表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
三章 ~ルークと立ち向かうべき真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/69

6話

山は想像に反した困難と順調が合わさっていた。困難は当然魔物たちだ。本当にこの辺りは放置され続けたとしか言いようのないほどに魔物が蔓延っていた。こうもなってしまうと人通りは皆無と言って差し支えない。そこへ一番の獲物になるもの、自分たちが入って来たとなれば歓迎も凄まじいものだ。

ここの魔物は四つ足らしく集団で過ごす種類が極めて多く、一度見つかってしまえば最低でも十前後の魔物を相手取る必要があった。そして規模が大きくなれば音が響いてしまう。そうすると芋づるのように別の集団が寄ってきてと、さながら丁寧に敷かれた罠を一々踏んづけているいる様な気にさえなってしまう。そうなれば当然消耗は大きく、それに反比例して進みは悪くなるものだ。普通なら引き返して然るべき状況だが、それも出来ずと手詰まり、そう表現するに相応しい状況だったが、自分たちのパーティの表情は険しくも、息苦しさはなかった。


「フン!」

ウィリアムが最前線、四方八方へ跳びなが一息に魔物を雑草のように刈り取る。抜山蓋世、武一つで世界最大の国の頂点に座すその力は途中から先頭にたち、山の中腹辺りまで戦い通しだというのに剣閃の端にも陰りはない。むしろどんどん冴え渡っている様にも見える程で、帝国最強の威信を全身で表していた。怪我の一つも無く、汗もかいていないその姿は敵からすれば絶望そのものだろう。常に戦場の中央にいながら返り血の一つも浴びず、全てを一息に狩って、過ぎていく姿は意思をもった災害にも思えた。やっぱり、一度相対した時も随分手心を加えてくれていたと思える。しかしそれがない魔物には死しか感じられないからか、次第に襲撃の回数も減った様にも思える。魔物だって死にたくないと思う感情はあるようだった。

そんな彼を後目に自分は打ち漏らし、というよりは意図的に残されただろう魔物を彼が過ぎ去ったあと、処理していた。もっとも、彼の影に怯えた魔物は通常よりも幾分狩りやすく、必ず先手が取れると言っていい状況だった。お陰で負傷はなく、武器を振り続ける疲労だけで済んだ。それもウィリアムの前で言うのは憚られる位だ。というよりあれだけやってくれている奴の前で「疲れた」とは正直言いづらい。彼の部下もそう言う面では苦労したんじゃないかと邪推してしまう。よくも悪くも彼は生真面目で努力家だった。


ウィリアムを先頭にした隊列は功を発揮する。セオリーとでも言えばいいのか、兎に角前に立つ奴が強ければ強いほど、戦いは楽だ。これが国同士のぶつかり合いなら、様々な策を練って、彼を無視したり、追いやって急所を狙うといった事もあるのだろうが、これが魔物との戦いでしかない以上、先頭の強さが群れの強さをそのまま表した。横や後方は自分の担当だったが、それも全部を狩る必要はなく、プロトの支援やウィリアムが回ってくるを待つだけでも良い簡単な仕事だ。そうなると暇になってしまうのはミラだが、彼女には出来るだけ戦闘に参加はしてほしくないのも事実なだけにこちらから口を出すことはない。申し訳ないとは思うが何かあってからでは遅いし、他の三人では怪我を回復させる手段がない。応急手当で済めばいいがそうでなかったら旅が一気に暗雲に包まれてしまう。しかし、そんな事を思っていたからか、はたまたミラの意思が固かったからか、彼女は新たな魔法を覚え、戦いに積極的に関わろうとしていた。


「え?新しい魔法だって?」

夜、一人目が寝る少し前にミラが新しい魔法が使えるようになったと口にした。

「えぇ!言い加減皆の事見てるだけなのは暇だったもの!これがずっと続くなんて私嫌よ」

焚き火に当てられて赤らんだ彼女の白い頬がプクリと膨らむ。何とも可愛らしいとは思ったが彼女は「怒っています」と顔に自ら書いた様に見えたから茶化すのはやめた。それに気が付いた様子のない彼女はそのまま口を開く。

「私、新しい魔法って苦労するって思ったけど、杖を手に入れてから魔力って存在を少し理解できた気がするわ。お陰で回復だけじゃなくてちょっとした攻撃も出来るようになったと思うの」

得意げにそう語る彼女は無邪気な童女の様でやはり可愛らしい。得意げに胸を張る様は美人な印象が強い彼女の新たな魅力を引き出しているように見えた。

「どんな魔法を覚えたの?」

プロトが聞けばミラは一度落ち着くように咳ばらいをしてから七色の瞳に炎を映して口を開く。

「光弾と活力よ。威力は弱いけど、牽制位にはなると思うの。活力も、ウィリアムは必要ないかも知れないけど、ルークだったら少しは役に立つと思う。勿論、練度が上がればもっと行けると思うしね」

「あぁ、成程なぁ・・・まぁ悪くは無いんじゃないか?ウィリアムはどう思う?」

「・・・手始め、という意味では悪くない」

ミラが戦う事を嫌がるウィリアムは少しばかり口が重そうだったが、ミラが習得した魔法の種類で言えば一概に否とは言い難そうだ。

「そう言ってもらえると嬉しい。あとは練習だけなの。だからお願い。少しで良いの。私にも何か、させてほしい」

そう言ってミラは頭を伏せる。彼女の性格からすれば何もできない状況を良しとはしないのは分かるし、コツコツと魔法を習得する努力をしたことはハッキリとしている。まさか適当な事を言うような性格でも無いだけに疑いはない。後は質と経験だけと言うなら見てみたいと思うし、活力の魔法は確かに、今の自分には役に立つ場面がありそうだと思う。何せ戦士としてはかなり非力だ。だから短時間とはいえ、膂力が上がる活力は自分の補助として嬉しい魔法だ。光弾もプロトのような火力にはならないが吹き飛ばす、或いは踏鞴を踏ませる位には役立つ。場合によっては目くらましにもなるだろう。そうなればウィリアムがいる自分達では絶対の隙を生み出せる優位性は計り知れない。

