第一話 トリップ
この作品はトリップ系の話です。
勇者や魔王はいない世界ですが、読むには楽しめるので、宜しくお願いしますー。
本日一話目です!
ガヤ、ガヤ……………………
夜中、明かりは月の光だけで他の明かりなんてない時間。周りを見ても、木ばかりで街などは見当たらない。
そんな場所を歩いている者が何人かいた。その中の一人が音を出来るだけ立てずに歩きながら、手に持つ何かに向けて呟いている。
「こちら、021。後、10分でそちらに着く」
『こちら、014。そちらの状況は?』
「問題なし」
無線で先にいる仲間へ連絡をしていたようで、情報を交換し合っている。これからの任務で、人数が足りないと要請があったので、八神純がいるグループがそちらの任務へ加わることになったのだ。八神純は170センチぐらいで周りにいる仲間のより線が細いが鍛えられた身体をしている。日本人でありながらも、アメリカの国籍を持っている黒髪に黒目で顔は平均より上といった感じの少年である。
本来なら、純は休暇だったのに、急遽に任務へ駆り出されたことに怒りを覚えていた。
(チッ、人数が足りないだと?屋敷を襲うだけで、二グループも入れば充分だろうが!!)
先にいるグループは五人ずつの体制になっており、極秘特殊部隊と呼ばれる者は誰も精鋭と呼ばれる程に高い実力を持っているのだ。
その中にいる純はまだ未成年であり、16歳なのだが、特殊な経歴を持っていて、実力も高いのでここにいるのだ。
極秘特殊部隊などと大層な身分を持っているが、そのチームは非公開であり、国が表立って正式に認められたチームではないのだ。
このチームを作ったのは、アメリカのお偉い方であり、血生臭い裏の仕事を任務としてやらせている。今の任務も、山の中に建てた屋敷に元アメリカ軍人が住んでおり、ある理由から始末をするために、極秘特殊部隊が動いている。
何故、日本人である純がアメリカ人と混ざって、極秘特殊部隊にいるのかは、純の過ごしてきた経歴にある。
純は日本に産まれた生粋の日本人であり、夫や妻のどちらかがアメリカ人だったというのはない。親は何処にいるような、日本人の夫婦であって、特別なことはなくて、幸せな家族だと言えた。
だが、あの事件が起きるまではーーーー
「む?」
純は、一つのトンネルが目に入った。ただのトンネルなら無視しても良かったが、ここの山はこれから殺しに行く者の私有地なので、何かがあってもおかしくはないと判断し、グループのリーダーに話した。
「向こうに洞窟というか、トンネルがありましたが、どうしましょうか?」
「向こうに……?ここは私有地だったな……、逃げ道の可能性も考えなければならないか」
純が心配しているのは、そのトンネルが屋敷からの抜け道の可能性なのだ。調べて、何もなければいいが万一に備えるために、純だけがグループから外れて確認することに。
「調べたら無線で連絡、それからこっちへ向かってこい」
「了解」
純だけでトンネルを見つけた場所へ向かい、木の影から誰もいないのを確認してからトンネルに近付いた。
(古いな?補強しているのは、コンクリートだが、ボロボロで長年も使っていないように見えるな)
トンネルは車一台が通れる程度で、純から見てもおかしなトンネルだと思えた。トンネルへ続く道が全く見当たらず、昔は道だった跡がないのだ。
(トンネルは人の手により作られたのは間違いないが、道が見つからないのはなんでだ?)
考えてもわからないので、中に入って調べることに決めた。中に誰かがいる可能性も考え、明かりを使わないで拳銃であるレベッタを構えて、中へ進んでいく。
純は訓練により、真っ暗でも明かりがある状態と同じように見えている。
(向こうに明かりはないか。行き止まりだったら、戻れば…………っ!?)
この時は、進んでも先に光がないことから行き止まりだと判断していたが、急に向こうから光が現れて純を包み込んだ。少しずつと光が強まっていき、目を開けられないでいた純の意識が消えていくことを感じていた。
(な、何が…………れ、れんらくを……………………)
無線を手に持ち、連絡しようとしたが、先に意識が消えて無線を地に落としてしまう……………………
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ある昔、神の手を持った男がいました。
その人は何でも作れる人でした。
剣、刀、槍、弓、銃、薙刀、鎧、兜、籠手などと、戦うための武器や防具も作れました。
それだけではなく、裁縫や料理も上手で誰にも人気がありました。
何でも作れる人は、あることを思いました。
自分の国が平和にするために役立てることが出来ないか?と。
大陸には様々な種族がいて、一つに出来ないか?
