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6話 授業

説明回となります。

苦手な方は飛ばして頂いても構いません!

もう少し上手く書けるよう努力いたします!

 翌朝、ユキを含め皆が並んでジェームスの部屋にいた。


「すまない皆、私はこれから長期の仕事に出る。留守番を頼んだよ?」


 いつもとは違う黒い服、一般的に喪服と呼ばれる服装に身を包んだジェームスは、そう言いながらネクタイを占めた。黒いハット帽をかぶり、杖を持つその姿は、まるでサーカスの司会者のようだった。子供達ははーいと元気良く答えたが、ユキは少し気になって聞いてみた。


「ねぇ、どこに行くのですか? なんの仕事なのでしょう?」


 ジェームスは動きを数秒止め、服装を整えるとユキの方を向く。そしてユキの顔を見てフッと笑った。


「内緒さ。もし私に何かあったら、食器棚の上にある封筒を読みなさい。」


 そう言って彼は出て行った。入れ替わるようにハワード市長が現れる。


「こんにちわ。いや、おはようか」

『おはようございます』

「……」


 ハワードはみんなの元気に押されて「おぉ、ホッホ」と少し驚き笑った。ハワードはカッターシャツに茶色のズボンを履いて、靴は黒い革靴、深めの赤色をしたネクタイを占め、黒縁のメガネをかけていた。


「一体何をしに来たのでしょうか?」

「ふふふん、すまないね、お勉強の時間だ」


 そう言うと、ハワードは持っていた茶色の手提げ鞄を見せた。それに反応して子供達は


「やったぁ!」

「えー? やだなぁ」


 と、2つに別れてしまった。ユキは、元気のいい子ほど、勉強が苦手なのかなと苦笑した。


「今日は最初に、地理について話そうと思う。みんなしっかりついてきてくれ」

『はーい!』


 子供たちは元気のいい声を出して、廊下を走っていった。ユキはふぅっと苦笑して付いて行こうとする。しかし、服の裾を掴まれて逝く手を阻まれた。振り返るとリーンが微笑んだ顔でこちらを見ていた。


「…………」

「……あー、サナがいないから僕に押せっていうんだね。分かったよ」

「……ありがとう」


 ちょっと俯き気味にリーンはそう答えた。恥ずかしいのだろうか?とユキは首を傾げながら、彼女を教室へと連れて行く。その廊下の途中で、ついてきていたハワードは雪に話しかける。


「君は、本当に何も知らないのだろう?」

「はい……」

「今日の授業でここがどこか、今は何年何月何日なのか話すよ。しっかり聞いて理解しておくように」

「はいっ」


 雪は気合を入れて返事をした。ユキには興味があったのだ。今がどうなっているのか。テレビでは日常的なニュースしか流れていないため、世界がどうなっているのか分からなかったのだ。


「それと、メインは歴史だ。君はなぜ日本人なのかも含めて答えよう」

「ありがとうございます」


 廊下を歩き進み、突き当りを左に曲がって二部屋超えたところに教室はあった。机と椅子、黒板まで綺麗に完備されている。

 ユキはおぉーっと感嘆の声を漏らして、教室に入った。


「ユキ兄おそーい!」

「ユキ兄さん、席は前列の一番左ですよ」

「あはは、ごめんルナ。ありがとう、サナ」


 そう言ってユキは教室に入ると、リーンの席はどこかと探した。


「あ、リーン姉はこっちだよ!」


 ヴァイオレットはそう言って、後ろの席を指した。ユキは車椅子を押して彼女を席へと運ぶ。そして、ユキはそのまま自席へと向かった。

 教科書を知らないユキは、椅子に座ったまま不思議そうにあたりを見回していた。そんなユキに、隣に座っているルーイはこう言う。


「ユキ兄、机の中の教科書とノートを取り出すんだよ」

「教……科書……?」

「この本だよ!あとこれがノート!で、こっちが―――」


 そう言いながら、ルーイがどんどん机の上に必要なものを出していく。エンピツ、ケシゴム……ユキは興味津々で、一つ一つに目を輝かして見とれていた。

 ハワードははぁ、と溜息をついて「これは長くなるなぁ」と呟く。そして、ユキに使い方を教えるのであった。



 それから少しして、ユキは鉛筆の使い方を学んだ。文字の書き方は元々分かっていたようで、そこまで教える必要は無いようだった。ハワードは一つ、咳払いをすると、チョークを取り出して黒板に向かう。


