雨宿りはひと夏の恋が始まる予感?
「雨、……やみませんねぇ」
仕事が終わり駅に向かう途中、突然のゲリラ雷雨に襲われ慌てて駆け込んだ先に、私と同じく足止めを食らった若い男がスマホを見つめながらポツリと呟いた。
チラリと横目で彼を見ると、涼しげな目元にスッと鼻筋が通った、スラリと背が高くてスーツの似合ういかにも仕事の出来そうなイケメンだった。
えっ? ……これってもしかして運命の出会いってヤツかしら? 私は口角を上げいつもより少し高い声で、
「そっ、そうですね。あっ、でもあっちの空が明るくなって来たからそろそろやみそうですよ!」
そう言ってまたチラリと横目で彼を見ると、彼は下を向いたまま少し照れくさそうに、
「……どうせならもう少し降ってて欲しかったな。そしたらもうちょっと君と話せたのに」
……嘘でしょ? そんな歯の浮く様なセリフを吐くイケメンなんて信用しちゃ駄目なヤツじゃない!
だけど今まで生きて来た中でこんな事言われた事なんて無いからドキドキが止まらない。でも騙されちゃ駄目っ!
私はニヤける口元を抑えながら努めて冷静に、
「なんかサラッとそう言う事言うのって軽く無いですか? でも、……まぁ私も暇だし少しだけなら話しても良いですけど」
なっ……何言ってるの私っ? しかもこんなイケメンに上から目線で!
恐る恐る横目で彼を見ると、相変わらず目を合わせる事なくスマホを見つめながらまた呟いた。
「あっ、でも雨が止んでも話し位は出来るよね? それじゃさ、駅前のバーでお酒でも飲みながらゆっくり話さない?」
いきなりお酒っ? 私を酔わせて持ち帰ろうっての? 冗談じゃないわ!
でも、…………でも、ワンナイトラブでもいいじゃない? だってめっちゃタイプなんだもん! もしかしたら運命の出会いかも知れないし、ここから恋が始まるって事もあるかもしれないでしょ?
私が返事に困ってオロオロしていると、彼は私を覗き込んで爽やかな笑顔で言った。
「雨、やんだみたいですよ、行くなら今です!」
私は覚悟を決めた。騙されてもいい! 私は彼を見つめて私史上最高の笑顔で、
「はっ、はいっ!」
もう私の恋は止まらない! たとえひと夏の恋だとしても!
すると彼は私にペコリと会釈をして、
「それじゃ俺、あっちなんで! 急がないとまた降り出しそうだから早く帰った方が良いですよ」
……え?
彼はスマホに向かって『それじゃ今から行くから!』と言って私の横を足早に去って行った。
私じゃなくて最初っから他の女と通話してたのかーい!




