カスいだろ学園長なんだぜこれ
「率直に言うと僕は君を気に入った。」
「は、はぁ……?」
気に入ったというが、俺は何もしていない。100円を渡しただけで、それ以外は生意気な後輩でしかない。
「確かにお金をくれたのはとても嬉しい。しかしね、違うんだよ。僕は君と話していて感じるものがある。優しさだ。」
「優しさ??」
「そう、優しさだ。僕はね、それに応えたいんだ。だから僕は君への恩返しとして、この施設のことでなく学園のことを詳しく教えてあげようと思う。どうだろうか?」
少しばかりお節介だと思うが、とてもありがたいことにかわりはない。入学したてで右も左も分からないのだ。そしてこの先輩は信用できる。……思う。
「それじゃあ、その教えてもらえると助かります。」
「いいよ!じゃあまずここからだね。ここのシステムについては簡単だ。対戦ゲームのフリーマッチとランクマッチのようなものだ。」
「対戦ゲーム?」
この学園にあまり馴染まない単語が聞こえて少し驚いてしまった。
「そう、対戦ゲーム。やらないかい?」
「少しだけ。でも言おうとしてる事は大体分かります。」
嘘だ。生まれてからゲームに触れたことなんかない。しかし情報としては聞いたことぐらいはある。
「それじゃあ続けるよ、この学園の生徒にはポイントが割り振られていて、そのポイントの数で順位が決まるんだ。それで上からの十人を十傑って言うんだ。」
「十傑になると何かあるんですか?」
「十傑レベルになると持っている権力が違う。噂では一位の人は学園長と同じぐらいの権力があるらしい。だから十傑の間はこの街で好き放題できるってわけ。」
「なるほど。じゃあもし十傑の人たちが全員でクーデターを起こすこともできるってことですか?」
「理論上は可能だ。でもそれはないと思うな」
「理由を聞いても?」
「簡単さ。うちの学園長はいい人なんだよ(カスだけど)。信用できるし信頼できる(カスだけど)」
なんだ、何か変な言葉が聞こえたぞ
「その…学園長って性格が悪いんですか?」
「はっ!!君は思考を読めるのか?」
ビリビリ。と最初のナルシストキャラが徐々に剥がれていく音がする。
「まぁ学園長は性格が悪いわけじゃない。相談を聞いてくれるし、生徒への対応は手厚いしね」
俺もさっきに式で学園長を見たが、おそらく20代ながらも真面目で美的なオーラをだしていた。The仕事人みたいな普通の学園長だった。
「隼人君、彼女が何でここの学園長をやっているか知っているかい?」
なんだろう、学園長どころか教師になろうとする人間の目的はわからない。
「お金……とか?」
「ハズレ。死なないためだよ。」
「死なないため?それが学園長になる理由と繋がりが分かりません。それにそれがカスと呼ばれる所以も分かりません。」
「確かに改めて思えばそうだ。だが彼女の場合は度が過ぎている。彼女はこの国最大の権力者である紅魔堂の学園長を目指し、見事二十三才という若さでその地位に成り上がった。そしてその後、生徒を自分の兵として育て上げる計画を立てた。」
「つまりこの学園の唯一のルールである[強くあれ]っていうのは」
「彼女が安心して毎日を過ごすために作ったルールだ」
確かに保身のためだけといえばやり過ぎだと思う。思うが
「た、確かに、保身のためだけと言ってしまえばそれはやり過ぎだと思います。でも!自分の目的のために行動してしまうのは人間の性です!!それなのにカスなんて呼ばれ方あまりにも学園長が可哀想じゃな、
「彼女はとても下品だ。」
「え………」
「そして、失敗した生徒を煽ってくる。」
……う〜〜ん、学園の長である者が生徒を煽っていいだろうか?
「まぁ少し行き過ぎたスキンシップだと思えば」
「これは噂に聞いた話なんだけどね、彼女が散歩しているときに子供が打ったホームランボールが飛んできてね、ちょうど近くにいた生徒の首根っこ掴んで盾にしていたらしい。」
開いた口が塞がらない。思ったよりカスだった。
「というか先輩、何でそんな詳しいんすか?解説書でもあるんすか?」
「うん三巻まで出てる。うちの文芸部は優秀だからね。きちんとニーズに応えている。」
出てた。解説書出てた。三巻も。三巻も出てる。学園長どんだけエピソードあんねん。
「クーデターが起こらない理由としてはもう一つあるんだけど、彼女は不死身らしいんだ。」
「不死身?」
「あぁ不死身。さらには分身までするらしい。だから最強の十傑とはいえ彼女と真正面から戦うのは分が悪い。これも噂だけどね」
普通の女性に見えたが、能力者を集める学園の長となると当たり前に強いらしい。
「だいぶ話がそれてしまったけど、十傑について質問はあるかい?」
「その…十傑の人達も普通の生徒なんですよね?それじゃあ俺達みたいに普通にそこら辺にいるんですか?」
「うんいるね。ていうかさっきまで十位の戸張くんと三位の柄本くんが戦ってたよ。」
まじか。さっきまで存在すら知らなかったけど十傑の人たちが戦っていたなら見ておきたかった
「あぁでも一位の……確か神座って人は居ないね。」
「一位がいないんですか?」
「一位の権力は絶大だからね学園放って国外に旅に出てるって噂だ」
「国外に!?」
それぞれの国は壁に覆われていて隣接していない。国同士があまり仲良くなく、他国からの人間を入れることはない。つまりは不法入国だ。おまけに壁の外は自然のないこ荒野でかなりの距離がある。それを一人旅だなんて自殺行為だ。
「ちなみに二位の雲仙、六位の翼さん、七位の伊丹の三人は部室に籠ってるから会うのは難しいと思うよ。」
「最後に一つだけ。部活動をやるメリットってあるんですか?」
最初に聞いた時から気になっていた。普通の学園なら当たり前だが、ここは能力を育てて強くなるための学園。ならば部活動をやるメリットがはっきりと浮かんでこない。
「割と人それぞれなんだけどね。一応二つある。一つ目は部室がもらえるところだ。」
「この学園は授業がないぶん基本自由だ。ポイントを稼ぐのだって義務じゃないし、気が乗らないものだっているだろう。そういう人たちは部室でのんびり暮らしているのさ。」
戦うのは義務じゃない?確かに、能力を発現した時点でこの学園への入学は確定するから戦うのが好きじゃない人が戦うことを強制されることは少なくない。
「でも先輩、それだと十傑の中に三人も部室で籠ってる人がいるのはおかしいですよ。」
「それが二つ目のメリットさ。この学園では半年に1回のペースで部活動対抗のトーナメント戦が行われる。」
「トーナメント?」
「ポイントを賭けた大会ってところだね。そしてその大会でいい成績を残したチームは大量のポイントと賞金がもらえる。くっ……泣、賞金…賞金か僕も欲しいなぁ泣」
この人なんでこんなお金に困ってるんだろう……聞くと長そうだからいいや
「つまり、部活動対抗戦で勝ち続けるだけでも十傑になれる可能性はあるんですね。」
「まぁ、とんでもなく高倍率だけどね」
「ありがとうございます先輩。おかげで大体わかりました。じゃあ、その…一試合やりますか?」
「ふっ、ようやくか……あまり年下をいじめるのは趣味じゃないんだけどな……僕の本気を見せてあげよう」
あ、分かった。この人解説してるときが素面なんだな。ここで三十二円を投入ッ!!
「泣泣泣泣泣泣泣泣泣」
こいつどんだけお金欲しいんだよ………