「あ、今日は何年何月何日かなルーイ君」


 ユキ達に背を向けたままハワードは聞いた。


「うーん、2198年の8月ぅ……ええっと……18?」

「19日よ! まったく、ルーイはお馬鹿さんなんだから!」

「い今答えようとしたんだよ!」


 ルーイはヴァイオレットにそう言って、恥ずかしそうに19日を連呼した。リーンやサナ達はクスリと笑い、ハワードは「分かった分かった、そうだ19日だ」と年月日を書き始めた。


「さて、では今私達がいるこの国の名前は?ヴァイオレット」

「はい! United States of Americaです!」


 元気良く答えるヴァイオレット。彼女の目の輝きから察するに彼女は地理が大好きなようだった。ユキはそれを聞いてノートに取る。


「そう、アメリカ合衆国。この国は今でも世界一の軍事力、経済力を持っている」


 カカカッという音を立てながら黒板に文字を書く。ユキたちはそれを丁寧にノートに執った。


「この間にやっていたニュースの付喪神研究所は、マサチューセッツ州にある。工科大学と手を組んで、工業製品のアイテム化で一般の方にも使えるように使用としているんだ。が、君達は理解しなくてもいい」

「はーい」


 すると今度は、少し破れたアメリカ合衆国の地図を出す。ハワードは棒を持って、地図の中央を円を描くようにして指した。


「ここら一帯は今はどうなっていたかな?サナ」

「はい、付喪神の呪術的高エネルギーによって、核よりも強力な爆発が起きて、今はクレーターになっています」

「おぉ!よく知っているね。予習してきたのかな?」


 ユキは良くはわからないが、核などの単語と、今の状況についての説明をメモしていく。


「それでは今、アメリカでまだ無事な州は何ヶ所かな?サナ」

「35から40ヶ所です」

「よろしい」


 さなの答えにそう言うとハワードは名前を書き始めた。


「今、クレーターになっている州はこのくらいかな」


 書かれていた名前はすべて、クレーターになっている州のものであった。雪はそれを忙しくノートにまとめる。

 州州と書き、雪はふとある疑問を持った。


「ここは、そのクレーターから近い町なのですか?」

「そう。この街の惨状から分かる通り、この町は爆心地からそう遠くはなかった。ちょうどすぐ隣の町が、半分クレーターの崖で消えている」


 そう言って、地図のある州を指した。そこにはミズーリと書かれている。ユキは書きながらハワードの話を聞いた。


「このミズーリ州のコロンビアがこの町の名前だ。当時、この街全ての家は全壊し、ひどい光景が続いていたよ」


 ハワードは言いながら書く。心なしか、その声は少し哀愁があった。みんなは静かにノートを取る。カタンと黒板の下にあるチョーク置き場にチョークを置くと、ハワードはみんなに振り返った。


「この天災、史上最悪な世界天災はロシア、中国、フランス、ドイツアフリカにアメリカ……とまぁ、主要国を含め、世界全体で被害を与えた」


 そう言って一息つく。子供達はウトウトし始めていた。しかしハワードは気にせずに話を進める。この話について子供達はもう既に習っており、ユキの為の授業だからだろう。


「そして、日本は沈んだという。最も被害が大きい国だ。アメリカでは『日本人特区』をつくり、天皇や、首相、他の日本人はそっちに移ったらしい」


 ハワードは一瞬ユキを見て、話を続ける。


「ここで、日本人がどういう立ち位置なのか確認しようか。では歴史に入る。みんな起きて聞きなさい」


 手を2回叩き、みんなを起こす。慣れた感じからするに、過去にも何回か起こしたようだ。そう考えたユキはくすりと笑って話を聞く体制になる。


「さて、日本があった頃、最初の付喪神が日本で発見された。それは何だったかな?ルーイ」

「ふぇ!?」


 突然当てられて、身体をビクッと震わせた。


「え、えぇーっと……」

「もう、ルーイ! 青銅の剣よ! せ・い・ど・う・の・つ・る・ぎ!」

「わ分かってるよ! ほら、あれだろ? 日本の三種の神器ってやつだろ!」


 ヴァイオレットにまた指摘され、ルーは慌てて答えた。

 ハワードは少し笑いながら「そのとおり」と言う。


「三種の神器……鏡、勾玉、そして青銅の剣。この3つが最初に付喪神が現れた道具で、勾玉はアイテム化して神秘的な道具(もの)となり、鏡は神獣化して青銅だけが人間化したままの状態だった。そして、その剣に『触れ』、その剣を振った」