「まぁ、良いんじゃないか?俺は賛成かな」

「ボクも良いと思う」

なら後はウィリアムだけだ。チラリと伺うと暫く黙って腕を組んでいた彼はちいさな溜息を一つ吐いてから了承を口にした。

「・・・吾輩一人が反対しても通るまい。ですが実際に戦いに入る前に明日、実物を見てからになります」

「ううん。ありがとうウィリアムに皆。私、絶対に強くなるわ」

ミラの宣誓に頷き、明日を待った。


翌日、山の山頂にほど近いところで丁度手ごろに見えた魔物の群れに遭遇した。この頃になると魔物の数が減ってきたことと、恐怖が伝播したのか遭遇率が下がっていた。これは異常な事だ。正直、自分だけなら今も中腹に辿り着く事なく引き返していたと思わざるを得ない。そして今、目の前で好戦的な雰囲気に満ちた魔物は自分たちがやって来た方向とは逆の方を棲家にしている魔物らしく、まだウィリアムという脅威を知らない様に見えた。

「落ち着いて。まずは光弾で目くらませるんだ。そしたらウィリアムが突っ込む。大丈夫、周囲は俺とプロトが見てるから」

「うん、お願い」

そう言いながら少しだけミラは震えていた。震えているのか、それとも奮い立っているのか、はたまた両方か。よく考えれば沢山魔物と遭遇したが彼女の役割は今まで全てが終わった後だけだった。ミラから動くのは初めてな事を思えばそれも仕方がない。心なしか声も固く聞こえる。だから肩に手を置いて指を差す。

「もうすぐ、ウィリアムが魔物の先頭を掃って下がってくる。だから彼らの中央に光弾を撃つ、それだけで良いんだ。大丈夫、アイツなら絶対に怪我なんかしないからさ。それにどうなってもリカバリーする。元だけど、ミラの国で一番強い奴なんだ。安心しな。ミラの魔法も見た感じ十分な力があるさ」

「・・・そうね。うん、ありがとう。やって見せるわ」

険を和らげ、震えを杖を強く握ることで消したミラは一歩前に出る。そして大きく後退し始めたウィリアムとそれを追う魔物の間に目掛けて杖を向ける。

「光よ!」

ミラが声を空に響かせると同時に未完成の杖の先から光の玉が現れる。それは人の頭部程の大きさで、やや黄色味が混じった白色の玉だった。そしてミラの真っすぐな性格を表すように光弾は魔物たちの幾らか前に落ちて、衝撃を生んだ。

「バッチリ!ウィリアム!」

弾けた光弾は幾らかの光を周囲に巻き散らしながら魔物たちの足を物理的に止めた。明確な傷を負った程ではないがそれでも足は確実に止まった。なら後は前衛の仕事だ。ウィリアムに声を掛ければそれを予見していた様に、既に振り向いていた彼が一息に距離を詰め、魔物を撫で切りにした。


「いい感じだったな。これなら練習次第でもっと出来るぜ」

そう言ってミラの前で拳を出す。しかしそれにミラは首を傾げる。

「えっと?」

「ん、あぁ、上手く出来たらこうやって拳を軽くぶつけるのさ。ほら」

そう言えばミラは何処か戸惑いながらも左手を伸ばしてグラスを当てるような柔らかさで拳を当てた。

「お見事です。これならば今後、いくらでもやりようがあるでしょう」

戻ってきたウィリアムが頬を緩めながらミラを褒める。ここまで来ればミラもようやく実感が湧いて来たのか小首を傾げながらも口を開く。

「えっと・・・本当にこれでいいの?」

「えぇ。まずはこれで良いかと」

「そうだぜ。少しずつ段階は上げるもんだしな」

まぁ、やったことは魔法を放っただけでもある。ただ、何事も初めては上手くいかないもんだ。歩くことだって最初は躓く様に、ただ魔法を狙った場所に放って効果を出す、というのは想像より難しい。それも正面に自分たちを狙う相手を置いてやるのはやっぱり失敗をいくらでも生む。だからそれが出来ただけ、ミラは凄いと思う。ただ、それを実感しにくいのもまた分かるだけに、苦笑が浮かぶ。

「そう・・?プロト、はどう?」

「え、えっと・・・ボクは、ちょっと分からない、かも」

「プロトは、あぁ・・・まぁ、最初から出来そうだしなぁ」

彼は兵器だ。だからミラとは前提が違う。それだけに分かり難いらしい。プロトの返答を聞いてミラもそれに思い当たったのか小さく頷く。

「そっか。でも、皆がそう言うなら、良いのよね」

「えぇ、自信を持ってください。新兵も動く的に剣を当てるのは苦労します。それが多少のサポートがあったとはいえ、上手くいったのですから」

ウィリアムは何時に無く饒舌だ。彼の敬愛する相手であるのもあるだろう。でも彼の言うことは正しいから頷いておく。


それから、暫くの間、ウィリアムと交代しながら遭遇した魔物を引き連れ、ミラの練習に当てた。ミラは最初こそ戸惑い交じりではあったが次第に慣れていき、数日掛けて山を下り切る頃にはスマートに光弾を撃てるようになった。そしてそれに比例するように彼女の杖も端から白く成っていく。彼女の魔法を象徴している様に見えた。


良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