第十四話 偵察部隊
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解放軍の拠点に戻ったジュンは広い部屋に解放軍の者が集まっている中、目立たない隅の方でゲール隊長が壇上に上がるのを見ていた。
これから話をしようとした先に、ゲール隊長がこっちに気付いて、
「おい、客はここにいる必要はない。部屋に戻っていろ」
「嫌だね。話次第でここを出て行く可能性があるから、聞いていた方がいいだろ?」
「えぇっ!」
隣に立っていたアリアが驚きの声を上げて、ジュンを涙目で見上げていた。もし、ここへ攻め込まれるといった話なら、すぐに出て行った方がいい。解放軍に入ったわけでもないし、宿を借りただけなんだから。
「チ、まぁいい。話を聞いたらさっさと出て行け」
「やはり、そう言う話か」
ゲール隊長はもうジュンに関わらないで、緊急帰宅させた理由を話した。
偵察組からの話で、帝国軍がこっちの方向へ向かって歩いているということらしい。その帝国軍は戦争をするための人数ではなく、20~25人ぐらいしかいないが、『神器』のこともあるから、油断は出来ない。
「人数が少ないから戦争目的ではないのはわかるが、『神器』使いがいるなら話は別だ。何の目的かはまだ不明だ」
「こっちの方向へ向かっているなら、ここがばれたのでは?」
「しかし、人数が25人なのは少なすぎるだろ?」
「こっちの人数も少ないから25人は入れば充分かもしれないが、こっちの人数を知る方法があったとは思えない」
「いや……」
話し合いをしていた人が話を切り、ジュンとアリアが立っている場所を見ていた。
その眼は疑いの眼だった。
「俺が帝国と繋がっていると?」
「その可能性はある。違うか?」
前に銃を向けていたシャオウが代表として、ジュンの前に出ていた。アリアは喧騒な雰囲気を感じ取り、ジュンを庇っていた。
「今日まで一緒にいたけど、怪しいことはしてなかったの!!」
「だが、一時も離れてはいないと言えないだろう?例えば、就寝した時とかな……」
シャオウの言う通りに、一日中もジュンに着いていたわけでもない。僅かな時間でも、解放軍が見つけていない隠者がいて、情報を渡すぐらいは出来ただろう。
「で、仮にも帝国側だったとしても、俺がそんな面倒なことをする理由はないと思うが?」
「シャオウ、止めろ。悔しいが、ジュンの言う通りだ」
「ゲール隊長……」
「ジュンなら、ここにいる全員を殺すなんぞ、難しいことじゃないだろう……」
ゲール隊長は初日にジュンの実力を知ったため、スパイをする暇があれば、自分で皆殺しをした方が早いと理解している。
さらに、監視役のジョバンニやチェリーの話を聞いても、帝国と繋がっているとは思えなかったし、怪しい動きもしてなかった。
「そいつは、帝国とは関係ない」
「わかっているんじゃないか。ご褒美に情報をやろうじゃないか」
「チッ、何か知ってんのかよ?」
「これは皆も知っていると思うがな。森の中で光が立たなかったか?」
ジュンが夜咫烏で撃った光の柱のことであり、それが原因じゃないかと考えている。
「そうか、それを調べに来たと。確かに、向きも大体同じだな……」
「そういえば、何が起こっていたのでしょうね?私が見に行った時は抉れた地面しか無かったので」
チェリーがそう言った。ジュンが解放軍の拠点に着いた時、チェリーの偵察組は光が立った場所を調べに向かっていたのだ。
「……なら、あれは偵察部隊だということだな。よし、片付けるぞ」
偵察部隊なら、神器使いはいない可能性が高い。神器使いは殆どが戦争か国の守りに充てられるため、偵察だけに神器使いを派遣することは少ない。
「仮に、魔道武具を持っている奴がいても、シャオウの狙撃で先に倒せば問題はないな」
「お任せを」
ゲール隊長にしたら、今の状況はチャンスだと言えた。解放軍はまだ魔道武具は少ないので、戦力増幅のために偵察してきた部隊を強襲して奪い取ることも考えないと帝国に勝てる可能性が低いままなのだ。
(なんだ、やっていることは山賊と変わらないな。まぁ、俺には関係ないしな)
これからの作戦で話し合う解放軍をジュンは冷たい目で見ていた。ジュンも前に、同じようなことをしたこともあるので、言わない。ただ、この世界にいる人間も前の人間と変わらないなと思うのだった。
「俺はさっさと出て行くさ」
「ま、待って!」
もうここから出ようとしたジュンを止めたのは、アリアだった。
「ん、もう行っちゃうのか?少しぐらいはここにいたらどうだ?」
昨日ぶりに、トーデルが話しかけてきた。どうせ、ここへ来ないし、こっちを手伝わないならお留守番でもしたら?と言ってきた。
ジュンは解放軍と仲間だと思われると後が面倒だから、離れようとしたが、トーデルの言う通りにここへ攻めて来ないなら、お留守番していても問題ないように思える。
だが、ジュンは直感で嫌な予感を知らせていたので、ここからさっさと去ることに決めた。
「ジュンお兄様……」
「すまないが、関係はここまでだ」
涙目になりそうなアリアには悪いが、自分の直感に従うことにしている。
「おい、出て行くなら念のために、一日だけチェリーに見張らせてもらう。いいな?」
「無駄になるのが見えてるんだがな。まぁ、邪魔にならないなら、構わない」
「ゴメンね。ゲール隊長の命令だから」
これからジュンが帝国側の人と出会わない可能性はないと言い切れないので、念のために一日だけチェリーが着いてきて監視をさせるようだ。
アリアも着いていこうとしたが、ゲール隊長に止められる。
「待て、アリアはシャオウと一緒にいろ。強襲組に戻してやるが、常にシャオウと一緒にいろ」
「……わかった」
ここでは、ゲール隊長の命令は絶対である。アリアは断れないので、出て行くジュンを見送るしか出来ないのだった…………




