第十三話 戦闘訓練
本日二話目!
思ったより早く書けたので、投稿しました!
食料調達でアリアが騒ぐ場面があったが、食事は平和なものだった。今回は二人だけではなく、チェリーも一緒に食べていたが、特に何も起こらなかった。
食事を終わらせたら、解放軍は仕事を始める。仕事と言っても、特別なことをやるのは偵察組だけで、他は生活に必要な物を作ったり、食料調達をするなど、自分を鍛えるために戦闘訓練をしている者に別れることになる。
強襲組であったアリアは、戦闘訓練を受けるのが当たり前だったが、隊長の強襲組から外すという言葉を撤回されてないため、解放軍の戦闘訓練に参加することが出来ない。
だが、今のアリアにはジュンがいて、対人戦に向けての戦闘訓練を教授する約束をしていた。
「まず、お前の実力を見るから体術、刀術で俺に一撃を入れてみせろ」
「うん!」
拠点から離れた場所、戦いの邪魔にならないように草原まで行って、魔物がいないのを確認してから始める。側には、監視役として付いてきたジョバンニとチェリーがいた。
二人にしたら、監視のためだけではなく、ジュンの教えに興味があるようだ。
「ジュンお兄様、なんで無手なのですか?」
アリアは木刀を持っている対して、ジュンが無手だったことに眉を潜めている。アリア相手に武器はいらないと言われているように感じられているのだろう。
「ん、別に理由はないが…………強いて言えば、実力を測るなら無手の方がやりやすいだけだ」
「……わかったの」
アリアはジュンが本気でそう言っていることを理解したので、すぐ戦闘へ移行する。
アリアの兄であるロンから教えて貰った刀の捌きをジュンに叩き込むーーーー
「えっ?」
「ほら、もっと来いよ」
アリアの刀捌きは、すべて受け流されて全く当たっていなかった。続けて、鋭い動きでフェイントを織り交ぜたが、ジュンは手刀で木刀の腹を軽く打ち込むか、押し込むだけで最低限の回避を見せていた。
見ていた二人がほおー!と感心する程だった。
「はっ、はぁ!ハァァァーーーー!!」
「甘いぞ…………お、足技も使ってくるか!」
「避けられた!?」
武器を持つと、足の注意が疎かにする人が多いが、アリアは刀だけではなく、脚をも使って相手のバランスを崩そうとしてくる。
それでも、ジュンの体勢を崩すまではいかない。
「では、こっちの番だ」
「っ!?」
ジュンが攻撃してくることに、アリアは警戒で一瞬だけだが、身体を硬直させてしまった。その隙をジュンが見逃すわけがなく…………
バァンッ!!
いい音を鳴らすデコピンがアリアの額を打ち抜いた。ただのデコピンではなく、一瞬でアリアの懐へ入って行くスピードを使った突撃力を込めたデコピンである。
喰らったアリアはバランスを崩して、額を赤くして痛みに涙が出そうになっていた。
「い、痛そう……」
「ただのデコピンがあんな音を出すなんて!?」
デコピンの威力に目を大きくして、驚いていた。
「ほら、痛がっている場合じゃないぞ」
「あうっ!?」
また同じ所にデコピンをされて、アリアは倒れてしまう。
「はぁ、痛みで脚を止めるな。止めたら、最期だと思え」
「は、はい……」
「さらに、顔の近くを攻撃されそうになった時、目を瞑るな。敵を視界から消すのは大きな隙になりえるから、必ず敵を視界の中に入れ続けるんだ。勝つには、『見ろ』、『考えろ』、『動け』の三つが大切になると頭の中に叩き込め」
「わかりました!!」
倒れていたアリアは直ぐに起き上がって、良い返事を返していた。
「後、攻撃する時は自分の視線に気をつけろ。始めに見た敵の部位を狙う癖を直せ」
「え、そこまでわかったの?」
「僕にはわからなかった……」
長く一緒にいたジョバンニとチェリーはアリアの癖に気付いてなかった。フェイントを使っていたが、アリアは必ず始めに見た身体の部位を狙っていた。
そこから、アリアの悪い所を指摘していって、すぐに直せる所は直していった。
「アリアの資質は高いから、すぐに解放軍の中でも高い実力を持てるだろう……」
「は、はい!」
アリアはジュンに褒められたことに頬を赤くして、嬉しそうな顔になっていた。だが、ジュンの話には続きがあった。
「だが、神器の『白桜』を持つならそれらの可能性は潰れる」
「…………えっ」
ジュンの言葉に、笑顔から困惑の顔になっていた。その様子を見たジュンは呆れるような溜め息を吐いていた。
「当たり前だろ?お前はまだ『白桜』に認められていない。それはわかるな?」
「うん……」
そこはアリアもわかっている。元の保持者であったロンは、認められていたから、本当の力を与えてくれた。
だが、今はどうだ?
前のように刀身がピンクの模様が浮き出ておらず、潰れた刀身になっていて斬れない刀になっている。
ジュンはこう言いたいのだ。
このまま『白桜』で戦うのは自殺行為だと。
「お前の目的はなんだ?」
「…………ロンお兄様の仇である帝国を倒すこと…………」
「そうだ。目的があるのはいいことだが、それを達するにはどうすればいいかわかるんじゃないか?」
「それは!わかっているよ!!でも…………」
側の岩に立てている『白桜』の姿を見た。戦闘訓練では木刀を使うから持って来ないで、自分の部屋におけば良いのだが、アリアは持ってきた。
近くにないと安心出来ないと言うように。
「なら、次に戦いが起こったらアリアは死んでしまうな?」
「ジュン!!」
「言い過ぎだ!!」
二人が前に出て、アリアを庇っている。それを見たジュンは教育を間違えているな……と思った。
「ほう、お前達はアリアをこのまま出して、戦いで死なさせたいのか?」
「んなわけないだろ!」
「アリアは必ず戦いに出るぞ?眼を見ればわかるからな。なのに、『白桜』で戦おうとしている。それでいいのか?」
「だったら、戦わせなければいい!!私達が守るの!!」
その答えはジュンにしたら、間違いだった。ジュンはそう答えた二人を見下すような眼になっていた。
「二人は帝国が攻めてきたら、守る余裕があるのか?現実を見て言え。もうお前達に用はない」
「「なっ!?」」
ジュンは二人を無視して、アリアの眼を見る。
「お前の兄は何を想って、『白桜』を託したのか、考えたことがあるか?」
「えっ……」
その話は、解放軍の拠点に着く前の夜、アリアが寝てからトーデルに聞いたことがある。
アリアはロンから直接に『白桜』を託したわけでもないのだ。ロンが死ぬ際で近くにいたのはトーデルだったようで、ロンから『白桜』をアリアに渡すように頼まれた。
それはアリア達も周知である話であり、アリアにとって、『白桜』は切り離せない存在となっていた。
「『白桜』を託した兄は何を想って、戦っていた?」
「何を想って……」
そこが鍵だとジュンは思っている。だが、それはアリアが気づかなければならないことであり、これ以上は踏み込まない。
「ロンお兄様は…………」
アリアが答えを出そうとしていた時、拠点がある方向の森から解放軍のメンバーが現れた。その顔は慌てており、息を切らしていた。
「は、ハァハァ、き、緊急帰還だ!!」
緊急帰還、全員が解放軍の拠点に集まれと言う暗号である。つまり、何かが起こったという証拠だという事だ…………
何が起こったのか。次回を楽しみに!




