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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
三章 ~ルークと立ち向かうべき真実

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2話

「お、見えてきたな」

遠く、まだ水平線と並ぶようにしてだが目指していた国、サルーグの特徴的な街並みが見えた。

「本当にあんな針刺しみたいになってるのね。倒れたりしないのかしら?」

ミラが感心したような声を漏らす。確かにそう言われればそう見える。改めて見やれば天に向かって突き進むように塔の様な物が幾本も地面から飛び出るようにして伸びていて、その長さは国を囲む壁よりも遥かに突き出している。何なら毎回見る度に伸びているようにも感じた。いや、きっとそうなんだろうなと思う。同時に色合いや形が変わっているのも気のせいではないだろう。

「ま、倒壊した、みたいな話は聞かないから大丈夫さ。其処は気を使ってるみたいだしな。住人に取っちゃ大事な家で領土でもあるんだから」

彼らにとっては同じ住民でも必ずしも仲間とはならない。大喧嘩こそ簡単にはしないが多種族がそれぞれに群れを作って住んでいるのだ、簡単な諍いは当たり前、区画によってルールや文化が違うのも当たり前だ。メジャーな種族からマイナーなものまでいて、見る分には面白い。実際観光にくれば一回で色んな国を巡る様な満足感があると評判もあるくらいだ。勿論、ガイドは必須だ。

「凄いなぁ・・・本当に色んな国があるんだね。でも、ボクには住めそうにないや」

プロトが感心したように呟く。帝都は誰にでも住みやすい形をしているだけに、よりそう思うだろうなと思う。プロト自身、スラムにいたとは言うがそれでも帝都のスラムならそこそこ住みやすいだろう。何かに特化した、或いはそうなってしまった場所は適正が無ければやっぱり苦しいものだ。

「そう言えばウィリアムは帝国生まれなんだよな?獣種の国に行こうとか思わなかったのか?」

ふと気になってウィリアムに聞いてみる。帝国は多種族国家だが同時に精霊種が絶対に頂点の国でもある。獣種はあくまで一種族に過ぎない。正直ウィリアム位強ければ獣種だけの国に行けばそれこそ王族も夢ではないだろうと思える。金鬣は数は少ないが力が強く、特に目立つし、獣種そのものが他の種族よりも強さに重きを置く。だからウィリアムが平民の生まれだろうと彼がその戦闘力を示せば一気に駆けあがることも不可能とは思えない。

「いや、吾輩は帝国での立ち位置に不満はなかった。帝都は他の獣種もいるからな。それに吾輩は上に立つに向いていない」

ウィリアムはそう言いながら小さく首を振る。その顔も特に不満の様な感情は見えず、心から言っていそうだなと思えた。

「そんなもんか。まぁ上は上の苦労がありそうだもんな」

ついこの間までは一切分からなかったがミラと関わってからは大変そうだなとも思えるようになった。スラム生活こそ苦痛に塗れてはいたが、アガパンサス団に入ってからは自由も多く、気ままと言えば気ままな生活でもあった。それと比べるとミラの在り方やアスケラでの公爵の雰囲気はとても自分に合うとは思えなかった。

「そうね。私も城にいる間は思わなかったけど窮屈だったんだって思うわ。それが合う人もいるでしょうけどね。私は今の旅生活も嫌いじゃないわ」

ミラが同意するように口を開いては綺麗に小さく笑った。アスケラでドレスを着て背を伸ばしていたミラも綺麗だったが、今の彼女がそれに劣るとは確かに思えない。いずれは彼女はあそこに戻るのだろう、そう思うと少しばかり胸の奥に霧が籠ったが、それでも今が楽しいと言って貰えるのは不思議と嬉しさがあった。


それから早足にサルーグへと向かった。隠れる場所の少ないこの辺りでは、また魔道部隊を名乗る奴らに見つかって襲われないとも限らない。勿論サルーグの街中が安全とまでは思わないが、それでも他国の真っ只中でいきなり戦闘にはならないだろうとも思えた。

「凄い喧噪ね。何語か分からないのも聞こえるわ」

サルーグの大門を潜り抜け、壁の中に入った直後にミラが驚きを口にした。

「えぇ、吾輩もこれ程とは思いませんでした・・・ここだけなら帝都にも劣りません」

ウィリアムもミラに続く。彼の言う通りサルーグの入口からなる市場通りはこの国で唯一と言っても良いほどに多種族が一斉に集う場所だ。住む場所はある程度厳格に仕切っているが市場だけは全員が共通の場所を使う決まりになっているのもあって、国を割る様に真っすぐ、大通りが敷かれて、その両端をズラッと屋台が並ぶ。更にその後ろにはこの道に面した店舗、この国で一等良い成績を示した店が並ぶ。ちなみにその成績は季節が一つ巡る度にサルーグの中心で特に力のある種族達が一斉に会して決められる。勿論、住民の投票や売上等も全てが其処に情報として集まり、それを元に決められるのだ。そして一等店をいくらこの大通りに並べられるかが力のある種族の基準でもある。『商業都市サルーグ』それがこの国だ。


