3話 付喪神
「そろそろ、僕の質問の答えを聞かせもらえないですか?」
ジェームスおじさんを前に、ユキはそう切り出した。ジェームスおじさんはわかったよと言ってから、机の上に手を置いた。
「三十年前、付喪神というものの存在が確認された」
「付喪神って?」
「付喪神は日本が産んだ神様だよ。かつては192カ国ぐらいは国があった。その内の一つの国の日本だ」
「へー……」
「少し詳しく話そう。付喪神はね、そこら中の《物》に宿っていて古く生きたもの、つまり大切に扱われてきたものが付喪神として現実に現れる。それが付喪神だ」
「古く生きたものが付喪神として現れる……」
「そして、その付喪神は神様として、素晴らしい能力を持っていたんだ。その能力で沢山の人を救ったし、守ったんだよ」
ジェームスは少しだけだが、どこか誇らしげにそう話していた。ユキはその本当にあったのか分からない話を真面目に聞いていた。
「だがね、その能力を人間はエネルギーとして扱いだしたんだ。最初はまだ良かった。でも、段々有難味というものを感じなくなってきた人間たちは付喪神を酷使し、罰を受けたんだよ」
「罰……」
「国一つが消えた。それが付喪神と人間との平等な関係、まぁ付喪神が譲歩した形でそうなって、平和になったんだ」
「……? それが事件なんですか?」
気になったユキはそう聞いた。それにジェームスおじさんはそれが事件だよと答える。だが、ジェームスおじさんは話を続けた。
「だけどね、ある人が大きな大事件、テロと言ってもいい事を犯したんだ。そのせいで、付喪神の中でも一番偉い神様が天罰を下したんだ。世界は変わり、荒廃した所もあれば何者も居ないゴーストタウンとなっていた」
目を瞑り、苦々しく話すジェームスおじさん。その姿はまるで、体験してきたかの様な辛い雰囲気を漂わせていた。
その雰囲気を感じ取ることで、ユキはテロの恐ろしさを理解した。それは果たして、どんなものだったのか。
「いいかい? ユキ」
「は、はい」
いきなり話しかけられたので、ユキは吶りつつ返事をした。ジェームスおじさんは真剣な表情でユキの手を握り、こう言う。
「付喪神の現れた《モノ》を、【アイテム化】してはいけないよ?」
「あ、アイテム……化……?」
ユキの表情を見て、しまったといったような表情をする。だが、ジェームスおじさんは話を続ける。
「ごめんね。アイテム化って言うのは元に戻す、つまり付喪神の居ない状態にするという事だよ。それは、付喪神の死を意味しているんだ」
「だから、罰が……」
「難しいが、違う方法でアイテム化することも出来る。それは、付喪神を元に戻す、つまり付喪神が確かに存在しているが、その《モノ》としてそこに封じているという事。まぁ、これは付喪神の許可が無ければ神罰が下るだろうから、無闇にする人はいないだろう。大きな研究機関等では、より効率よくアイテム化出来るように頑張っているようたけどね」
長々と話し続けてしまったねと、ジェームスおじさんが言って、話が終わる。まだ聞きたい事がユキには残っていたが、子供達がユキと遊びたいと言い出したのでそちらに向かう事にした。
「ありがとうございました。 では、子ども達の相手をしてきます 」
「すまないね」
ジェームスおじさんはそう言って申し訳なさそうな顔をする。ユキは大丈夫ですと答えると、和室の方へ向かった。ジェームスおじさんは、子ども達と遊んでくれているユキを見つつ、その後ろにあるテレビのニュースを視聴している。
内容は、アイテム化の研究だ。G8各国共同開発の研究成果がそろそろ出ると流れている。この研究が成功すれば、付喪神の負担を減らし、更に宿っている物質、つまり本体の損傷なども更に軽減されるとのことだった。
だが、ジェームスおじさんは外を見て、こう思う。アイテム化するモノ達は、パートナーの為に自分を殺す。故に、アイテム化する付喪神なんて、居ないんじゃないのか、と。
「その研究が、悪い方向へと流れなければ……良いのだが……」
誤字脱字誤文乱文御免!
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それと、この話以降は亀更新になるかもです。
あと、ここの設定がいまいちな感じがするので後程に修正するかもです。