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神なきアラクレ  作者: 波多江の男
2/3

132円

 沢山の人がいる。彼らの纏う服に統一性はなく完全な私服だった。

 それもそのはず、この国一番の学園に決まった制服なんかはなく、お硬い校則(ルール)もない。かくいう俺も黒のズボンに緑のパーカーと人のことを言えたもんじゃないラフな格好をしている。

 能力者が集まる学園には大体制服がない。その理由は能力者である生徒かは能力者が持つ神力(しんりき)というオーラで区別がつけれるのが一つ。もう一つは戦闘の際にすぐ破れてしまうからだ。

 だから制服がなくても誰が学園関係者かは一目瞭然。

 今も沢山の能力者が近くにいる。

 そう、今日は入学式なのだ。いや、紅魔堂(ここ)の場合は式というより説明会だ。なので話自体は5分、10分で終わる。というか終わった後だ。

 今思い返しても不思議な気分だ。何もかも普通の学校と違う。授業はなく、体育祭や文化祭のような普通のイベントなどもない。あるのは能力者同士の競い合いのみ。説明されたことはそれだけだ。

 明日からどんな風に生きればいいのかよくわからない。

 まぁ、しかし暇だ。新しい環境とはいえ慣れるまでに時間がかかる。だから新入生が解散した後、俺は近くの公園にあったベンチでぼーっと空を見上げている。今日は雲が多い。でもこんぐらいの暖かさがベストな心地よさだ。

 「ふぁ…ふあ〜〜は〜」

 少し眠くなってきた。何もすることがないと退屈だ。

 「よしっ…少し探索するか」

 学園都市なのだから様々な建物がある。一般人には立ち入れない場所も紅魔堂の生徒なら入れる。

 あまりにも広いので地図を見ながらでないとすぐに迷ってしまいそうだ。

 そこから色々な場所をまわった。デパートや住宅街、この都市唯一の校舎。

 あと行っていないのは二箇所。戦闘用施設と部室棟。

 戦闘用施設というのは分かる。能力者同士で戦い合うのがこの場所での唯一の決まり事なのだから。

 しかし、部室棟といのはなんだ?ここが普通の学園だったら当たり前の場所(もの)だが、こんな学園に部活なんて意味あるのか?

 う〜ん……とりあえず戦闘用施設というのを見たほうがいい。俺は施設へと足を向ける。

 施設へと着き、まず驚く。さっき見たデパートの3倍ぐらいはあるぞここ。

 もらった学生証を見せ中にはいると俺と同じ生徒であふれていた。 ざっと50人はいるぞ。

 だが、おそらくはほとんどが新入生だ。だってなんかソワソワしてるもん。

 まだ上級生をはっきり見たことないが、今年の新入生は弱く見える。別に俺が強いってわけじゃない。いや少しは鍛えたし、多少はやる方だと思う。しかしこの国が誇る学園の新入生だと思うと彼らは少し劣っているように見えた。

 うーん。折角来たのだから1回ぐらい戦ってみたいが、あんな感じだと俺も思いっきり戦えないしなぁ。

 「あっ!」

 いた。いい感じの人が。堂々としている人が。きっとあいつとは思いっきり戦うことができる。そう思って、俺は壁際にいた男に話しかける。

 「どうも、こんちわっす。」

 「ふっ、僕に何か用かな…」

 な、なんだこいつ。自身に満ち触れているぞ。ナルシストか?

 「えっと、俺相馬隼人(そうまはやと)って言います。今日入学した1年っす。そのあなたは?」

 「金城満(きんじょうみつる)だ……2年生…僕と勝負したいのか……?」

 なんだこの自信。俺はとてつもない強者にケンカを売ってしまったのかもしれない。

 「いいだろう。シュミレーションかランクどっちがいい?」

 「そ、その今日来たばっかでよくわかないんすけど、どう違うんすか?」

「なんだ、そんなことも知らずに僕にケンカを売ってきたのか。だか、面白い。威勢のいいやつは嫌いじゃない。じゃほら」

 ?金城は「ほら」と言いながら手を出してきた。……なるほど。

 俺は差し出された手に握手をする。

 「違う!!からかっているのか!忙しい金城家の長男である僕がタダで説明するわけないだろう。」

 「ええ……金取るんすか!?」

 「嫌なら別の相手にすることだな。もっとも新入生に優しく説明してくれる上級生など探した所でいないがな」

 くっ、なんてケチなんだ。他の人にしてもいいが俺は既にこの人と戦うイメージをしていた。どんな能力でどんな風に戦うのかを楽しみにしていた。ちくしょう、卑怯な野郎め。

 仕方ない。と割り切り「いくらですか?」と先輩に尋ねる

 「いくらでもいい。しかし君がどんな人間かはそれ(金額)で判断させてもらう。」

 くそっ、俺に決めさせるとはなんて卑怯な。何円が正解だ。何円出せば満足してくれる。

 俺は慌てて財布を開き中身を確認する。小銭が132円のみ。

 くそっ!!なんでこんな時に限ってこんなカスみたいな金額しかないんだ!

 どうすればいい、全部渡したところで132円、132円なのだ。だが……

 この勝負俺の勝ちだ。普通の人間ならそのまま全額132円を渡すだろう。しかしあの男の態度、きっとあいつは金持ちだ。32円という5枚の小銭を渡してもかさばるだけ。そう5枚という厚みがあっても100円玉1枚には勝てない。ならばここは思いやりの精神だ。

 ふっ、いくら先輩といえどあまり見くびらないでほしいものだ。

 そうして俺は先輩の右手にさっと100円玉を乗っける。そうすると先輩は下を向き数秒フリーズする。さぁどうだ、どう動く、金城満!

 「き…き……きみ!!」

 くっ、失敗か?

 「君って奴は!君って奴は!なんていい人なんだ!!」

そう言いながら先輩は、涙を流す。

 「ちょ、いきなりどうしたんですか先輩。い、いったん泣くのやめてください。」

 「あ、ごめんよ……いやぁ感動した。君に最上級の敬意を払おう。まさか100円玉がもらえるなんて思いもしなかったからね」

 「そのぉ、俺が言うのもなんですけどたかが100円玉で良かったんですか?」

 「たかがだなんてとんでもない君はもっと誇るべきだ。君が持つその親切心に。」

 なんかこいつさっきとキャラが全然違うぞ…

 「実はね新入生に説明をするのは君で四回目なんだけど、君以外はみんな1円玉しかくれなかったんだよ。1円でもありがたい。しかし欲を言えば5円玉以上であってほしかった」

 四回もしてたんだ。案外いい人なのかもしれない。

 「そ、そうなんすか…」

 「じゃ約束通り君に説明を施してあげよう。ここで行われてる戦闘のシステムについてね」

 ごくり。と俺は渡さなかった32円を握りしめながら息を呑むのだった。

 

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