「よし、兎に角いつも通りに宿から行こう。その後、買い物なんだけど・・・今日は厳しそうだし、明日かなぁ」

空はそろそろ赤が混じり始めるだろうかと思える程度には陽が傾いている。市場は盛況だがそれも次第に店じまいだろう。人気があるところは既に閉めて明日の準備を始めている筈だ。だから残っているのは今日中に売り切りたい物が残っている商人らで、安くなる可能性もあるがどうせ日持ちしない物だけだ。旅には持っていけないし、旅に持っていくなら多少高くついても一等店で揃えるべきものもある。しかし一等は既に閉まっている時間帯ならやっぱり今買うのは憚られた。

「わっ!っとと」

「大丈夫か?はぐれるなよ」

周囲を物珍しそうに見ていたプロトが行きかう人に弾かれて踏鞴を踏んだ。それを引っ張って近くに引き寄せる。

「ご、ごめん。凄く気になっちゃって、思わずボゥっとしちゃった」

プロトはズレた帽子を戻す。まぁ、自分も初めての国ではそう言うことはいくらでもあっただけに責める気には慣れない。

「いいさ、確かに気になるもんな。でもはぐれたら見つかんないからさ。そこだけ気を付けてくれよ?行方不明は多いんだ」

「うん、ごめんね」

「ふむ、吾輩が一番後ろにいたほうが良いか。目印にもなろう」

やり取りを見ていたウィリアムがそう言って後方に立つ。彼の背丈は確かに此処でもよく目立った。

「そうだな。それが一番いい。俺が前で間に二人入ってくれ。もしはぐれたら直ぐに大声を出してくれ。後はスリに気を付けてくれよ?」

人ごみには当然スリがいる。他にもどんな事が起こるか分からないだけに安心は出来ない。自分の言葉に頷いてくれた二人を間に、少しだけいい宿を目指して大通りを抜けていく。


宿は簡単に見つかった。ここが商業都市国家なだけあって人の出入りが多い。それだけでなく、個人の家ではなく宿に泊まり続ける様な生活をする人も珍しくないために宿自体は腐るほどあるのだ。勿論質が悪ければこの国の在り方に沿って淘汰されるため、最低限の質が常に保たれてはいる。尤もトラブルは何処でも自分で防ぐべきだ。

食事は宿の中でプロトを除いて各人で済ませた。自分は何でも食べれるがウィリアムとミラは真反対の食性をしているだけに一緒にはしない。宿が上手く仕切りを作ってくれているおかげで全員が目の届く範囲にはいるが気楽に食事が出来るのは当たりだ。そして次の日の為に簡単な会議をして早々に床に付いた。


「じゃぁ、早速昨日の通りに行こう」

朝、商人にとっては遅く、一般人にとっては少しだけ早い時間に宿を出る。まだ泊まるため予約を済ませ、いらない荷物を預かって貰ったお陰で身軽になった体で大通りを目指す。

「でも、バックも置いてきちゃったけど良いの?」

ミラが首を傾げる。普通は買い物をしたらその場で詰めて、再び宿で分配しながら整理していた。そのバックすらも今はないから不思議に思った様だ。

「あぁ、此処は買い物をしたら届け先を指定すればその日の夕方位に纏めて届くんだ。都市内で荷物を運ぶ仕事をしてる奴らがいて、彼らと商人は絶対に繋がっているから客は手ぶらでも簡単に買い物が出来るのさ。それにこれのお陰で全体の売れ行きも良くなったらしいぜ」

最初聞いた時は疑わしかったが確かにここで買ったものは必ずと言っても良いほど彼らの手を通じて客に届く。その場で食べるとか消費するのでなければ皆そうだ。稀に荷物がロストすることもあるらしいがその場合は受け取りの際に確認して言えば彼らの方で後日何とかしてくれる。だから概ね評判はいい。尤もこの都市以外で見たことはないが。

「便利であるな。しかし、帝国では難しいか」

ウィリアムも頷きながら眉を顰めた。それもそうだろうなと思う。サルーグの丁度いい規模とホテル暮らしが多いという特徴、後はそういった運搬が得意な種族が固まって此処にいるから出来ている様なもんだ。それだけじゃなく、国が力を上げて商業に力を入れてるから成り立っている様な物だ。他国では様々な弊害があって、いずれはそうなるかもしれないが難しいだろう。

「ま、今はそんな事より早く買い物を済まそうぜ。良いものは早くから出て早くに消える。ここの常識だ。兎に角早く行動できる奴が得するぜ」

そう言いながら大通りへと足を踏み入れた。まずは安全性が保たれた一等店で長期に使う物の補充だ。



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