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家庭科教師  作者: 怪塊廻
1/3

家庭科教師1

 暑い。気温は三十度を超え、今年一番の気温になると天気予報では言っていた。しかしまだいいほうだ。恐らく午後からは更に気温が上がる事になるだろう。

 蝉の大合唱が頭にくる。一匹一匹捕らえて踏み殺してやりたい気分になってくる。

 身体の傍を、プールバックを持った小学生ぐらいの子供が走り抜けて行った。楽しそうに笑い声を上げながら笑顔で走っていく。全く気楽でいいよなと苦笑いしながら心の中で呟く。

 何でこんなクソ暑い中に学校に行かなきゃいけないんだ。葛西幸雄は心の中で教師に対しての文句を言い続けた。

 男子にしては長い髪を荒々しくかきむしる。もっと短くしていれば熱がこもらないからいいのだが、これは幸雄のスタイルだ。髪にはワックスなどは特につけておらず、自然な形にしている。生まれつき羨ましがられるほど髪の毛がサラサラな幸雄はこの髪形を小学校の頃から続けている。

 顔も悪くはなく、ほとんど非の打ち所はないのだが、唯一悪いところといえば少しばかり非行の道へ走っていることだ。

 中学校に入ってからつるむようになった友達が原因で非行の道へ少しばかり入ってしまっているのだ。

 教師に対してあんな言葉遣いをするようになったのも中学校に入ってからだ。中学校に入ってなかったとしてもあの家庭科教師が居れば教師に対してだろうとあんな言葉遣いをしていただろう。

 今日は補習授業のある日だ。本来ならば補習授業には行かなくていいはずだった。しかし今年から入った新任の教師のせいで補習を受けなければならなくなってしまった。

 幸雄の成績は平均以上で別に悪くはない。むしろいい方の部類に入る。国語、数学、社会、理科、英語の五教科で、補習授業に来いと言われたことは一度もなかった。

 他の音楽、体育、技術、家庭科は補習授業自体がなかった。もちろん音楽、体育、技術の補習授業があったとしても呼ばれることはない。

 しかし幸雄は家庭科だけがどうしても苦手だった。あれほど意味の分からないものは存在しないと思っているほどだ。

 裁縫も料理もできない事はないのだが、やる気が起きないためやっていない。授業でもやる気が起きないため手を抜いていたら見事に補習授業に呼ばれてしまった。

 去年までは補習授業はなかったのだ。それなのに・・・・・・。

 今年入って来た家庭科教師の三潴馨が家庭科の補習授業を下ほうがいいと提案したため、補習授業が出来てしまったのだ。

 三潴は女性教師のくせに熱血教師で、授業態度が悪かったり、忘れ物をした生徒には二十分近くの説教をする。

 その間は各自でその日の授業内容を予習しておいたりするのだが、その説教のせいで授業がろくに進まないことがある。

 三潴には嫌われる要素が数え切れないほどある。まず教師として面倒なところ。

 太っている。

 ダサい丸渕メガネをかけている。

 化粧が濃い。

 息がくさい。

 喋り方がうっとうしい。

 少しでも間違えれば文句を言いながらやり方を教えてくる。

 集中していなければどんな状況であろうと注意してくる。

 とにかく三潴は面倒くさい。さっさと他の学校へ行ってくれればいいと何度思ったか分からないほどだ。

 幸雄以外の生徒だってそう思っている。幸雄の通う学校でそう思っていない生徒は誰一人としていない。

 本当は今日の補習授業だって休みたかったのだ。夏休み中になんで三潴の顔なんて見なければいけないのか。しかし休めば家に電話をしてくる。そこまでして休ませないようにさせようとするのだ。

 ため息を吐きながら顔を上げると、少し行ったところに学校が見えてきた。更に大きなため息を吐く。

「ああ!もう!面倒くさい」

 大声で叫ぶと、幸雄は全力で学校に向かって走り出した。さっさと行って、さっさと終らせて帰ろうと考えたのだ。それに三潴の顔を見るのは少しでも短いほうがいい。

 坂道にさしかかった。坂道を全力疾走する。

 すると後ろから自転車のベルの音が聞こえてきた。立ち止まらずに、首だけを後ろに向ける。後ろから手を振りながら自転車で追いかけてきているやつがいる。

 初めは誰だかわからなかったが、近付いてくるに連れてそれが誰なのかがはっきりしてきた。

「一か・・・・・・」

 ()(はら)(はじめ)。幸雄のクラスメイトで成績はかなり悪く、学校一ひょうきんなやつということで有名だ。

 幸雄とは違い、髪はスポーツ刈りにしてありすっきりしている。顔は人間というよりはサルに近い。眉毛は太く、唇も厚い。一言で言えばかっこ悪いのだ。しかし幸雄は一の明るいところに惹かれて仲良くなった。

 一は幸雄の傍まで来ると自転車から降り、幸雄の隣に並んだ。

「幸雄も補習授業か?」

「当たり前だろ?家庭科なんて真面目に受ける授業じゃねぇよ」

「そりゃそうだ」

「お前は家庭科以外も真面目に受けてねぇだろ」

 一は照れたように頭をかきながら、

「とにかく、急ごうぜ。俺が家を出たとき八時四十分ぐらいだったから」

 補習授業が始まるのは九時からだ。遅刻すれば説教が待っている。

「やべぇ。急ぐか!」

 一は自転車に跨った。幸雄は再び全力で走り出した。その後ろを一が自転車で追いかけてくる。

 全力で走ればすぐに学校に着ける。さっきまでいたところから学校まではそこまで距離はない。二分あれば着けるはずだ。

 計算どおり、すぐに校門が見えてきた。最後のスパートをかける。校門をくぐり、玄関まで走っていく。

 一は駐輪場のほうへ向かっていった。

「先に行ってるからな!」

 一に声をかけて、校舎内へと入っていく。上履きに履き替え、廊下を走って家庭科室まで向かう。家庭科室は校舎の端にあるためそこまで行くのにも一苦労なのだ。

 一番近い道を通って家庭科室まで向かう。

 やっと見えてきた。何人かの生徒が家庭科室の中へ入っていっている。その中に交じって家庭科室の中に入る。


もし読んでいただけたのなら光栄です。

またこの続きを掲載していくと思うのでこれからも良かったら読んでください。

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