闇から生まれる魔物から守れないか?
いつか、戦争がない世界を作れないか?
その結果、自分の国の王様から力を借りて、『神器』を作り出しました。
その数は50個になり、全ての『神器』は自分の国の王様へ献上しました。
これで魔物を駆逐して、皆を守れるように。
それが神の手を持つ男の願いだった。
だが、『神器』は魔物の駆逐に使われたが、それだけではなかった。
人間同士との戦争にも使われてしまった。
『神器』とは、選ばれた人に力を与えられる神の武器である。
それは普通の武器と違って強大な力があり、特別な能力を持っていました。
その『神器』があったせいで、様々な種族や人間の血が流れた。
正しい使い方をしてくれなかったことに悔んだ男は、別の国へ向かった。
自分の国とは別に大きな国へ向かって、また別の『神器』を作った。
始めに作った50個の『神器』は『白銀神器』と呼び、新たな『神器』も50の数を作り出して、『黒銀神器』と呼ばれる様になった。
これで、自分の国を止めて、平和にして欲しいと願った。
だが、人間は愚かであった。頼った国も魔物だけではなく、他の種族も殲滅することに動いた。
それだけではなく、お互いの国が『神器』を持っていることが気に食わないことで、『神器』を奪い合おうとする。
それで戦争が終わらない大陸が生まれ、他の大陸をも巻き込もうとしていた。
『神器』は平和のために作られた物だったのに、それが戦争の種になってしまったことに神の手を持つ男は自分の選択を悔んで、行方を眩ましたのだった。
死んだのか、行方を眩ましたため、その男の最期は誰も知らない…………
この話は、神の手を持つ男の話であり、この世界の歴史でもある。その歴史は、異世界から現れた少年によって、世界に変化が現れる…………
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「う、うぅっ……」
意識が元に戻る。何か夢を見ていたような気がしたが、思い出せない。
起き上がって周りを見ても、木だらけで後ろは先程、中に入っていたトンネルがあった。
(あれ、光が現れて…………いつ出たんだ?何故、ここに倒れて…………あ、任務は!?)
周りが明るいことに気付いて、もう陽が上に登っていることがわかって慌てた。
任務を放棄してしまったと顔を青ざめながら、無線を探して連絡しようとしたが…………
「ない、ない!?」
手に持った筈の無線がないことに気付いて、周りを探したが見つからなかった。あとはトンネルの中だけだが……
「どういうことだ?」
トンネルの中に行こうと思ったら、入口から五メートルの先はもう行き止まりになっていた。
夜中はもっと先があった筈だったが、進めないことや無線が見つからないことに純は行き止まりの壁に手を付けて項垂れてしまう。
(夜中のは暗かったからか?いや、しかし…………)
項垂れてばかりでは、状況を好転させることが出来ないので、すぐに切り換えた。
極秘特殊部隊は24時間に1回は本部へ連絡が必要で、連絡がなければ裏切りとして処理されることになる。今はまだ陽が高いから、今から街へ向かって電話を借りれば問題はない。
いや、任務放棄や無線を無くしたことに処罰を受けることになるのだが、それは仕方がないだろう。
「そう決まれば、近くの街へ行かないと…………あれ?」
トンネルを出た純は、夜中の時のと木の配置が微妙に違うように感じられた。
さらに、こんな木はあったっけ?と思うような木ばかりで疑問が膨らまる純。
(この木、葉っぱがおかしい……。4枚の葉っぱがバラバラに重なったような形は地球の何処にも無かったよな?)
おかしいのは、木だけではなかった。下にある草、花もそうだが、今まで見たことがないような物ばかり。それらの情報を纏める純だったが…………
(…………わからん)
考えるの諦めて、街があった方向へ向かって歩いていく純。これからの道が純の人生を変えるようなことが起きることを知らずに…………
はい、次にどうぞー。