 カカカッと黒板に絵を描く。丸い円の形をした鏡の絵、見たことのない丸みを帯びた(まがたま)の絵、そして剣の絵。その絵たちの下に矢印を書いて、順に、犬か狼のような、動物の絵、 見たことのない丸みを帯びた(まがたま)に輝きを入れた絵、そして剣と赤で描かれた人の絵が描かれた。


「それに反応したかのように、全世界で付喪神が現れ、人々は彼らを研究し利用した。道具のようにね。見た目は人間でも、本来道具として使われる彼らだ。皮肉だったろう」


 続けて剣を振っている人と赤で描かれたヒトの絵、それによって世界で時計やカップ等の物の絵と、その隣に人間状態の付喪神を描いた。


「そうして人は、付喪神を『もの』として扱い続け、罰が下った」


 そう言うとハワードは、世界の付喪神の絵の内から、1箇所に爆発した絵を上から描いた。ユキは口をポカーンと開けて、その絵をまじまじと見ていた。振り返ったハワードは、ユキに手が止まっているぞと指摘し、教科書を手に取る。


「どこの国だったかな……確か、スペインだったかな? スペインは消滅し、ポルトガルは島国となった。その一件で人間と付喪神の関係は平等でありつつも、少し付喪神が上になった。しかし、付喪神と人間の両方を巻き込む戦争が起きた」


 そこまで言うと、黒板に向かいながら静かに言う。


「……第三次世界対戦、いや、第一次付喪神大戦だ」


 黒板に少し大きめの字で書かれたその字に、ユキは衝撃を受けた。ハワードは淡々と説明をしていく。


「人は付喪神を、付喪神は人を利用し合う、大きな大戦が起きたんだ。起こしたのは中国だった。だが、大国がそれに便乗し、世界全体が戦争状態になった。世界が、付喪神が大戦へとつなげた。繋げてしまったんだ」


 皆は聞き入って、不安そうな顔をする。


「その大戦の終局、核を使おうとする動きがあった。そんな最悪な状況の一歩手前で大戦は終結することになった。その、終わらせたのが―――日本だ」

「ユキ兄の国?」

「あぁ、そうだ」


 ルナの問にハワードは短く答えた。


「日本の『対付喪神特別戦闘班』が、三種の神器の破壊、及びそれによる全ての付喪神の効果の一時的無効化を計った。が、三種の神器の破壊は失敗し、核以上の高威力、広範囲の空間破壊エネルギーによって、日本の領土全てが消滅。その天災によって色んな国の付喪神が、まるで反応するかのように、連鎖的に空間破壊を起こした。その結果が、あのクレーターだよ」


 今言った色々な単語を黒板に追加していく。ユキは、サナの言った『自分の国』という言葉が少し気になった。ハワードはそれを、知らない単語に詰まったのかと勘違いをして、空間破壊エネルギー等の説明をし始めた。


「そうだな、ユキは空間エネルギーについて知らないだろうし、説明をしよう。空間エネルギー保存の法則が12年前に発表された。

 量子コンピュータの中でしかあり得なかった4次元の存在が、現実にも現すことができるというもので、※付喪神の力を通して出なければならない、※空間ごと出なければならないという条件が色々あるが、四次元世界に物質を圧縮し放り込むことができる。三次元で生きる我々には、四次元の世界を見ることも発見することもできない。だが、付喪神ならその四次元を利用することができる」


 一気に言いつつ、内容を簡潔にまとめて書く。ユキはそれを書きながら、しっかりと覚えた。


「付喪神が突然何か物体を出したりするのはそういう事だ。確かにそこにその空間はあるのに、見えない。その際に使うのが空間エネルギーだ。で、空間破壊エネルギーについての説明に入る」


 バッと教科書を出すと、また黒板に向かう。


「ある空間を圧縮し、四次元に仕舞う。ここまでは空間エネルギーを使用した、収納のようなもんだ。が、そこからその空間に元々あった四次元空間の物質を融合、分解して、物質を全てエネルギーに変える。その際、空間を三次元世界に繋げることでその一点のエネルギーが耐え切れなくなり、素粒子レベルの物質、エネルギーが放出し空間ごと破壊。そして、大爆発を起こす。その時のエネルギーが空間ごと破壊することから空間破壊エネルギーと呼ばれる様になった」


 ユキ達は固唾を呑んでハワードを見る。


「空間の圧縮放出時には、前兆のようなものがある。ある一点に集まるように歪みが生じ、ねじれ、四次元の扉を作る。まるでブラックホールのようなんだ」


誤字脱字誤文乱文御免!

発見次第、連絡をください。

感想も受け付けてます!

それと、この話以降は亀更新になるかもです。

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