」

「えっ?じゃねぇよ、トーデルはお前の兄を殺した仇だろ。俺がこのまま、トドメを刺したらお前は気が晴れるのか?」

「待てよ!アリアがわざわざトドメを刺さなくてもいいだろ!?なんなら、代わりに僕がやっていい!」


 ジョバンニはアリアがわざわざ人殺しをやる必要はなく、ジュンがやらないなら、代わりに自分がやると言っているのだ。

 前に出ようとしたジョバンニだったが、アリアの出した手によって止められる。




「アリア……?」

「私がやる。ジュンお兄様から言われたからではなくて、自分がやりたいの……」

「しかし!」

「私は人殺しが初めてじゃないの。ロンお兄様について行って、山賊や盗賊などを殺したこともある」


 この世界では、犯罪を犯した山賊や盗賊類を殺しても罪に問われない。さらに、自分を守るために悪を殺すのは咎められることではなく、褒められるような行動になる。むしろ、盗賊や山賊ぐらいに勝てないなら、この世界で生きていくのは難しいとも言える。




「トーデルはロンお兄様を殺した仇なら、自分の手で解決したいの」

「…………」


 アリアの覚悟にジョバンニは何も言えないでいた。




「お前がやるんだな。トーデル、アリアに勝ったなら、この場は見逃してやる」


 アリアに勝ったら見逃すという言葉に目を見開くトーデル。だが、それはすぐに疑うような表情になる。




「……何をしたいんだ?お前は……」

「ふん、お前の諦め悪い所がここを切り抜けられるか見たいだけだ」

「……生き残ってやる」


 右手と右足が動かなかろうが、左手で剣を構えて視線でアリアを射抜く。トーデルは魔力を全て使っており、魔力の糸を一本も出せないが、アリアも体力と魔力を消耗していて長くは戦えないだろう。

 お互いは消耗した状態でも、目はまだ死んではいない。ここからは気力に頼った戦いになるだろう。




「うあぁぁぁ!!」


 先に動いたのは、トーデルの方だった。左足だけで地面を爆発させる程の脚力でアリアとの距離を詰める。




「はぁっ!」

「ぐぅ!」


 刀と剣がぶつかり合い、消耗だけではなく、重傷を負っているトーデルは痛みに顔を顰めていた。それに利き手ではない左手のもあり、押し込みはアリアが勝っていた。

 正面から打ち合うのは危険だと判断して、すぐに距離を取った。アリアも神器に認められており、トーデルと同様に身体が強化されている。息切れをしていようが、片足しか動かないトーデルに追いついて、切り裂こうと刀を振り抜くが、技術はトーデルの方が上で、うまく受け流されていた。出血が酷くて、トーデルの意識が薄くなってしまいそうだが、生きるのを諦めてないトーデルは歯を噛み締めながらアリアの隙を待っていた。


 トーデルは知っていた。アリアに致命的な弱点があるのを。

 それは、ジュンが指摘した癖で、アリアは始めに視線を向けた場所へフェイントを混ぜても必ずそこに攻撃する癖であり、弱点が。


 そして、この時がきた。トーデルのバランスが少し崩れた時、アリアはトーデルの首を見た。

 トーデルはその視線に気付き、好機が来たと本能が言っていた。




(首狙い!!)




 アリアはフェイントを混ぜた後、刀は首へ向かう軌道に乗っていた。トーデルは防いだ後に流れるようにカウンターで斬るつもりだ。


 トーデルから見て、右の首を守る軌道に剣を置いた。これで終わりだと口がニヤけたーーーー






 が、アリアの刀が落ちるように、本来の軌道からズレていった。




(なっ!?)




 ズレて行った先には、トーデルの脇腹がある。『白桜』の刀身は潰れたままだが、脇腹を狙われたら、トーデルにはそれを耐える体力もない。剣もすぐに動かせない。だが、トーデルはまだ諦めてはいなかった。






「ああぁぁぁぁぁ!!」






 撃たれた腕を無理矢理動かして、脇腹を守る形に腕を挟んできた。そのまま受けて後ろに逃げれば、被害は腕だけになり、まだチャンスはあった。だがーーーー





「な、なにーーーー!?」

「”守線刃”!!」


 刃が潰れた『白桜』の切れ味を上げるために、二枚の薄い盾が刀身を挟むように重なって刀身が出来たように工夫した。その効果は、トーデルの腕ごと上半身と下半身を真っ二つにする程になった。





「お、俺はまーーだーーーー…………」





 死にたくないと言い切る前に、息絶え、トーデルの最期になったのだった。









「はぁ、はぁ…………」

「どうだ?生きるために殺すではなく、仇を取る建前で自分のために殺したことに」


 今までは自分の身や周りを守るために殺したことは何回もあったが、今回は違う。自分が兄の仇を取るために殺した、実はそのままジュンが殺すことも出来た。だが、アリアは自分でやりたいと言った。

 それは仇を取るためだといえ、自分の欲望に従って殺したのと変わらない。初めて、自分の欲望によって人を殺したアリアはどう思ったのか?




「こ、この感覚はわかりません。憎い人を殺したから、嬉しいはずなのに、何故、涙が出るのでしょうか…………」


 アリアは涙を流していた。憎い敵だったが、その敵が短い間だったといえ、お世話になった人でもある。アリアはその人を自分の手で殺した。


 ロンはもしかしたら、アリアに仇を取って欲しかったかもしれない。もしくは、その反対か。

 どちらかを確かめる術はないのだから、アリアは自分の意思で仇を取ると決めた。それはいいが、今のアリアは泣いていて、どうしていいかわからなかった。




「わからないか、初めての感情だから仕方がないと思う。お前は背負いすぎたのだから、ようやく荷を降ろすと今みたいに感情がコントロール出来なくなるんだ。だが、その感情はいつまでも忘れては成長出来ない。その気持ちを忘れずに、今は本能に従って泣くといい」

「ジ、ジュンお兄様…………う、うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!」




 アリアはジュンの胸を抱いて、今まで溜めていた物が噴き出したように、森の中で泣き声が広く響き渡ったのだった…………







次で2章が終わりになります。


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